画像提供:マイナビニュースマンションリサーチは、中央区の湾岸エリアにおけるタワーマンション市場に関する調査結果を4月18日に発表した。調査は2023年1月から2026年までの期間、中央区に所在する中古タワーマンションの売り出しデータを収集し、独自の統計手法を用いて分析・集計をしたもの。
はじめに、中央区の実需タワーマンションについて在庫数と在庫回転率の推移をみると、2024年頃から大きな変化が起きていることが分かる。
目立つのが在庫数の継続的な増加だ。2024年頃を境に在庫が大きく増加し、その後も高い水準で推移している。つまり、市場に売り出される物件が増えている。
一方、在庫回転率は大きく低下している。在庫回転率の低下は、売り物件が増えた一方で、それを以前と同じペースでは買い手が吸収できなくなっている可能性を示す。
こうした状況では、買主が複数の物件を比較しやすくなるため、売却を急ぐ売主ほど価格を見直す必要が生じる。特にタワーマンションは、同一マンション内や近隣マンションで、間取りや階数、方角、専有面積などが類似した物件が競合しやすい。
その結果、1件の値下げが周辺物件の価格にも影響し、さらに別の売主が価格を見直すといった動きにつながる。現在見られる値下げの動きは、在庫増加と流動性低下が価格に波及したものと考えられる。
一方、賃貸中の状態で売買される投資用、いわゆるオーナーチェンジのタワーマンションも、実需物件と同様に2024年頃から在庫が大きく増加している。
ただし、その後の推移には違いが見られる。投資用タワーマンションの在庫は2025年5月頃をピークに、その後はおおむね横ばいで推移。実需物件のように増加が続いているわけではない。
在庫回転率についても、一定のばらつきはあるものの、実需物件ほど大きく低下しておらず、比較的安定している。売り物件は増えているものの、市場に出てきた物件が一定のペースで売買されていることがうかがえる。
この違いの背景には、実需と投資用で価格の判断基準が異なることがある。
実需マンションでは、駅距離や眺望、階数、間取り、室内状態、周辺環境など、さまざまな要素が価格形成に影響する。購入者にとっては「実際にここに住みたいか」という感覚的な判断も大きく、価格が高すぎると判断されれば購入を見送ることにつながりやすい。
一方、オーナーチェンジ物件では、すでに入居者がいて賃料収入が発生しているため、投資家は物件価格だけでなく収益性を重視する。賃料収入に加え、管理費や修繕積立金、固定資産税、賃貸契約の内容などを踏まえて投資判断を行うため、物件価格と収益のバランスを比較しやすい。
同じマンション、同程度の専有面積であっても、賃料やランニングコストによって投資家から見た収益性は変わる。そのため、条件を精査することで、価格と収益のバランスが取れた物件には買い手がつきやすいと考えられる。
今回のデータから分かるのは、「在庫が増えた」という一つの現象だけでは、市場の状態を判断できないということだ。
中央区湾岸のタワーマンションでは、実需、投資用の双方で在庫が増加している。しかし、実需では在庫増加とともに在庫回転率が低下しているのに対し、投資用では在庫が一定のところで横ばいとなり、在庫回転率も比較的安定している。
実需市場では、価格上昇によって購入できる層が限定される一方、売主側には高い価格への期待が残っている可能性がある。その結果、売り出し価格と買主が受け入れられる価格との間にギャップが生じ、在庫が積み上がりやすくなっているとみられる。
一方、投資用市場では収益性という比較的明確な基準があるため、価格と収益のバランスが取れた物件については、現在の市場環境でも投資家から選ばれる余地がある。
中央区湾岸のタワーマンションは、これまで「値上がりするマンション」という一括りで語られることも多かった。しかし今回の調査からは、同じエリア、同じタワーマンションでも、実際に住むための実需と投資用では、在庫や流動性の動きが大きく異なる局面に入っていることがうかがえる。
湾岸タワマンを「買えば値上がりする」と一括りに考えるのは難しくなっているのかもしれない。特に実需物件では在庫が増え、買い手が以前と同じペースでは吸収できていない可能性が示されている。購入を検討する際は、価格の推移だけでなく、同じマンションや周辺でどれだけ物件が売りに出ているかにも目を向けてみたい。(安藤美耶)