フォルダブル歴5年の筆者も驚いた「iPhone Duo」の完成度 ソフトウェアの力で再定義できるか

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2026年09月19日 11:51  ITmedia Mobile

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開くと横長の7.6型、閉じるとパスポートサイズの5.4型になるiPhone Duo。10月23日の発売に先立ち、実機に触れることができた

 Apple初のフォルダブルスマホとなる「iPhone Duo」を発表してから約1週間、筆者も実機に触れる機会を得た。開くと横に長い1:1.42のディスプレイを搭載しており、動画や写真などのコンテンツを画面いっぱいに広げられる。閉じたときは縦長になるが、アスペクト比は統一しており、操作性を高めるため、アプリの操作ボタンやピクトなどを右に寄せる工夫も施されている。これまでのフォルダブルスマホになかった、Apple流の演出も心憎い。


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 筆者は、サムスン電子が2021年に「Galaxy Z Fold3 5G」を日本で発売して以降、5年間、フォルダブルスマホを毎年買い続けてきた。8月にはモトローラの「razr fold」を入手し、“フォルダブル歴”は間もなく6年目に突入する。発表会でも各社の製品を触っているため、人一倍フォルダブルスマホには慣れているつもりだが、それでもiPhone Duoには、今までにない使用感と驚きがあった。


●「Nano-texture」が映り込みを排除、極上の開閉感を生む自社設計ヒンジ


 まず率直に言うと、開くと横長になって写真がピタッと表示されるディスプレイの比率は、そこまでの感動はなかった。これは、8月に発売されたサムスン電子の「Galaxy Z Fold8」をしばらく使っていたためだろう。比率こそやや異なるが、どちらも写真、電子書籍、動画といったコンテンツは表示させやすく、見やすい。Appleに先駆けて発売したことで、そのお株を奪った格好だ。


 一方で、見やすさという点ではNano-texture仕上げを行っているiPhone Duoに軍配が上がる。写真を見ていただくと分かるように、映り込みが全くない。普段のスマホは、なるべく撮影に使うカメラが反射してしまわないよう、気を付けて角度を調整しながら撮っていたが、iPhone Duoではそんな工夫は一切必要なかった。


 もちろん、単に記事制作が楽になったと言いたいわけではなく、写真や動画などを見ている際に映り込みが大幅に減るため、映像に集中できる。ぱっと見で動画がきれいだと感じたのは、そのためだろう。このNano-texture仕上げは、発表にもあったようにポリマー製のカバー層に採用されているものだ。


 層とうたうだけあって、ディスプレイと一体化しており、一般的なフォルダブルスマホのように、ガラスの上に保護フィルムを貼り付けたような見た目にはなっていない。さらにNano-texture仕上げで本当に全く折り目がないように見えた。Nano-textureはiPadなどで培ってきた技術だが、こうしたノウハウを応用できるのはAppleの強みといえる。


 iPhone Duoを開いてみて真っ先に感じたのが、開閉感の気持ちよさだ。これは、今まで使ってきたどのフォルダブルスマホよりも自然だ。開き始めは軽い力でスッと動いていき、途中から徐々に力がかかり、最後の方はパタンと滑らかに開ききる。文字にすると少々陳腐な印象も受けるが、単純なギアだけでは、ここまで自然な動きにはならない。


 100を超えるパーツを組み合わせて、マグネットで力のかかり方を調整したというこだわりは、こうした点に表れている。開閉がしやすく、かつその動きが気持ちいいというのは、Appleならでは。自社設計したヒンジへのこだわりは、使用感からも伝わってきた。この驚きは、むしろ今までフォルダブルスマホを使ってきた人の方が大きいはずだ。逆に初めて触る人は、これが“当たり前”と思ってしまうかもしれない。


●自由自在な無段階ヒンジと、消した反射をあえて描く「Appleの狂気」


 ヒンジがすごいのは、その開閉感だけではない。角度を無段階に調整できるところからも、Appleのこだわりを感じた。過去のフォルダブルスマホの多くは、ヒンジの角度を調整できないものや、調整できても一定の範囲までというものが多かった。これまで、半開きで使う「フレックスモード」を売りにしてきたサムスン電子も、Galaxy Z Fold8では90度から少し開くと本体がパタンと開いてしまうこともあり、同機能への対応を見送っている。


 これに対し、iPhone Duoは閉じるギリギリの状態でも止まるし、開ききる前ギリギリの状態でも固定できる。さすがに完全に開く直前の状態だと重量バランスの関係でヒンジだけが机やテーブルの面に接する形になってしまうが、かなり角度をつけてもディスプレイの自重で勝手に開くことはなかった。


 単なるこだわりではなく、これは半開きで使う際の使用感にも直結する。iPhone Duoは、半開きの状態にすると机やテーブルに接した方の面のディスプレイが操作パネルに切り替わる。サムスン電子が、フレックスモードと呼んでいたものに近い。本体を置いたままカメラを撮影できたり、スタンドがないところで動画を見たり、出先でビデオ会議に参加したりする際に便利な機能だ。


 この半開きの状態で、角度の調整を自由自在にできるため、利便性が大きく向上している。カメラだとフレーム内に入れる被写体を調整しやすく、近くのものを撮りたいときには角度を狭め、遠くのものを撮るときは90度に近づるといった調整が自由自在に行える。動画視聴やビデオ会議の時には、見やすいポジションに調整しやすい。


 動画視聴の際には机やテーブルに接した面のディスプレイに映像が反射する……と思いきや、実はこれも光を計算しながら、ディスプレイ上にあえて映り込みとして描画しているものだと聞かされて驚いた。よくよく考えれば、Nano-texture仕上げで反射を抑制しているため、普通なら映像の映り込みも最小限に抑えられる。実際、操作パネルが表示されている際にも、それが確認できる。


 とはいえ、半開きにしたときには、映像が反射している方が自然に見える。ここに映像が反射しても特にユーザーにとってのメリットはないはずだが、自然に見えることの一点にこだわり、それをソフトウェアで再現してしまうところには、いい意味での“狂気”も感じた。フォルダブルスマホならではの体験を作り出そうという姿勢を示しているかのようだ。


 ハードウェアの力で消したはずなのに、あえて出すというソフトウェア処理は、アンダーディスプレイカメラ(UDC)の挙動にも共通している。カメラはディスプレイ下に埋め込まれており、切り欠きやパンチホールがないため通常時は映像の妨げにならない。一方で、これだと、撮影時にどこに目線を合わせればいいのかが分からない。そこで、Appleはインナーディスプレイで自撮りが必要なときだけ、あえて切り欠きを作ってカメラがある位置を示している。


 開閉時のソフトウェア処理も秀逸だった。オフィシャルの映像でも使われているため、iPhone Duoに興味のあるほとんどの人が知っているかもしれないが、開くときには、アウターディスプレイが徐々にすりガラスのようになっていき、同時にインナーディスプレイの左半分が映るようになる。こうした処理を加えることで、奥行きが生まれ、あたかも最初から中に広いディスプレイが広がっていたかのように見える。


●「普通のスマホ」に近づけるか、フォルダブルを再定義するか――残る36万円超の課題


 いずれもソフトウェアで作り出した映像のマジックで、演出といえば演出なのだが、フォルダブルスマホを持つ人のワクワク感を高めることも事実だ。Appleらしい作り込みといえるが、こうした工夫は実にうまい。長くフォルダブルスマホを使ってきた筆者も、ここまで細部に渡って配慮されているソフトウェアには感心してしまった。


 ただし、物事にはどうしてもトレードオフが出てくる。開いた時に5.2mmになる厚さは、その1つだ。「iPhone Air」を作ったAppleであれば、恐らく、この程度の面積があれば、もっと薄型化を進めることはできただろう。ただ、無段階で調整でき、開閉の度合いに応じてトルクが変わるヒンジを搭載しようとすると、部品が多くなり、厚みが出る。防塵(じん)の処理も入っているため、現時点ではこれ以上薄くするのは難しかったのかもしれない。


 Appleも5.2mmという厚さをiPhone史上最薄とうたっているが、これは開いたときの話。持ち運びの際などに重要になる閉じたときの厚さは、その2倍以上の11.3mmになる。閉じても通常のスマホとほぼ同じ厚みまで薄型化したサムスンやOPPOのフォルダブルスマホを触った後だと、手に取ったときの感動は少ない。ポケットに入れたときのかさばりも気になるはずだ。


 重量も254gで、大型ディスプレイを備えた「iPhone 18 Pro Max」の249gを上回っている。これも、軽量化を進めるサムスン電子がGalaxy Z Fold8で201gを達成していることもあり、比べてしまうと、やはり重い。ただ、筆者はフォルダブルスマホであればギリギリ許容範囲だとも感じた。初めてiPhone Duoに触った興奮と短時間だったことが重なった影響は否定できないが、iPhone 18 Pro Maxとは5gしか差がないため、サイズが大きい分、軽いと感じる人もいるだろう。


 サムスン電子は、これまで載せてきた数々の機能を切り捨て、薄さや軽さで“普通のスマホ並み”を目指すことがフォルダブルスマホを普及させる鍵だと考えている節がある。これに対し、Appleは厚みや重量はある程度増すが、その分、フォルダブルスマホに必要な機能は何かを考え、ハードウェアとソフトウェアの両面でそれを実装してきた。どこを重視するかは戦略の違いだが、サムスン電子も当初はApple同様、フォルダブルならではの機能を充実させてきた経緯がある。


 それでも通常のハイエンド並みの出荷台数にはならなかったため、サムスン電子は、フォルダブルスマホをより普通のスマホに近づけようとしたのだろう。逆に、Appleはソフトウェアの力で、フォルダブルスマホに必要な機能をより魅力的に見せようと再挑戦している印象を受けた。もっとも、フォルダブルスマホのシェアが小さいのは、サイズや機能だけではなく、その価格にも原因があるのだが……。


 特に日本では、両社の戦略の違いもあり、iPhone Duoの価格は256GBで36万4800円まで跳ね上がってしまった。実は米国だと、Galaxy Z Fold8よりも約100ドル高く、上位モデルの「Galaxy Z Fold8 Ultra」よりはむしろ安いが、Appleが直近の為替レートをそのまま反映していたことで、日本ではGalaxy Z Fold8より約9万5000円も高くなってしまった。他社は戦略的に円安下でも価格を抑えているだけに、Appleの対抗策にも期待したい。



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  • お値段もアップルらしい。
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