「AIに選ばれ続ける修羅の道」か「ファンに愛される道」か さとなお氏が示す、AI時代を生き残る2ルート

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2026年09月21日 12:20  ITmedia ビジネスオンライン

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登壇したファンベースカンパニー取締役会長の佐藤尚之氏(筆者撮影)

 「膝に優しいランニングシューズはどれがいい?」


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 そう尋ねると、AIは数百ある商品の中から数ブランドの商品を推薦する。これまで当たり前だった、消費者が一つ一つの商品を比較し、企業の広告やWebサイトを見て購入候補を絞る――といった購買行動は、AIの普及によって大きく変わろうとしている。


 「AIに選ばれないと、商品は売れなくなっていく。そうなると仕事がなくなる可能性がある」


 こう話すのは、ファンを基盤に中長期的な売り上げや価値の向上を目指す「ファンベース」の提唱者で、ファンベースカンパニー取締役会長の佐藤尚之(さとなお)氏だ。AIが購買の入り口になる時代に、企業はどう選ばれ、選ばれない場合はどう生き残る道があるのか。


 佐藤氏は、これからのマーケティングは「AIルート」と「ファンルート」の2つに集約されていくと指摘する。


 本記事は、展示会事業を展開するブティックスが主催した「IT・情シス DXPO 東京'26【夏】」で開催された佐藤氏によるセミナー「AIに選ばれ、ファンに愛されるために。マーケティング変革期の羅針盤」を基に構成。


●「選ばれる企業」と「選ばれない企業」、違いは? 「BtoA with C」の時代へ


 佐藤氏が最初に示したのは、AIによる購買行動の変化だ。これまで企業は、広告やPR、SNSなどを通じて消費者に商品の情報を直接届けてきた。ところがAIが普及すると、消費者は企業から受け取った情報を自分で比較するのではなく、AIに「どれがいい?」と尋ねるようになる。


 「消費者は膝に優しいランニングシューズの情報をいっぱい集めた上で『これとこれとこれだったら、どれがいいと思う?』なんて聞き方はしません。単純に『膝に優しいランニングシューズは、どれがいいと思う?』とAIに聞きます」


 企業と消費者の間にAIが入り、AIが学習した情報を基に消費者に商品を推薦する――佐藤氏はこのような構造を「BtoA with C」と表現する。


 BtoB事業でも状況は同じだという。担当者や決裁者がAIに相談し、これまで付き合いのあった企業ではなく、AIが推薦した別のベンダーを選ぶケースが増えていく。「今までお付き合いしてきたところとか、すごく営業が強いところとか、そういった要素はあまり関係なく、フラットに世界中からAIは学習しています」


 AIが購買の入り口になれば、これまでのマーケティング手法も影響を受ける。佐藤氏は「間にAIが入るということは、従来のマーケティングは通用しなくなる。SNSも通用しなくなる」と話す。


●300商品あっても、AIに選ばれるのは「3つ」だけ 企業は何をすべきか


 では、AIに選ばれるために企業はどうすればいいのか。


 佐藤氏が示すのは、まずAIの推薦候補に入ること。例えば「膝に優しいランニングシューズ」として300の商品が存在していても、AIが消費者に提示するのは数商品に限られる。


 「300商品あると言っていて、実際に勧めてくるのは3つ。つまり297は落ちたんです。僕の目に触れません。3つだけが僕の目に触れる」


 実際に佐藤氏がChatGPT、Gemini、Claudeに同じ質問をしたところ、推薦されるブランドや商品には共通点がある一方、それぞれ異なる結果になったという。しかも推薦結果は時間とともに変化する。


 AIの回答からは、従来のSEOのように明確なアルゴリズムが分かるわけではない。「アルゴリズムがブラックボックスすぎて、開発者もなぜAIがこれを選んできたかが分からない」。一度選ばれても、次に選ばれるとは限らない。


 そこで重要になるのが、AIが理解できる形で企業や商品の情報を整えることだと佐藤氏は指摘する。


 例えば「膝に優しい」という表現だけでは、どの程度優しいのかAIには判断しにくい。そこで、具体的な数値やエビデンスを提示する。ブランドが積み重ねてきた知識や信頼も、AIが理解できるよう構造化していく必要があるという。


●AI時代に重要になる「レビュー」と「誠実さ」


 一方で、企業側が情報を整えるだけでは十分ではないという。佐藤氏は、実際の利用者によるレビューや体験情報が重要だと指摘する。


 「AIはシューズを買えないし履けません。つまり、人間の体験や感想、そういったものは、AIには体験できないからこそ、とても重視する」


 AIが評価しやすいのは、独自情報や一次情報を含むレビューだという。短い投稿よりも、実際の体験を詳しく書いた情報が引用されやすい傾向があるといい「口コミは量(件数)から質の方向に向かっている」と指摘する。


 また、AIに選ばれるうえでは、企業の「誠実さ」も重要になるという。環境への配慮を掲げながら実際には取り組んでいない、人を大切にすると言いながら離職率が高い――、こうした企業の言動の矛盾をAIは判断材料にするという。


 「なので真面目にやるしかない。AIをハックしてやろうみたいなことがAIにバレた場合、AIからもうずっと信頼されなくなります」


 AI対策を表面的なテクニックにとどめず、実態そのものを改善する必要があると佐藤氏は指摘する。


●「AIルート」と「ファンルート」 生き残るための二手の道


 一方、すべてのブランドがAIの推薦上位に入れるわけではない。佐藤氏は、AIに選ばれないブランドの“生命線”として「ファン」を挙げる。


 「例えば『ニューバランスとアシックスがいいのはよく分かった。でも俺はNIKEが買いたいんだ』というファンの存在。つまり『指名買い』です」


 AIが合理的に商品を推薦しても「このブランドを買う」と決めている顧客は、その推薦を超えて購入する。佐藤氏は、こうした指名顧客を「ファン」と捉える。


 便利だから、安いから、おいしいからという理由で買い続ける人を、ブランドのファンとは呼ばないと佐藤氏は強調する。「ファンはその企業に対する共感、ブランドへの愛着や信頼、そういったものをちゃんと持っている」


 企業にとって重要なのは、まず現在いるファンを見つけ、その声に耳を傾けることだと佐藤氏は話す。


 ファンとの関係を深めれば、繰り返し購入する「生涯顧客」につながり、ファンによる熱量の高いレビューがAIによる評価にも影響する。ファンを大切にする取り組みが、AIから選ばれるための力にもなっていくという。


 佐藤氏は、これからのマーケティングを「AIルート」と「ファンルート」の2つに整理する。AIに選ばれ続けることは「修羅の道」であり、アルゴリズムも資本力も企業にとって不確実性が大きい。一方で、ファンとの関係構築は、企業が主体性を持って取り組める領域といえる。


 AIが購買の入り口になればなるほど、企業にとって「いかに選ばれ続けるか」が重要になっていく。AIへの対応と、顧客との関係づくり。両方をどう積み重ねるかが、マーケティングの大きな課題だと佐藤氏は指摘している。



このニュースに関するつぶやき

  • どれを買うべきかをAIに聞くとか無いわ。AIの学習データが古くて最新の商品を知らないから。逆にファンを当てにしたら、一過性のブームに流されて終わる事になる。
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