
9月24日に行われた米中首脳会談で、トランプ米大統領(80)から思わぬ言葉が飛び出した。
「共通の利益を追求することで、第二次世界大戦では我々は同盟国にさえなった」
中国を第二次世界大戦時の“同盟国”と表現したのだ。さらに、日本と戦った米国人義勇航空隊「フライング・タイガース」にも言及し、「我々の国民が協力してあの戦争に勝ったように、習主席と私も協力していく」と現在の米中関係へつなげた。
これに習近平国家主席(73)も、「第二次世界大戦中、中国と米国の人々はファシストの侵略に対して肩を並べて戦った」と応じた。さらに同日夜の国賓晩餐会では、「80年以上前、中米両国人民は肩を並べて、日本軍国主義の侵略者と戦った」と、日本を名指しした。
翌25日、一連の発言について記者から問われた高市早苗首相(65)は、「これは第三国間のやり取りでございますので、逐一について私からコメントすることはございません」としたうえで、日米関係について「戦争はありましたけれども、その後ですね、しっかりと和解を果たして、関係を深めて、今は非常に強い絆で結ばれた同盟国としてお互いに信頼し合える関係であると思っております」と述べた。
|
|
|
|
しかし、政府は困惑を隠せないでいるという。
「米中会談のわずか2日前、高市首相は日米首脳会談を行い、米中首脳会談を念頭に『中国をめぐる諸課題についてタイムリーに意見交換を行った』と説明。『日米同盟の強さを世界に示すものになった』と成果を強調していました。
ところが、その後の米中会談で、トランプ大統領のほうから先に、中国を第二次世界大戦時の“同盟国”とする発言が飛び出した。日本側にとっては、想定外の展開だったといえます」(政治部記者)
■「第二次大戦で米中は同盟国」トランプ氏の発言に習氏も呼応
駐ウズベキスタン大使、外務省国際情報局長、駐イラン大使などを歴任した東アジア共同体研究所理事・所長の孫崎享さん(83)も、この展開には驚いたという。
|
|
|
|
「米中が対立一辺倒ではない関係を目指すだろうとは考えていました。ただ、今回のように『第二次世界大戦で米中は協力した』というところまで踏み込むとは思っていなかった。これは、多くの人の予想を超えたと思います」
孫崎さんが問題視するのは、その直前まで日本側が日米首脳会談を成果として捉えていたことだ。
「台湾問題について、アメリカが中国に譲歩するような姿勢を取っては困る、態度を鮮明にしてほしいという思いがあった。だからこそ高市さんはアメリカに行った。ところが、その直後に180度違うようなことが出てきた。そういう意味では、日本側の情報収集能力の欠如だと思います」
孫崎さんは、日本が従来、米軍を中心とする米国の安全保障関係者とのパイプに依存してきたため、「トランプ本人との接点が非常に薄い」と指摘する。
「トランプが何を考えているのかということを、十分に把握できていなかった。これは非常に深刻な結果です」
|
|
|
|
■高市首相の「台湾有事」発言で日中関係は1945年に戻った
そして孫崎さんは、今回の米中の歴史認識を考えるうえで、高市首相の台湾有事をめぐる発言が重要だと見ている。
1972年の日中共同声明で、日本は中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」と承認。中国側が「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」と表明したことについて、日本はその立場を「十分理解し、尊重する」とした。同時に中国は、日本に対する戦争賠償請求を放棄している。孫崎さんはこう語る。
「1972年に日中は和解しました。第二次世界大戦をめぐる問題に一応ピリオドを打ち、新しい協力関係をつくろうとした。ところが、高市さんの台湾有事をめぐる発言は、その前提を根底から覆すものだったわけです」
その結果、中国側の視点では何が起こるのか。
「中国側から見れば、いろいろな合意を積み重ねてきたけれど、それを日本側が覆したわけだから、日中関係の起点は1945年に戻った、という論理になります。そうなると、中国が第二次世界大戦で日本と戦った“戦勝国”であるという位置づけが、これからの東アジアの秩序を考えるうえで、非常に重要になってくる。
そこに今回、トランプ大統領が乗ってきた。中国国民党軍を支援して日本軍と戦った米国人義勇航空隊『フライング・タイガース』にまで言及したわけです。つまり、当時の日本を相手に米中が協力したという歴史です。その構図をトランプがいま持ち出してきたことは、非常に重要です」
■「中国と戦う合理性がない」トランプ氏が見ている現実
では、なぜトランプ氏は中国との関係安定化を図るのか。孫崎さんが挙げる一つが、台湾海峡をめぐる軍事的な現実だ。
「戦闘機そのものを見れば、アメリカのほうが優秀かもしれない。しかし、戦闘機には飛び立つ基地が必要です。沖縄の基地が攻撃されれば、戦闘機が飛び立てなくなる。イデオロギー的に『中国と戦え』と言っていても、実際に戦えば非常に厳しい。場合によっては負けるということを、トランプも知っていると思います」
実際、米ランド研究所が2016年に公表した米中戦争に関する報告書でも、中国の軍事能力の向上によって、米国はもはや「迅速かつ決定的な勝利」を確信できず、戦争が長期化する可能性が指摘されている。そして、もう一つが経済だ。
「トランプが考えているのは、経済的にどう利益を得ていくか、ということです。軍事的に中国と戦うことには合理性がない。一方で、AIなどの経済分野では中国との関係から得られる利益があります」
実際、今回の米中首脳会談でもAIは主要テーマの一つとなった。習主席は「中米はともにAI大国だ」と述べ、両国による協力を呼びかけている。
■日本はどうすればいいのか「イデオロギーではなく数字を」
米中が対立を管理しながら関係の安定を模索するなか、日本はどうすればいいのか。孫崎さんが最も懸念するのは、日本経済だ。
「日本経済が復活するためには、世界最高水準の研究開発に接続していかなければなりません。ところが日本自身には以前ほどの力がなくなっている。その一方で、研究開発を強力に推進している中国と関係も切ろうとしています」
そして、これまで日本が前提としてきた考え方そのものが揺らいでいるという。
「非常に大きな問題は、『アメリカに追随していれば安全と繁栄が得られる』という従来の図式が崩れてきていることです」
だからこそ必要なのは、「中国が好きか嫌いか」という感情やイデオロギーではなく、冷静に“日本の利益”を考えることだと孫崎さんは訴える。
「外交というのは、相手の言い分と自分の言い分があって、その間でどう折り合いをつけるかを考えるものでしょう。相手の言い分を全部無視するというのは、外交ではない」
そして最後に、こう語った。
「イデオロギー的なことより、私たちはやはり『事実』を知らなければいけない。日中関係においても、こういう関係を取れば日本にどのようなプラスがあるのか、逆にこうすればどのようなマイナスがあるのか。それを客観的に把握する。そういう冷静な判断をしなければいけないと思います」
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。

人気芋焼酎「三岳」の原材料、実は“タイ米”? 三岳酒造創業時から守り抜くこだわりの秘密(写真:TOKYO FM +)

《「もう引退して」還暦超え国会議員》、首位は「いる限り日本は変わらない」自民のドン(写真:週刊女性PRIME)7