「参議院を笑う者は参議院に泣く」石井準一更迭で高市首相が自ら招く嵐の予感/倉山満

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2026年10月06日 09:30  日刊SPA!

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"参院のドン"こと石井準一氏。9月15日には「自由民主党参議院クラブ」の設立を表明し、「高市政権を支える」と語った。果たしてその言葉通りに収まるのか―― 写真/産経新聞社
―[言論ストロングスタイル]―
 9月17日には政権発足後初となる内閣改造が行われ、第2次高市改造内閣が発足した。その前日に実施された党役員人事で、高市首相はこれまで“聖域”とされてきた「参議院自民党」に踏み込んだ。そうした高市氏の動きに対し、「参議院を笑う者は参議院に泣く」と評するのは憲政史研究家の倉山満氏だ(以下、倉山満氏による寄稿)。

◆石井氏を切るのは、筋が悪い

 内閣改造が終わり、秋の臨時国会が始まった。嵐の予感しかしない。

 改造の最大の注目は、参議院のドンと呼ばれる、石井準一参議院幹事長の処遇だった。参議院自民党は独自の組織を持ち、聖域とも言われる。私は、「高市首相もそこまでやったら相当だぞ」と思っていたが、その相当をやった。

 現在、与党は衆議院では、自民党だけで三分の二の多数を超える。しかし、参議院では連立与党の日本維新の会と合わせても過半数に足らない。つまり、法案が通らない。事実、今年の特別国会(例年の通常国会に当たる)では、国会運営に苦しんだ。 理論上、参議院が否決した法案は衆議院の三分の二の多数で再可決して通すことができるし、そもそも予算には衆議院の優越があるのに、なぜか?

 高市早苗首相は、予算の年度内成立に拘った。世論も「野党に質問時間を与えてもロクなことを言わないから、取り上げてしまえば通る」と後押しした。これに待ったをかけたのが石井氏である。

 高市首相は、1月に衆議院を解散した。こんな時期に解散をしたら、3月31日までに予算を通すのは不可能であるのは、政治の常識である。また参議院では強行採決しようにも、その数を持たない。議会政治は、少数派の意見も聞くのが、慣例である。石井氏は、野党の意見を聞きながら審議、予算の年度内成立を諦めた。

 これに石井氏との確執が古くから噂されてきた、高市首相がご立腹だったのは、永田町で知らぬ者はない。

 それでも、特別国会での法案成立率は100%。石井氏が、少数政党や保守系無所属を引き入れたからだ。副首都法案など、2票差の僅差の可決である。

 これ高市首相から見れば、「振り回されたあげく、最後に恩を着せられた」なのだろう。だが石井氏は、最終的に政権に貢献している。その石井氏を切るのは、筋が悪い。石井氏の側から見ると、恩知らずに映る。

 石井参院幹事長更迭の報が伝わった直後、周辺から「やれるものならやってみろ、全面戦争だ」との声が漏れた。また、高市首相は同じ保守系の有村治子総務会長を石井氏の後任に据えようとしたが固辞されたとも報じられた。そらそうだろう。あまりに燃え上がっている、火中の栗である。

◆安倍元首相のように、なぜ石井氏を使わなかったのか

 石井氏は、「絶滅危惧種党人派」とも呼ばれる。

 青山学院大学に中退届を出したその足で、ハマコーこと浜田幸一代議士の住み込み秘書に。11年勤め上げた後に、千葉県議に。「喧嘩をして負けたことが無い」とも。

 信条は「人を待たせない」で、議会には誰よりも早く来る。そして、誰がどの順番に入ってくるか、睥睨(へいげい)する。同僚の仕事ぶりを頭に入れる。

 もう一人の政治の師匠が青木幹雄。かの小泉純一郎も、この人だけは敵に回さなかった、参議院のドン。石井氏は参議院議員当選後、青木側近として与野党に巨大な人脈を築いていく。その人脈に思想は無関係。

 第二次安倍政権で、安保法制で国中が1年も揺れる大騒動となった。ところが、参議院に回った途端に、噓のように静かに通過。「私は、安全保障政策はわからないので」と固辞した石井氏に、安倍元首相が「貴方は政策の通し方を知っている」と特別委員長を頼み込んだからだ。安倍元首相も、ツボは押さえていた。

 最近では、れいわ新選組(現・いのちの党)から、重度障碍者の議員が当選した。直後に、国会に障碍者用のトイレが設置された。これに尽力したのが石井氏で、きめ細かく厚労省とかけあった。こういう積み重ねが、石井氏の力の源泉である。

 高市首相、安倍元首相のように、なぜ石井氏を使わなかったのか謎である。

◆高市首相自ら「反減税大連合」を作らせたもの

 今回の改造では、旧安倍派・麻生派・旧茂木派が優遇された。事実上の第一〜第三派閥である。それに対して、旧岸田派・旧二階派・旧石破派の第四〜第六派閥が干しあげられた。旧岸田派と旧二階派に至っては、派閥解散後分裂しているのに、高市首相は、その分裂している双方を干しあげた。そして減税に反対の森山裕前幹事長も、非主流派である。これでは高市首相自ら「反減税大連合」を作らせ、「かかってこい」と言わんばかりの人事である。主流派が一枚岩であるとも聞いていないので、嵐の予感しかしない。

 今度の秋の臨時国会では、高市首相肝煎りの消費減税法案が控えている。誰が野党の賛成を引き出してくるのか。

 逆に、1人の自民党の有力参議院議員が、一言「野党も良いことを言っている」と言えば、国会が緊張する。本当に造反するかどうかはともかく、「政府与党の議論は筋が通っていない」と与党からも声が上がれば、国会審議は進まない。

◆三分の二の再可決は、乱発できる代物ではない

 それでも高市応援団は、「三分の二の多数で押し切れ」と言うかもしれない。しかし、三分の二の再可決は、乱発できる代物ではない。なぜなら、自民党も含めた参議院の存在価値を無くすからである。参議院で否決されても衆議院 だけで何でもできるなら、「俺たちはいらないのか」と、与党すら反発するからだ。本当に重要な局面でしか、使えない。

 憲法上、参議院が否決するか、60日採決をしなかった法案は、衆議院が再可決できる。

 では、10月5日からの秋の臨時国会。政権の命運を決する減税法案を何月何日に、衆議院で採決するのか。10月5日の60日後は12月4日である。まさか10月5日に採決はできないから、延長すると今年の年末は国会議員が地元に帰れない。減税法案は政権の最重要課題だが、あまりに非常識な延長だと、「減税以外の政策はないのか」と世論が批判するだろう。

 あるいは委員長職権で強行採決し、参議院で否決させる。そして衆議院で再可決……。否決されるための強行採決など、前代未聞だ。

 いずれにせよ、参議院を笑う者は参議院に泣く。

 もっとも高市首相の悪運の強さも、舐めてはいけないが。

―[言論ストロングスタイル]―

【倉山 満】
憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。トランプ再来で揺れる世界を見通すための新章を追加したベストセラー『増補版 嘘だらけの日米近現代史』(扶桑社新書)が発売中

このニュースに関するつぶやき

  • また週刊誌の「ご希望」記事か?石井が更迭されたのは政権の邪魔だから。弱小反日野党にチヤホヤされてやるべき職責を全う出来ないんだから更迭が妥当。
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