限定公開( 2 )

AOKIホールディングスは祖業の紳士服店に加え、複合カフェやカラオケ、フィットネスジムでも多店舗展開を進めてきた。2026年6月末時点で、複合カフェ「快活CLUB」498店舗、フィットネスジム「FiT24」114店舗、カラオケ「コート・ダジュール」81店舗を構え、グループ全体で1398店舗に上る。
こうした多店舗展開の土台となるのが、チェーンストア経営の考え方だ。
売り場や作業の手順を標準化し、同じ仕組みを多くの店舗に広げて効率を高める。その原則を、業態の違う事業にどう当てはめているのか。
人手が限られる中で、店舗をどう効率的に回しているのか。その方法論をAOKIHDの青木彰宏会長、AOKIの立川延之専務に聞いた。
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●快活CLUBの良さをAOKIへ 「1店舗を磨き上げて横展開する」
――AOKIHDは、快活CLUBで複合カフェ業界の首位に立ち、グループ全体の連結売上高でも青山商事を上回りました。複数の業態で首位を取る企業は数えるほどしかありません。1つの事業で首位を取った経験やノウハウが、他の事業にも生きているのでしょうか。
青木: 首位を取ること自体が目的ではありません。当社はチェーンストアですので、業態ごとに経営として見る指標や帳票は違っても、1店舗を磨き上げてノウハウを横展開する仕組みは共通しています。快活CLUBの良さをAOKIに取り込み、AOKIの良さを快活CLUBに取り込む。そのための人材をそれぞれの事業で活用していることが大きいと考えています。
AOKIが成長軌道に乗り、業界の中でポジションを維持できている背景には、郊外の路面店(フリースタンディング)が中心のAOKIと、ショッピングセンターに100店舗以上を展開するORIHICAの両輪があります。
2000年代に入ってから、郊外の路面店に行く顧客とは別に、ショッピングセンター内の店舗に行く顧客が非常に増えました。こうした買い回りの変化にしっかり入り込めたことが、厳しいスーツ業界の中でポジションを維持できた背景です。
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――多様な事業を手掛けることで、人材が育つといった相乗効果もあるのでしょうか。
青木: 相乗効果はありますが、その分きつさもあります。業態が違う事業をいくつも見ることになるので、タフな人材でなければ務まりません。
ベースにあるのはチェーンストア理論です。良いノウハウを掛け算で広げていく、その哲学が根底にあります。他の事業からノウハウをもらい、それをヒントに自分の事業へ取り込んでいくのです。
●店舗の作業も機会ロスも減らす 工場に補正を集約する人手不足対策
――小売業界では、人手不足や離職率の高さが課題になっています。店舗の人手不足にどう対応していますか。
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青木: いま取り組んでいるのが、店舗で購入した商品を自宅で受け取れるサービス「イージーウェブショップ」です。顧客が欲しい商品は工場でしっかり在庫を持ち、補正を担う人員も工場に集約しています。それぞれの店舗に在庫や人員がなくても、工場で補正して自宅に届ける仕組みがあれば対応できます。人手不足に悩むというより、工場に人員をしっかり確保して対応する方法を取っています。
――オンライン販売も、今後さらに進めていくのですか。
青木: 店舗スタッフに聞くと、意外にもイージーウェブショップの評価が高いのです。店頭在庫を減らさずに済むからです。顧客が「これが欲しい」と言えば、工場から自宅に届け、店頭在庫はそのまま残ります。そうすると、品出しなど店舗の作業が減ります。しかも、顧客が欲しい商品を買えない機会ロスも減ります。こうした方法で店舗の効率化を進めています。
――データを活用することで、商品の発注だけでなく、店舗で働く人の負担も軽くなるのですね。
青木: もちろんです。商品の効率化から補正の効率化まで含めて、その面はあります。
●「金太郎あめ」ではないチェーンストア データで勝ち筋を見極めて投資
――チェーンストア経営の基本は標準化であり、例外を許さないという考え方です。一方で星野リゾートのように、現場を最もよく知る従業員に権限を委ねる経営もあります。本部による統制と現場の裁量のバランスを、どう考えていますか。
青木: 原理原則や決め事、つまり「ここから先はダメ」「ここまではやろう」という規律は、あって当然です。チェーンストアで何を統一すべきかについては、標準化、単純化、専門化の「3S」を徹底することが基本とされています。ファッションで言えば、売り場の陳列面の数(フェイス数)とオペレーションを押さえればよいのです。例えば商品のデザインが変わっても、オペレーションには全く関係ありません。
スターバックスは1店舗ごとに店舗デザインが異なりますが、オペレーションや提供するサービスの内容は全く変わりません。チェーンストアはどこも同じ顔の「金太郎あめ」だと思われがちですが、スターバックスを見れば金太郎あめではないですよね。オペレーションなど絶対に統一すべきものは統一しながら、そこにプラスアルファを加える。例えば、高価格帯の商品を購入する顧客が多い店舗なら、そこを厚くする。基本形を作りながら、地域性を加えていくのです。
チェーンストア理論は「全く同じ店を作れ」と教えているわけではないと、私は捉えています。スーツ屋だけを続けていれば、スーツの形をひたすら探求していくことになります。当社は、チェーンストアの原理原則をベースに、サービス事業でもやってみようと考えました。ウェディングはチェーンストアではなく、式場1つ1つが違います。それでも、オペレーションや人員配置、分配率といった原理原則で見れば、判断はそれほどぶれません。
立川: 経営資料については、チェーンストア経営の研究団体「ペガサスクラブ」の考え方に基づき、ファッション、エンターテイメント、ブライダルの各事業を同じ軸で管理しています。例えば、人件費が原価に入る事業もあれば、当社のファッション事業のように販売管理費に入る事業もあります。それを置き換えて同じ軸にそろえ、正しく経営を見ることを、月単位、週単位で続けています。判断の指標が同じなので、経営判断の軸がぶれない。これが当社の強みの1つです。
――チェーンストア経営は、どれだけ投資できるかの勝負だという見方もあります。実際にそういうものなのでしょうか。
青木: 投資といっても、賢い投資です。無鉄砲な投資は良くありません。勝ち筋を見いだすための投資です。そのために、さまざまな店舗のデータを集めて勝ち筋を見極め「これで次に行けるのではないか」と判断したところに投資する。そういう考え方だと思います。
(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)
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