なぜ中国客半減の逆風でも勝てる? 仏アコー・アジアCEOが明かす「地方ホテル22軒」驚異の再生劇

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2026年10月12日 17:11  ITmedia ビジネスオンライン

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アコーアジアCEOのガース・シモンズ氏(撮影:河嶌太郎)

 2024年4月、ホテル大手の仏アコーが、旧ダイワロイヤルホテルを「グランドメルキュール」「メルキュール」として一斉リブランドした。全国22軒の地方リゾートホテルが、グローバルブランドのもと新たなホテルへと生まれ変わった形だ。一斉開業から約2年、それぞれの地域の魅力を生かしながら、新たな宿泊体験や価値を生み出している。


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 現在は国内で10ブランド45軒、約1万室を運営。今後は最高級ブランド「ラッフルズ」の日本初進出や「プルマン東京銀座」の開業も控える。 


 日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4268万3600人となり、初めて4000万人を超えた。インバウンド消費額も前年比16.4%増の9兆4559億円と過去最高を更新している。ただし市場の内訳は一様ではない。国・地域別で最多の韓国が945万人に達する一方、中国は2025年12月の単月で前年同月から半減に近い落ち込みとなった。


 インバウンド急増の陰で、日本のホテル業界は中国客依存の反動や人手不足に悩む。そんな中、なぜアコーは国内では無名に等しかったブランドで地方を埋め尽くし、わずか2年でV字回復を果たせたのか。


 世界110カ国以上で5800軒を展開し、不動産を自ら持たない「アセットライト経営」で世界を席巻する同社。東南アジア・日本・韓国を統括するアコーアジアCEOのガース・シモンズ氏にインタビューした。地方ホテルにグローバルな送客を実現した方法論に迫る。


●特定市場に依存しない「分散戦略」 地方ホテルは絶好調


――日本は現在、過去最高のインバウンド数を記録しています。日本市場の現状をどのように見ていますか。


 極めて力強く、非常に好調な状況だと考えており、この勢いは今後も続くと予想しています。日本は依然として、アジアや東南アジアの人々にとって、旅行意欲をかき立てる目的地であり続けています。日本市場のポテンシャルには非常に期待しています。


 直近の動向を見ると、大都市圏のパフォーマンスは、急激だったリバウンド需要が落ち着き、安定した成長期に入ったため緩やかになっています。しかし、これは市場の健全なサイクルであり、懸念はしていません。一方、2024年にリブランドした22ホテルのポートフォリオを含む地方の目的地は、旅行者の「地方分散」の波に乗り、現在極めて好調です。


 そのため、日本の観光産業については非常にポジティブに捉えており、今後も成長し続けると確信しています。日本は引き続き、世界中から最も注目される旅行先の一つであり続けています。


――2025年11月、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言をきっかけに、日中関係が緊張しました。中国からの旅行客は減少しているのでしょうか。


 政治的な影響については公になっている通り、現在いくつかの要因が絡んでいることは承知しています。しかし、適切なタイミングで中国市場が再び戻ってくることを期待しています。


 一部エリアのホテルにおいて部分的な影響は受けているものの、ポートフォリオ全体で見れば、特定の国や市場に過度に依存しない仕組みができています。そのため、仮に中国市場の回復に波があったとしても、好調な国内レジャー需要に加え、韓国、東南アジア、そして近年急成長しているインドといった多様な地域からの送客がその分をしっかりとカバーし、全体として非常に健全なバランスを保っています。


 これからの10年間で、インド市場は日本にとって真のゲームチェンジャーになると思います。


●韓国最大の外資系ホテル事業者に 日韓の人流は双方向へ


――今、宿泊客としてのインバウンド客は具体的にどの国から来る顧客が多いのでしょうか。何か目立つ傾向はありますか。


 韓国からの顧客はやはり非常に多いですね。あとは東南アジア全体、特にインドネシア市場が極めて強い傾向にあります。


――韓国からの顧客が多い現状について、どのように分析していますか。


 「距離の近さ」が一番の理由だと思います。また、日本と韓国では文化が違うため、その違いや新しい文化を体験したいモチベーションを持つ顧客が多いのだと感じます。


 この流れは、逆方向でも起きており、日本から韓国に向かう渡航者も非常に増えています。両国間での活発な双方向の人流が確立されていることが、高い稼働率を支える大きな要因です。K-POPが好きな日本の若者たちの多くが、韓国を訪れていると聞きました。


――韓国では、アコーグループはかなり大きなビジネスを展開しているのでしょうか。どのような状況か、特徴があれば教えてください。


 実は、韓国における最大のインターナショナルホテルオペレーターは、当社です。メルキュールだけでなく、Mギャラリー、イビス、ノボテルなど幅広いブランドを展開しています。日本と比較すると、ラグジュアリーブランドの展開は韓国の方が少し先行している特徴もあります。


●22ホテル劇的再生の舞台裏とは? 地方の施設に宿る「真の価値」


――アコーは2024年、日本国内の旧ダイワロイヤルホテルを一斉にリブランドしました。開業から2年が経過し、実際の投資回収やパフォーマンスはどうでしょうか。


 当初想定していた以上の、極めて優れたパフォーマンスを発揮しています。このプロジェクトに参画した最大の理由は、まだ世界に知られていない地方の真の価値を見いだし、グローバルな観光目的地として再生させたかったからです。 


 大都市の中心部だけでなく、これまでインターナショナルホテルブランドが届いていなかった地方にこそ、素晴らしい文化や自然が眠っています。単にホテルの軒数を増やすという規模の拡大が目的ではありません。地方ならではの豊かな体験を、当社のグローバルなロイヤルティメンバー(会員)に届けること、そして同時に、日本国内の顧客にとっても身近で魅力的なリゾートを提供することが本質的な狙いでした。


 現在、国内外から非常に高い支持をいただき、地域社会と深くつながるという当初の目標は素晴らしい形で実現しつつあります。今後も地域に寄り添いながら、共に持続可能な成長を続けていきたいと考えています。


――目標を達成できた要因は何でしょうか。


 もちろん、日々の数字や利益を細かく厳密に管理しながら、目標を達成できたという実務的な面もあります。ただ最大の要因は「国際的なブランドを地方のロケーションにしっかりと露出させたこと」があり、それによって「ブランド認知度」がこの2年間で劇的に向上したことにあります。


 もともと日本に存在しなかった「グランドメルキュール」というブランドを、新たに導入し、一斉にオープンしました。それによって、これまでアコーのホテルが存在しなかった地方エリアに、大きなタッチポイントができました。


 新たな接点が生まれたことで、当社のホテルに泊まったことがなかった新しい顧客層や、インバウンドの顧客を、地方に直接呼び込むことに成功したのです。数年経った今、非常に良い成果を出せたと感じています。


 ただ、まだまだ上を目指せます。この22軒が目指すのは、国内外の顧客に選ばれ、愛されるホテルになることです。グランドメルキュールとメルキュールのブランドコンセプトを体現した、地域の魅力を訴求するユニークな体験価値を提供し、日本と世界をつなぐ旅の拠点を築いていきます。


●ブランドの根幹は「従業員教育」 元のやり方を変えない教育方針


――良質な顧客体験を生み出すためには、従業員教育も重要です。2024年のリブランドによって、日本で多くの新しい従業員を抱えることになりました。2年経って教育面での手応えはいかがでしょうか。


 これは非常に大きなタスクであり、大きな挑戦でした。最初から全てスムーズにいったわけではありません。しかし、現状を極めてポジティブに捉えています。


 従業員の教育において重要なのは、彼らが当社のカルチャーや、当社がどのような組織であるかを理解することです。同時に、彼らがこれまで培ってきたやり方の全てを変えてしまいたくないという思いもあります。多くのチームメンバーは地域に密着し、その土地と深い関連性を持っているからです。


 アコーは従業員を、このホスピタリティー領域における「心」(ハート)や「アーティスト」を掛け合わせ「ハーティスト」と呼んでいます。彼らの大半は旧ダイワロイヤル時代からそのまま引き継いだスタッフですが「インターナショナルホテルオペレーターで働くとはどういうことか」を深く理解し、新しいカルチャーを前向きに、自分ごととして捉えてくれています。


 もちろん、英語のコミュニケーションなど、課題は残っています。しかしアコーのトレーニングマネジャーが各ホテルを回り、開業の前後を通じて当社のホスピタリティーの在り方について研修を徹底して実施してきました。


 「英語が苦手なら、まずはこれだけは英語できちんと言えるようにしよう」といった段階的なトレーニングを日々実施していて、全員が確実に成長しています。彼らがもともと持っている美点や素晴らしいホスピタリティーを奪わないようにしながら、グローバルの基準を浸透させることが重要です。


(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)



このニュースに関するつぶやき

  • アジアの国で安全に旅行が出来て、四季があって雪が降り、スキーができる国は日本だけ。それだけでも東南アジアの人たちが押し寄せるのは分かる。C国やK国も雪が降るって?安全じゃないでしょw
    • イイネ!1人
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