既婚者や子持ち女性にイライラ…SNSに不満ぶちまける独身OL、依存の背景に“生きづらさ”も

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2024年06月17日 08:00  ORICON NEWS

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『満タサレズ、止メラレズ』3話『SNS依存 独身・キャリアOL 前編』(C) 駒井千紘/ソルマーレ編集部
 「結婚出産は女の墓場」、「子どもの写真見せられると反応に困る」「男の付属品としてしか存在価値がない」…。同僚のワーキングマザーや既婚女性たちへの批判をSNSに投稿していた独身OL。その衝撃的な末路を描いているのが、身近に潜むさまざまな依存症をテーマにしたオムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』だ。SNS依存が引き起こした悲劇や、その背景にあるものについて、作者の駒井千紘氏に聞いた。

【漫画】「結婚出産は女の墓場」「子どもの写真見せられると…」、独身OLの過激投稿の末路は?

■ワーキングマザーへの不満を投稿、独身OLが踏み込んだ破滅の道

 身近に潜むさまざまな依存症を扱ったオムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』(コミックシーモア (C) 駒井千紘/ソルマーレ編集部)が話題を呼び、このたびドラマ化されることになった(ABCテレビ 6月23日 後11:55〜)。依存症は、意志の弱さやだらしなさに限ったことではなく、誰もが陥るリスクのある脳の病気だという。現代は、「女性の生きづらさと依存症は何か関係があるのでは?」と、本作を描くにあたって、依存症について取材を進めてきた駒井千紘氏は語る。

 SNS依存症をテーマにしたエピソード(3・4巻)の主人公は、ワーキングマザーの同僚にイライラが止まらない独身OL。入社以来、会社に全力で貢献してきた自負があったものの、一方で独身というだけで肩身の狭い思いをさせられているように感じていた。会社や同僚、既婚者や子持ち女性への不満を「結婚出産は女の墓場」などとSNSにぶちまけていたところ、ある投稿が多数の人々から共感を呼んだことをきっかけに、破滅の道へと転がり落ちていく──。

 「昨今、“子持ち様”論争がSNS世論を賑わせていますが、本来、改善すべきなのは“仕事と育児の両立しづらさ”や“不適切な仕事配分”、あるいは“人手不足”といった社会問題のはず。なのに、子育て中の人と独身の分断を煽るものになってしまったのは、いかにもSNS的だなと思いました」

 依存症とは、特定の対象を繰り返すことで脳の回路がジワジワと壊れ、やがてコントロールが効かなくなる状態を言う。そして、広告を主な収入源とするSNSは、ユーザーに繰り返し利用させる=依存させるビジネスモデルとも言える。

 「もちろんSNSにもうまく付き合えば有益な面はありますが、それはあらゆる依存症に言えること。ただ、SNSの功罪は、人々を歪んだ形で強く結びつけてしまったことだと思うんです。世の中にはいろんな意見の人がいますし、SNSのなかった時代には『そういう意見もあるんだな』と曖昧に受け止められていました。ところがSNSは、AIがユーザーの好みを把握した投稿をおすすめしてくるため、『やっぱり自分の意見は正しかった』と錯覚し、やがて違う意見の人を攻撃するようになる。議論が白熱したほうがプラットフォーム側としてはありがたいわけで、うまくできているなと思いますね」

 もしかすると、本質を見誤らせた“子持ち様”論争も、SNSに踊らされていただけなのではないだろうか。

 「私の子どもの小学校では、SNSのメカニズムと危険性についての指導がされています。SNSとメンタルヘルスの関係も研究が進んでいますし、生まれた時からSNSがある世代のほうが、意外と上手に付き合えているのかも? と感じます。むしろ、いきなり生活の中にSNSが飛び込んできた大人世代のほうが危ういのかもしれません」

■行き過ぎた投稿で個人情報を晒され、退職…その末路は?

 自分の投稿に「いいね」やコメントがついてうれしい気持ちになったことは、SNS利用者ならば誰しも多かれ少なかれ経験があるはず。SNS依存の主人公もまた、日常の鬱憤や既婚者を批判する投稿がバズり、そこに寄せられた共感コメントに震えるような喜びを体感する。だがそれもつかの間、行き過ぎた投稿により個人情報を晒され、退職に追い込まれてしまうのだ。

 「リアルでは言えないこともつぶやけて、ストレス解消ができるのもSNSの効能の1つではあります。日常に生きづらさを感じている人はなおさら、SNSが心地よい居場所になりがち。相容れない意見があっても『自分は自分、他人は他人』という引いた目線を持てればいいんですが、この主人公の場合は『認められたい』という思いが強いがあまり、相手を攻撃するようになってしまいました」

 人はどうあれ自分は自分。いわば自己肯定感が育まれるかどうかは、幼少期の親との関わりが大きいことも描かれる。主人公が誰かの「いいね」によってしか自分の存在価値を感じられないのは、幼少期に親の考える“いい子”を押し付けられたことが原因だった。

 「子どもの頃に無条件で親に愛されたかどうか。愛着障害と依存症には、深い関係があると言われています」

 SNSのバズをきっかけに、健康も社会的地位も失う主人公だが、ストーリーは完全なバッドエンドではなく、一縷の救済も描かれる。

 「編集担当さんにはドSだと言われますが(笑)、深刻な事態に陥らないとなかなか依存症と向き合う決心ってつかないんですよね。また、依存症は完治はないと言われている病気なので、安易にハッピーエンドでは終わらせられませんでした。ただ、どんなにつまずいた人でも受け入れ、立ち直りをサポートする機関もこの社会にはあるということもお伝えしたかった。依存症に対する誤解や偏見をときたかったのも、この漫画を描くモチベーションでした」

(文:児玉澄子)

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  • SNSの弊害を感じる。北海道の高校生も殺されることはなかっただろうし、闇バイトに手を染めることも、投資詐欺に引っかかることもなかったんじゃないか。やらないに越したことない
    • イイネ!7
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