2024年7月に茨城県では、緊急性がない救急搬送だったと病院側が判断した場合、患者から追加費用を徴収する仕組みの導入が検討されていることが報じられました。これは都道府県としては全国初の取り組みであり、茨城県知事の大井川和彦知事は記者会見で「救急車が無料のタクシー代わりになっている」と指摘しています。
【写真】緊急性がない119番通報は「話の途中で切る場合も」…救える命のため、東京消防庁が異例の訴え
消防庁の速報値によると、2023年(令和5年)の全国での救急車出動件数は約664万人で、前年度よりも約42万人増加しました。これは日本国民の約20人に1人が1年間で救急搬送されたことを意味します。その中でも緊急性のない救急要請は増加傾向にあり、東京消防庁のデータでは2023年に救急搬送された人のうち、軽易で入院を要さないと判断されたケースが半数以上となる54.2%にのぼっています。
実際におこなわれた不要不急の救急要請とはどのようなものがあるのでしょうか。救命現場で今も活動している消防士Fさんに詳しく話を聞きました。
ー不要不急の救急要請の具体例を教えてください
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私が担当している地域では「自分で行くよりも救急車で行った方が早く診てもらえるから」という理由がよくあります。病院に連絡したものの待ち時間が長いため、救急車で行けば早く診察してもらえると思い要請するケースが多いです。
また「足に釘が刺さったため痛くて車の運転ができない」や「子どもが発熱しているが、自分は飲酒しているため運転できない」という理由での要請もあります。さらにコロナ禍以降は「家族に感染させたくない」や「喉が痛いのでコロナかもしれない」という理由での搬送依頼も増えました。
ー救急車をタクシー代わりに使っているケースが多いのでしょうか?
一部にはそのような利用も見受けられます。消防署へ歩いて来て「乗せていって」と言われる場合もあり、タクシー感覚なのかな?と思うこともあります。
タクシーのように使うことは出来ない旨を説明すると自分で病院へ行ってくれる場合もありますが、そのようなことが重なると軽傷者の対応に追われて、別の業務に支障が出てしまいます。また一人暮らしの方や乳幼児の保護者など、軽傷でも不安を感じて救急車を呼ぶケースも少なくありません。
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このような人にぜひ使ってほしいのが、救急車を呼ぶかどうか迷った時に利用する相談ダイヤル「#7119」です。ここでは医師や看護師が症状を聞き取り、救急車の要否や受診できる医療機関の案内をしてくれます。
ただし地域によって実施状況や利用時間が異なるため、事前に公式ホームページに掲載されている実施エリアを確認してからの利用をおすすめします。
また15歳未満の子どもの場合には「#8000」の子ども医療電話相談が全国で利用可能です。子どもがいる家庭では、緊急時の備えとして覚えておくと安心です。
ー一部の地域で救急車の有料化が検討されていますが、このことで不要不急の救急が抑制されると思いますか?
個人的には一定の効果はあると思います。どんなことでも救急車を呼べばいいという認識は薄れるかもしれないという期待がありますね。その一方で、経済的に余裕のない人が緊急時に救急車を呼ぶのをためらうことがないか、という懸念もあります。
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この茨城県の不要不急な救急搬送の患者負担のニュースには多くの意見が寄せられており、「ぜひ導入してほしい」「すべての都道府県、すべての病院で実施して」「救急車は全て有料でいい」といった賛成意見がある一方で、「選別する病院側の負担になるのでは?」「本当に必要だと思って呼んだのに請求されるのはどうかと思う」といった反対意見が出るなど、賛否が分かれています。人命に関わる問題ということもあり、今後も関心が高まっていくでしょう。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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