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東京大学や国立天文台などからなる研究チームは、おとめ座の方向約5500万光年の距離にある楕円銀河「M87」の中心部から強力なガンマ線フレアを捉えたと発表した。M87の中心にある巨大ブラックホールが、約10年ぶりに活動期を迎えたことを示すとともに、超高エネルギー電磁放射の発生メカニズムを解明する手がかりになるという。
2018年に世界中および宇宙から17を超える望遠鏡が電波、可視光線、紫外線など様々な波長帯で一斉に観測するキャンペーン(多波長合同観測)を行った際、M87の中心部から強力なガンマ線フレア(ガンマ線において短い期間だけ明るく輝く現象)を捉えた。3日間という短時間の現象だったが、可視光線の数千億倍のエネルギーを持っていたという。
国立天文台が運用していたスパコン「アテルイII」でシミュレーションを行った東京大学宇宙線研究所の川島朋尚研究員は「2018年のフレアは、超高エネルギーガンマ線で特に強い増光を示した。これまでのM87の『おとなしい』時期と同じ放射領域で超高エネルギー粒子が更なる加速を受けたか、あるいは異なる放射領域で新たな加速が起きた可能性も考えられる」としている。前年の17年に実施された観測キャンペーンでは、M87のブラックホールが非常に「おとなしい」状態であったことが報告されていた。
研究チームの世話人の1人である名古屋市立大学の秦和弘准教授は「M87の巨大ブラックホールはとても気分屋で、いつフレアが起こるか事前に予測がつかない。17年と18年で静穏期と活動期という全く対照的なデータが得られたことは、巨大ブラックホールの活動サイクルを紐解く上で重要な手がかりとなる」としている。
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研究成果は欧州の天文学専門誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジクス」に掲載された。
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