【ニューヨーク時事】米ニューヨーク市マンハッタン中心部に乗り入れる車両を対象とした「渋滞税」の徴収が2025年1月5日から始まる。ニューヨーク州が主導し、慢性的な混雑の緩和や、料金収入を財源に老朽化する地下鉄などの改修を進めるのが狙い。同税に反対するトランプ次期大統領の就任前を狙ったが、トランプ氏が同州を提訴する可能性が取り沙汰されており、導入後も同氏の動向に戦々恐々とすることになりそうだ。
米調査会社INRIXによると、同市内では運転手1人当たり年間101時間の渋滞に巻き込まれており、混雑度合いは世界最悪レベル。同州が試算したところ、物流停滞など渋滞に伴う経済損失は年間200億ドル(約3兆円)に達し、市民生活に悪影響が出ている。
計画では観光地タイムズスクエアや、世界的な金融の中心地ウォール街などを走行する乗用車から9ドル(約1400円)を取ることが柱。同州は対象地域を通る車両を1日当たり約10万台減らせると見込んでいる。渋滞税は全米初の取り組み。
ホークル知事は物価高を考慮し、24年6月に渋滞税の先送りを決めた。だが、11月の大統領選でトランプ氏の当選が決まった直後、料金を当初案の15ドルから4割引き下げて復活させると突然宣言。選挙結果には「左右されていない」とかわしたが、額面通りに受け取る向きはほとんどない。
渋滞税を廃止に追い込むと公言するトランプ氏がニューヨーク州を提訴するかどうかも焦点。マンハッタンに多くの住民が通勤し、同税導入に反発するニュージャージー州が起こした訴訟は決着していないが、司法判断次第では差し止められる可能性もある。