三菱ＵＦＪ元行員を逮捕＝貸金庫から金塊２．６億円窃盗容疑―１７億円超被害、投資失敗で借金か・警視庁

　三菱ＵＦＪ銀行の貸金庫から顧客の金塊２億６０００万円相当を盗んだとして、警視庁捜査２課は１４日、窃盗容疑で、同行元支店長代理の今村由香理容疑者（４６）＝東京都練馬区谷原＝を逮捕した。「昨年９月ごろに窃取したことに間違いない」と容疑を認めている。

　同課によると、被害に遭った顧客は少なくとも約６０人、貸金庫から盗んだ現金や貴金属などは総額１７億円相当に上るとみられる。

　今村容疑者は逮捕前の任意の調べに対し、「外国為替証拠金取引（ＦＸ取引）や競馬で損失を出して消費者金融で借金し、貸金庫の金に手を付けるようになった」という趣旨の話をした。損失額はＦＸ取引だけで少なくとも１０億円に上るとみられる。

　逮捕容疑は同行練馬支店に勤務時の２０２４年９月下旬、同支店の男性顧客２人の金塊計約２０キログラム（約２億６０００万円相当）を貸金庫から盗んだ疑い。

　金塊は都内や千葉県内の質店７店に質入れし、計約１億７０００万円を得ていた。資産を盗んだほかの顧客の貸金庫に補填（ほてん）し、不正発覚を防ごうとしていたとみられる。

　同行によると、今村容疑者は都内の練馬、玉川の２支店に勤務していた２０年４月〜２４年１０月、貸金庫の管理を一人で担っていた。支店が保管する鍵で不正に貸金庫を開け、現金などを盗み出していたとされる。

　貸金庫は同行と顧客がそれぞれ保管する二つの鍵で開錠する仕組みだった。鍵の紛失などに備え、顧客の鍵の予備は専用封筒に入れ、顧客と同行がそれぞれの印鑑で封印し支店で保管していた。

　子会社が定期的に鍵の保管状況をチェックしていたが、封印が破られていないかなどの詳細な確認はしていなかった。

　顧客の１人から「貸金庫の中身がなくなっている」と指摘を受け、同行は２４年１０月末に調査を開始。今村容疑者が関与を認めたため、同１１月１４日に懲戒解雇した。

　２支店以外の貸金庫に被害はなく、同課などによると、今村容疑者以外の関与も確認されていないという。

　三菱ＵＦＪ銀行は今村容疑者の逮捕を受け、「ご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびする。警察の捜査に全面的に協力する」とのコメントを発表した。