2月22日の猫の日を前に、辰馬本家酒造(兵庫県西宮市)が2022年から毎年、限定販売している「黒松白鹿ネコダスケ特別純米山田錦」(720ml)が今年も2月7日に発売開始される。「ネコダスケ」という商品名のとおり、売上の一部が野良猫の保護活動に充てられる。考案した同社商品企画部の田中美紗さんに開発秘話などを聞いた。
「子どものころから実家ではずっと猫と一緒に育った」という田中さん。8年前、たまたま神戸の保護猫団体が開催していた「街に生きる地域猫の写真展」をみたのがきっかけで、外で暮らす猫たちの現状を深く知ることになる。
「野良猫は何もしなければ増えてしまうため、TNR(捕獲、不妊去勢手術を施し、元の場所に戻すこと)をしていること、殺処分の現実、けがや病気の猫の治療費はボランティアさんの自前となることが多いなど、保護猫活動の現状がよく理解でき、すごく大変で根気のいる活動だなと実感しました。団体の譲渡会では個人的にお手伝いもさせていただき、少しでも役立てることが何かできないかと模索するようになりました」
辰馬ブランドの新たなファンづくりに
田中さんは当時猫を飼っていなかったこともあり、別の団体から公園で保護された姉妹の子猫3匹を引き取ることに。そして、思いついたのが「晩酌で猫助け」というアイデアだった。
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さっそく企画書を書いて上司に提出。しかし当時は、企業が地域貢献の一環として保護猫、保護犬活動を支援し寄付するという考えは現在ほどまだ浸透していなかったこともあり、なかなか企画へのゴーは出なかった。
田中さんは猫を助けるお酒をつくることで「自然環境とともに身近な動物の命を守り育てることや、地域の社会課題解決を応援することが(同社の)ブランドの新たなファンづくりにも繋がっていくはず」と説いてまわった。
「くじけそうになった時期もありました。でも、ホットカーペットの上であたたかく幸せそうに寝ている我が家の猫たちを眺めていると、外で寒さに耐えている野良猫を助けたい、一匹でも多く幸せな猫を増やしたい、という気持ちが溢れてきました。友人も『ここで踏ん張らないでどうするの?』と後押ししてくれて。我が家の猫たちと友人の励ましのおかげで、粘り強く会社に掛け合うことができ、ついには企画を通すことができました」(田中さん)
「ネコダスケ」は兵庫県産米山田錦を100%使用し、すっきりとした中に山田錦の旨みとコクがしっかり感じられる味わい。ラベルデザインは保護猫の書籍を多数出版し、SNSやメディアで人気のイラストレーター・オキエイコさんに依頼した。
2022年2月22日は「2」が6つも並ぶ「スーパー猫の日」。コロナ禍で猫を飼う人も増えるなか、同年2月初旬、オンラインショップと直営店で限定222本を初めて売り出した。すると、わずか数十分で完売。猫好き、日本酒好きの人たちの心をしっかり捉えたのだった。
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その後、同企画の社内での評価は一気に高まり、毎年、猫の日の前に「ネコダスケ」を限定販売することに。2023年は450本、24年は470本を売り上げ、それぞれ約10万円を寄付することができた。4回目となる今年は2月7日から600本限定で販売を始める(ECサイト「白鹿オンラインショップ」と直営店「白鹿クラシックス」のみ)。販売価格は2222円(税込)。1本につき222円が兵庫県西宮市の「動物愛護基金」へ寄付される。
今年2025年のラベルは、24年の商品と飼い猫とのツーショット写真をインスタやXで公募し、投稿してくれた人の中から4匹の猫モデルを選出。オキエイコさんがデザインした。選定された写真のポーズを可能なかぎり再現したイラストは、猫たちの自由な様子が表現されていて、見ているだけで笑顔になるラベルに仕上がっている。
同社は来年2026年2月も「ネコダスケ」の発売をすでに予定しており、26年版のイラストモデルも同時に募集を開始する。今回発売の商品と飼い猫とのツーショット写真を撮り、「#2026白鹿ネコダスケモデル」とタグ付けして自身のインスタやXに投稿すると、来年のラベルのモデルに選ばれるかも。
「企業の社会課題解決に向けた地域貢献活動は継続が大切と思っています。『ネコダスケ』を通じて、少しでも不幸な猫を減らせるお手伝いができれば嬉しいです」と田中さん。猫の日を、晩酌しながら猫を助ける日にしてみては。
(まいどなニュース特約・西松 宏)
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