地中海の深海に設置された素粒子ニュートリノの観測装置(「KM3NeT」コラボレーション提供) 地中海の深海に素粒子ニュートリノの観測装置「KM3NeT」を設置している国際研究チームは、2023年2月に宇宙から飛来したニュートリノのエネルギーが人類の観測史上、最も高かったと発表した。論文は16日までに英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
エネルギーの数値は約220ペタ(ペタは1000兆の単位)電子ボルトと推定され、別の国際研究チームが南極点に設置した装置「アイスキューブ」で観測した最高値より桁違いに大きい。
この超高エネルギーのニュートリノの発生源は特定できていないが、遠い銀河の中心にある巨大ブラックホールの周囲から、超高速で地球の方向に噴出するガスの流れ「ブレーザー」である可能性がある。一方、宇宙誕生から間もない時期に放出された光に由来する「宇宙マイクロ波背景放射」に宇宙線が反応して生じた可能性もあり、この場合は初の観測例になるという。
ニュートリノは他の物質とほとんど反応せず、宇宙から地球に飛来しても大半は突き抜けてしまう。しかし、水中を進む際にまれに微弱な光を発することがあり、間接的に観測できる。岐阜県にある東京大の「スーパーカミオカンデ」は地下にある巨大タンク内の水、アイスキューブは自然の氷床、「KM3NeT」は海水を利用している。