震災関連文書などが保管される仙台市公文書館の書庫=2月26日、仙台市青葉区 東日本大震災に伴う津波や原発事故を経験した自治体で、被災時の対応などといった震災関連文書の保管が課題となっている。発生から間もなく14年。災害の教訓を伝える重要な記録としての役割を持つ一方、年月の経過とともに増え続けるため保管場所の確保などが負担となってきており、自治体によっては保管基準を設けるなど独自の工夫を凝らしている。
宮城県は、震災関連文書について歴史的に保存価値が高く、県公文書館で永久保存される可能性が高いと想定。震災から10年となった2021年度以降、簡易な文書は処分するようにしたものの、24年3月末時点で保管している震災関連文書は、簿冊にして約1万7000冊に上る。県の担当者は「地下書庫や各課のキャビネットで保存を続けているが、今でもいっぱいいっぱいの状況だ」と実情を語る。
仙台市は23年、選別基準をまとめたガイドラインを作成。市の震災復興基本方針など約100項目に及ぶ事例を挙げ、保管する文書の目安を設けた。担当者は「震災当時の市の対応を伝えるためにも、公文書の保存は必要だ」と強調する。
28年度に開館予定の複合施設での活用を目指し、選別作業を進めている福島県大熊町。一定の保存期間が過ぎた関連文書を「アーカイブ文書」として保管しており、担当者は「震災から14年になるが、まだまだ生々しい記録だ。通常は捨ててしまうものでも、残すことで振り返ったときに重要な資料となる」と保存の意義を語った。
文書廃棄が問題となり、条例制定にまで発展したケースも。震災で町長(当時)と職員計39人が犠牲となった岩手県大槌町では、発生時の初動対応を検証するために職員計80人から聞き取った証言資料を18年に破棄した。
その事実が表面化すると、批判を含めさまざまな意見が噴出。町は19年3月、適正保存に向け、公文書の定義を明文化した公文書管理条例を制定した。担当者は「文書の管理は、将来まちのために財産になるのかを確認しながらしていくべきだ」と話した。
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震災関連文書などが保管される仙台市公文書館の書庫=2月26日、仙台市青葉区