「復興のさなかに」大船渡の山林火災 東日本大震災で被災の住民多く

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2025年03月05日 06:17  毎日新聞

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大船渡市赤崎町まで延焼している山林火災の消火活動を対岸から見守る地域住民ら=岩手県大船渡市で2025年3月4日午後3時37分、玉城達郎撮影

 岩手県大船渡市で2月26日に発生した大規模な山林火災は地元をはじめ東北各地の消防関係者が懸命の消火活動に当たっているが、間もなく1週間となる4日も鎮火の見通しは立っていない。これまでに約2600ヘクタールを焼失し、少なくとも84棟以上の建物被害があったとみられ、現場は14年前の東日本大震災で被災した住民も多く暮らし、今も避難所で落ち着かない日々を過ごす。


 「我が家は大丈夫だろうか」。大船渡市各地の避難所には仮設テントが設けられ、避難者は自身の生活や、漁業などの生業の今後に不安を抱えながら過ごしている。多くは東日本大震災でも避難生活を経験。消火活動の現場の情報はなかなか届かず、「14年前の復興のさなかに、また避難するとは」といった声が漏れる。


 「高台を意識して海から離れて住んでいたら、今度は逆に山から火が来た。津波の時には必死に高台に逃げれば良かったが、今回は一体どこに逃げればいいのか分からなかった」


 大船渡市立越喜来(おきらい)小の避難所で過ごす綾里(りょうり)地区の元公民館長、佐藤次夫(つぎお)さん(83)は火の手を避けて避難した様子を振り返る。


 同地区の住民の8割ほどが漁業関係の仕事に携わるという。震災時には海岸を津波が襲い、その後海の近くには家などが100戸近く、徐々に再建された。佐藤さんによると「高台に移り、家を建て直した人も少なくなかった」という。一番の関心は「自宅が一体どうなったか」。しかし詳しい情報はまだ伝わらず、鎮火後に様子を見るまでは気が気でない。


 大船渡はホヤやウニ、ホタテ、アワビ、カキなどが知られ、3月上旬はちょうど養殖ワカメの収穫期と重なる。地元の漁業関係の施設が焼失すれば「今後の住民生活にも影響が出る」と不安を募らせる。「ワカメは今海から上げて刈り取らないと市場価値が落ちてしまう」といい、ホヤやアワビなどの養殖施設の状態も気がかりだ。


 避難者の中には、震災後に仮設住宅で数年過ごし、震災前のローンを抱えたまま再度家を整えたという人もおり「今は家の状態がはっきりするまで仕事を続けるだけ」と話す女性もいた。


 避難所の近くに実家があるという炭釜(すみがま)恵さん(59)は「震災から14年になり、この辺では家を建てられた人もいれば、そうでない人もいる。震災はついこの間のことのようで、この辺りもまだまだ元には戻っていなかった」と話す。復興の途上で起きた今回の火災については「まだ分からないことが多い」と不安を口にした。【工藤哲】



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  • 能登の朝市みたいに燃えた住宅区画とそうじゃない区画がハッキリ分かれてるのが不自然。災害を装った地上げかもね
    • イイネ!3
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