米、キャベツ高騰で食卓は悲鳴!コメ卸業者「あと3年はこの状況」 限界むかえる飲食店「値段を上げるとお客さん来なくなる」【Bizスクエア】

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2025年03月05日 06:31  TBS NEWS DIG

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コメやキャベツなどの歴史的な価格高騰で生鮮食品の高止まりが続いている。高騰はいつまで続くのか。現場を取材した。

【グラフと画像でみる】朝食価格指数とドル円、エンゲル係数 など

高値続くコメの現状は… 生鮮品高騰いつまで?

埼玉県・越谷市のコメ卸業者、ナカムラ米販。飲食店や弁当店に業務用の米を販売している。倉庫を見せてもらうと…

ナカムラ米販 中村貞昭代表取締役:
今ある在庫の量だと半月分くらい。もう空きパレット(荷台)ばかりで積むお米がない状態。

中村さんは今年も米不足を心配している。

ナカムラ米販 中村貞昭代表取締役:
相対的に物量が少ない。夏の暑さによるコメの出来が悪い、害虫被害、農協にコメが集まらないで中間業者が抱えて持って行った。農協が出している価格より高めに買うから。

備蓄米放出の発表でコメの流通が円滑になり、価格が下がることが期待されていますが、農水省がまとめた2月10日から16日までの全国のスーパーの米の販売価格は、前の週から62円高い3892円で7週連続で値上がりしている。

ナカムラ米販 中村貞昭代表取締役:
価格は多分下がっていかないと思う。備蓄米の放出の値段が決まっていないことと、出たとしても実際に自分たちが確保できるかどうかの不安があって、値段が下がらないのではないか。

中村さんは、備蓄米の流通についてもうまくいかないのではと懸念している。

ナカムラ米販 中村貞昭代表取締役:
最初15万トン出すという話をしているが、まずは学校給食や病院とか、公共関係のところに優先的に出すので、一般の方に回るのはどのぐらいになるか、潤うぐらい回るような気はしない。

そしてコメを巡るこの状況は、来年以降も続くと中村さんはみている。

ナカムラ米販 中村貞昭代表取締役:
あと3年くらいこういう状況が続く。農家が増えない限り無理。

2月の東京23区の消費者物価指数で「生鮮食品」は前年同月比プラス18.4%だった。

消費者の生活防衛意識も高まっている。毎日の朝食にサラダを欠かさないという女性は…

「水菜を買いました。キャベツは(高く)買えないので、水菜でかさ増しして…」トマトが大好物だという男性は「毎日大きなのを食べていた。最近はプチトマトに変えた」

生鮮品高騰いつまで? 材料費高に飲食店は…

価格が高騰しているからといって、簡単に代わりが効かないのが町の食堂。

「とんかつ屋は飯が勝負ですから、ごはんだけは必ずこだわる」東京・大田区 京急蒲田駅前に店を構える「豚汁と玄米の店 檍(あおき)食堂」はオーナーの丸山正一さんが2年半前に開業した。メニューは千葉県産のブランド豚を使った豚汁に生姜焼き、とんかつ。ごはんは佐渡島産のコシヒカリ以外は使わないこだわりようだ。

人気の「肩ロース生姜焼き定食」価格は1500円。250グラムの肉の下にはたっぷりのキャベツが…。「キャベツを美味しく食べてもらうためにわざとこうしている」

1日の営業で使う国産キャベツは大玉6個。かつては1000円ほどで比較的安定していた仕入れ値は、今では3000円に跳ね上がっている。開業した2年半前、コメは1キロ450円だったものが700円に。肉は1キロ1400円が2000円に。揚げ油に至っては2倍以上。通常35%程度とされる原価率は、今では45%を超えているが、丸山さんは現状値上げなどは考えていないという。

「出来るだけ頑張って、逆に言えば値上げしないところはチャンス。お客さんがその分来るから、客数で稼ぐしかない。(原価率が)5割近くになったら上げる。まだ大丈夫、値段を上げるとお客さん来なくなる」

丸山さんはコメの価格は長期的には、緩やかに上昇を続けるのではと感じている。

「外国人が4000万人来るってコロナ前から言っている。4000万人を目指すとか、もう4000万人近く今来ている。ご飯食べるわけです。寿司だとか牛丼食べたり。米は当然足りなくなる。それで減反しろという政策の方がおかしいと思う」

東京23区物価2.2%上昇 コメ類は77%上昇 過去最大

東京23区の2月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合で去年の同じ月より2.2%上昇。1月は2.5%なので、0.3ポイント下がった。これはほとんど全て電気ガスの補助金が復活したという説明がつくのでレベル的には2.5ぐらいで高止まりしている。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
電気ガス代の補助も4月に半減し、5月からなくなるので、実質は2.5%以上と見た方がいい。

これまで物価を見るときに「除く生鮮」ということで見てきたが、実はここにきて生鮮食品がすごく上がっている。生鮮食品全体で見ると18.4%の大幅な値上がりで、米は77.5%の上昇で、上昇幅はこれまでで最大。キャベツも大幅に上がっている。1月は生鮮が20%も上がった。生鮮食品は今のキャベツのように天候要因で上下するのでそういう要因を取り除いて物価の趨勢を判断しようということだった。

――そうも言っていられないぐらい、上がっているということか。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
日本銀行やエコノミストは、生鮮食料を除いたものが趨勢だと言うが、これは私は非常識だと思う。なぜならば消費者はスーパーマーケットに行ったら一番最初に生鮮食品を見てから買い物をするので、生鮮食料品、特にキャベツとか2倍。こういう値段を見ると、やはり財布の紐がギュッと縮こまってしまうので、生鮮食品を除いたではなく、含めた総合の物価上昇が体感だと理解すべきだ。

朝食価格指数4年で1.2倍に 今後の物価の見通しは…

「物価の趨勢」以上に消費者の肌感覚としては物価が上がっている。それを端的に示すのが、熊野氏が作った「朝食価格指数」。この朝食価格指数というのは、消費者物価指数をベースにして朝食と関連する10項目をピックアップして合成したもの。2020年の平均を350円とすると、2024年末423円、1.21倍上昇していることがわかる。

――一旦物価は落ち着いたと思ったが、また上がっているのか?

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
半年ぐらい前までは、ようやく朝食の価格もお手頃になるのかなと思ったら、やはり輸入物価、小麦や砂糖などの食材の原料が上がった。ここ3か月ぐらい、またすごく上がっている。非常に苦しい。

中身を見てみると全部高くなっている。確かに最近卵も高い。

――いわゆるエンゲル係数が上がっているのか。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
食料品は必需品。消費全体の必需品の割合はエネルギーも上がっているが、食料品だけで約30%。これは家計にとっては余裕がないというマインドの悪化を招くような数字。

エンゲル係数というのは、学生時代習ったが、これが下がってくることが豊かさの象徴だと。消費に占める食料費の割合が、急激にまた上がってきている。

――他の消費にも回せなくなる。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
我々は5年ぐらいずっと、貧しくなっているのではないか。

なぜ朝食価格が高騰してしまったのか。「朝食価格指数」と「ドル円相場」を組み合わせたグラフだが、2つ微妙に連動している。円安になれば、朝食価格指数も上がっているということがわかる。

――日銀が利上げを開始したが、また円安が進んでしまったことが大きな誤算か。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
円安が止まらない限り、朝食は上がり続けるというのは、この先も暗い。日銀の金利正常化は実は朝食にも響いている。

――米の価格。備蓄米放出を決めて価格下がると思ったら、上がっている。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
これは中間の業者が抱えている、あるいは農家の人が出し惜しみしていると言われるが、備蓄米放出のタイミングが遅れて、消費者も「備蓄しておこう」みたいな。少し政策が遅れたのでみんなインフレマインドが蔓延して、なかなか価格に反映、下落の動きになっていかない。

そして1月の全国の消費者物価指数を見ると、生鮮食品を入れた総合で4%だった。これがどう推移するか。

――食料品も3月は、2000品目を超える値上げがあるということで今後も続きそうだ。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
もう3月4月は上がっていくということは、目に見えている。生活実感はこれから多分少なくとも半年ぐらいは物価高騰に国民は苦しむのではないかと懸念している。

――電気・ガスの補助金は半減され、なくなっていくと、今後の物価の水準の見通しは。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
賃上げ自体はいいことだが、食料品や外食は人件費が上がっていく分、価格転嫁が進む。好循環の流れではあるが、人件費のアップが物価を上げるので、なかなか実質賃金はプラスになりにくいという図式かもしれない。

もう実質賃金のマイナスが2年以上続いていて、ようやく12月はボーナスでプラスになった。多分1月にまたマイナスに下がる可能性があって、これがプラスにならないと豊かさは実感できないし、消費も増えない。

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
少し明るい話をすると春闘交渉において、3月12日が集中回答日で流れが分かってくるが、今年も定期昇給を含めて5%以上の賃上げが実現するのではないか。そうすると、ベースアップ率も3.5%ぐらい。大企業は3割で中小企業は7割なので、中小企業次第ではあるが、3.5%ぐらいベースアップ率が上がってくると今の物価上昇のペースだと、なんとか実質賃金はプラスマイナスゼロぐらいになりそうだが、物価がこれ以上上がるとマイナスになりやすいといういたちごっこ。

年収の壁103万円⇒160万円に 新たな壁も…複雑で分かりにくく

そうした中で政策に求められるのは当然、物価対策が必要ということになってくる。減税案がまとまったわりには小さかった。元々103万円の控除があったものを、2024年末に作った政府の予算案では「123万円にしよう」と。そして今回160万円まで控除額を拡大するということだが…。

詳しく見てみると、所得階層ごとに違っていて、恒久措置で実施されるのは年収200万円以下の人だけで、それ以上の人は2年間の限定付きで年収ごとに控除額を少しずつ減らしていくことになっている。年収850万円以下の人は全く関係がないという世界になった。政治的な妥協の産物で、減税額が大体2〜3万円ということになった。

――これだと物価高対策という意味でも、押し返すには力不足か?

第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生 氏:
税金だけで物価高対策ができるわけではない。そもそも基礎控除。基礎のベースラインなので、それに額の差をつけるのは、テクニカルすぎて、政治的な妥協が起こっているのではないかと。160万円は、ニュースの前面に出ているが、だんだん133万円とか111万円とか、実際は上げ幅が小さい。壁はあまりなくなってないとみることもできる。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月1日放送より)

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