トランプ米大統領=3日、ワシントン(EPA時事) 【ニューヨーク時事】トランプ米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を発動したことを受け、米景気の先行きに不安が高まっている。関税政策が矢継ぎ早に打ち出される中、物価高再燃への警戒感から消費者心理が悪化。トランプ氏は関税をてこに国内製造業の復活を狙うが、人件費など生産コスト高に対する企業の懸念は根強い。思惑通りに国内回帰が進むかは不透明だ。
米国は農産物の多くをメキシコやカナダに依存しており、関税賦課で輸入価格が上昇すれば、家計への悪影響は避けられない。経済政策に期待し、昨年11月の大統領選でトランプ氏に投じたニューヨーク在住の男性(27)は「食料品価格を抑えると約束していたのに残念だ。(生活が苦しくなり)みじめな思いだ」と嘆いた。
既に消費者心理が冷え込み、相次いで景気指標が悪化している。調査会社コンファレンス・ボードによると、1年間先の予想インフレ率は2月に6.0%と、前月(5.2%)から急伸。シニアエコノミストのステファニー・ギシャール氏は「予想される関税の影響など、さまざまな要素を反映している」と説明した。
トランプ氏が関税発動を断言したことを受け、3日の米株式相場は急落。代表的な株価指数のダウ工業株30種平均の下げ幅は一時900ドルを超えた。
トランプ政権は先月4日発動した中国に対する追加関税を10%上乗せし、20%に引き上げる措置も講じた。米中双方が関税をかけ合い世界経済が冷え込むリスクも抱える。「投資の神様」と称されるウォーレン・バフェット氏は米テレビのインタビューで「関税はある意味で戦争行為だ」と述べ、トランプ氏を批判した。
関税政策に呼応し、IT大手アップルは米国に5000億ドル(約75兆円)を投じる計画を発表。ただ、こうした動きは資金力のある一部企業に限られる。多くの企業は「関税が恒久的な措置になるのか見極める」(エコノミスト)ため、当面は様子見が続きそうだ。