
4月に入って相次いでモノの値段が上がっています。背景にあるのが「輸入品の価格高騰」。その影響は私たちの食を脅かしています。
相次ぐ値上げの背景に「日本の『輸入依存体質』」専門家が指摘迎えた桜の季節。インテージが調べたところ、2025年、花見を予定している人は前年比の約1.2倍だといいます。物価高が続くなか、お金をかけず楽しめるお花見に、大勢の人が来ています。
花見客
「(花見の)手軽さはすごいある」
「予算1500円、1人」
それでも桜の下で飲む一杯は格別のようで...
花見客
「物価高だけど仕事頑張りましょう」
ここ最近、暮らしを直撃する物価高。4月からの値上げラッシュを前に、駆け込みで商品を買う人も..
Q.今日は(ビールを)何ケース買う?
客
「今日は6ケースかな。全部上がるからね、値上げ対策。高いよ、何もかも上がってるわ」
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帝国データバンクによると、4月からの食品の値上げは、調味料や酒類などを含む、4200品目以上にも及んでいます。
ふぁみりぃ弁当 店員
「ごめんなさい。今日から値上げで」
この店舗では、光熱費に加えて、食用油では約3倍、マヨネーズでは約2倍(2023年比)など、原料を輸入に頼る食材の値上げが、経営を圧迫しています。
客
「やっぱり野菜高かったりするので」
さらに国産野菜の値上がりも目立ちますが、その背景も輸入する燃料代の高騰です。
こうした背景にあるのが、日本の「輸入依存体質」だと専門家は指摘します。
資源・食糧問題研究所 柴田明夫 代表
「これまでは経済合理性の面から、安いところで生産、安いコストで持ってくればいい、こういう風な発想でずっと来た。しかし決してもう安くはなってなくて、その構図というものが変わってきた。にもかかわらず、輸入に依存するというような構図が変わってないなと。国内の(食料を)生産する力がない」
実際、日本の食料自給率(カロリーベース)は、1965年に73%でしたが、それ以降は下落し、近年は40%前後で推移、2023年は38%でした。※農水省より
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これは欧米各国と比べても、際立って低い数字です。こうした低い自給率のなか、ほぼ100%自給できたのがコメでした。農水省も、コメは日本の「食料安全保障の要」と位置づけています。
ところが大幅な価格高騰に見舞われる中、自給率の優等生だったコメがいま、大きな危機に見舞われています。
「時給10円、考えられる?」コメ農家が窮状を訴える都心を次々と走るトラクター。横断幕には「百姓一揆」の文字。全国から集まったコメ農家が、切々と窮状を訴えたのです。
デモの参加者
「農家を守ろう!」
3月30日、「令和の百姓一揆」と銘打って都心で行われたデモ。全国から集まった農家など約4500人が、コメ作りの窮状などを訴えました。
新潟・長岡市の米農家 堀井修さん(75)
「米価が上がっている、百姓が儲けているというようなことを言っているけど、百姓から出て行く60kgは2万円」
農家からのコメの売り渡し価格は、5キロあたり約1700円。スーパーでの平均販売価格の5キロあたり4197円(3月17日〜23日)の半値にも満たないといいます。
その一方で、輸入に頼る燃料や肥料代といったコストは、円安やウクライナ危機などを受けて高騰。農家からは…
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堀井修さん
「今まで30年も米価は上がってないわけ。とてもじゃないですよ。後継者なんかやらせられない。時給10円、考えられる?」
2022年の国の統計では、コメ作りについては、収入からコストを引いた年間所得は平均で約1万円。時給に換算するとわずか10円です(国の統計に基づく試算)。
さらにコメ作りに限らず、農家は後継者不足が深刻です。
農水省によると、農業で主に生計を立てている人は、2024年は111万人と、1960年の1175万人の約10分の1に。平均年齢も69.2歳と高齢化が進んでいます。
堀井修さん
「後継者がいない、我々みたいに年寄りだけになる。あと10年もたつと(米を)作る人がいなくなる」
食料安全保障の要のはずのコメさえ危うい、日本の食料事情。にもかかわらず、こうした危機に備える意識が足りないと、専門家は警鐘を鳴らします。
資源・食糧問題研究所 柴田明夫 代表
「(世界の)穀物・食料のサプライチェーンを握っているのは、ごくわずかの(欧米・中国の)穀物メジャー。『食料危機だから、日本に優先して供給してください』と言ってしてくれるか、そんな保証はない。食料安全保障って考えた場合、食料を外部に依存してきた構図を国内に戻していく。そのために、日本の農業をもう一度見直していくと」
目の前の食料危機への真剣な対応がいま、求められています。