
子どもの教育費や物価上昇に備えて、Aさんは何か収入が得られる副業を始められないか検討していました。いくつかの副業を調査した結果、Aさんは占いサイトの運営を始めます。占いの知識は持っていなかったものの、「AIに質問すれば何とかなるだろう」という安易な考えでスタートしました。
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サイトを立ち上げ集客を始めてみると、徐々に利用者が増えていきます。Aさんがやっていたのは、利用者からの相談内容をAIに入力し、生成された回答をほぼそのまま鑑定結果として返信するというものです。AIによる文章でもに説得力があり、意外にも「当たる」という評判が広まっていったのです。
Aさんは知識も経験もない自分でも、AIの力を借りて人を占い感謝され、副収入にもなると知り、次第に自信を持つようになっていきました。
しかし、そんな日々は長くは続きません。ひとりの利用者から「いつも文面が似ている気がする」という指摘を受けたのをきっかけに、「本当に鑑定しているのか」という疑いの目が向けられるようになったのです。「もちろん、私が心を込めて鑑定しています」と返信したものの、内心は穏やかではありません。
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AI鑑定であることが、いつかバレるのではないかという不安が頭をもたげました。AIを使っていることが露見した場合、「利用者を欺いていたとして訴えられるのだろうか」と考え始め、気が気ではありません。
果たしてAIの利用を隠して占いをおこなっていたAさんは、何かしらのペナルティを受けるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
ー占いサイトが詐欺認定されることはあるのでしょうか
Aさんがどのようにして集客をおこなっていたかがポイントです。今回の場合、AIで鑑定をしているにも関わらず、それを隠してあたかも実際の占い師が個人的に鑑定しているかのように装っていたとしたら、詐欺認定されるリスクが高まります。
利用者からすれば、占い師による鑑定だと信じてお金を支払ったにもかかわらず、実際にはAIによる鑑定だったと知れば、騙されたと感じる人もいるでしょう。
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もし占いサイトが詐欺と認定された場合、Aさんは刑事責任を問われるかもしれません。
ー実際にあった判例はどのようなものでしょうか
AさんのようにAIを使った鑑定ではないですが、実在しない鑑定師があたかも実在すると騙して利用者にポイントを購入・消費させたとして不法行為が成立した事例があります。
この事例では伝説の鑑定士がいると謳って利用者を集めていたものの、実際にはそのような鑑定士は存在しなかったため、詐欺と認定し損害賠償の責任を負うとされました。
AさんもAIに鑑定を任せつつ、表向きには占い師が鑑定していると謳っていれば、同様の判断がされる可能性が否めません。被害が大きくなる前に専門家に相談するなどして、対処することをおすすめします。
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◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)