唐津港に陸揚げされる患者搬送ヘリコプター=10日、佐賀県唐津市 長崎県・壱岐市沖で医師ら3人が死亡した患者搬送ヘリコプター事故で、事故機の男性機長(66)が運航会社の聞き取りに「機体後方から聞いたことがない音がして、勝手に高度が下がった」との趣旨の説明をしていることが同社関係者への取材で分かった。13日で事故発生から1週間。唐津海上保安部と運輸安全委員会は、引き揚げた機体を精査するとともに、機長らから当時の状況を聴くなどして詳しい事故原因の究明を進める。
運航会社「エス・ジー・シー佐賀航空」(佐賀市)によると、事故機は6日午後1時半に長崎・対馬空港を離陸。女性患者(86)や男性医師(34)ら6人を乗せ、福岡和白病院(福岡市東区)に向かっていたが、15分ほどで機体の位置を把握できなくなった。
海保の巡視船が同5時すぎ、壱岐島沖の海面に転覆して浮いている機体を発見。同7時までに全員を救助したが、女性患者と付き添いの息子(68)、男性医師の3人が死亡した。いずれも水死とみられる。
同社関係者によると、機長は「機体後方から聞いたことがない音がした。勝手に高度が下がっていき、機体の姿勢のコントロールに専念しなくてはならなくなった」という趣旨の説明をした。「着水するしかないと判断してフロート(浮具)を作動させた」とも話しているという。
運輸安全委の航空事故調査官によると、機体の損傷状況から、右に傾きながら着水し、転覆したとみられる。
海保は9日、業務上過失致死傷容疑などで同社を家宅捜索した。
長崎県内では対馬、壱岐にある3病院が福岡和白病院へ年間30〜70件程度、民間の医療ヘリで患者を搬送していた。県医療政策課の担当者は「搬送後の交通の便の良さから、福岡県への搬送を希望する傾向がある」と説明。ヘリの運用は「命を守る上で重要だ」と強調した。