
「業務スーパー」といえば、コスパ抜群の品ぞろえで人気の食品店。“業スー”の愛称で親しまれ、プロ向けの大容量商品から家庭向けの冷凍食品、さらには海外のちょっと珍しい食材までそろう、そのバラエティ豊かなラインアップで、SNSでもたびたび話題になります。
そんな業務スーパーが、実は海外にも展開していることをご存じでしょうか。先日、ベトナム在住の日本人Xユーザーが投稿した「現地の業務スーパーでもらったノベルティ」が、意外すぎると大きな注目を集めました。
そのアイテムとは…なんと“ヘルメット”!
白と緑を基調にした視認性の高いデザインに「GYOMU JAPAN」のロゴがアクセントとしてあしらわれています。さらに、ベトナムの暑さにも配慮してか、通気性に優れた半キャップタイプが採用されているのも特徴です。
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いったいなぜ業スーでヘルメット? そんな素朴な疑問を確かめるべく、業務スーパーをフランチャイズ展開する株式会社神戸物産の海外事業部・担当役員兼部長、西田聡さんにお話を伺いました。
話題のヘルメット、きっかけは新店オープンだった
今回話題となったヘルメットは、ベトナムで業務スーパーの新規オープンにあわせて配布されているそうです。
「実はこのヘルメット企画は、約1年前にベトナムでの新店舗のオープンをきっかけとして提案されたもので、店舗によっては1周年記念のタイミングでも活用されています。配布条件は店舗ごとに異なりますが、たとえば50万ドン(ベトナム通貨)=日本円で約3000円程度お買い上げいただいた方にプレゼントする形式です」
また、各店舗に割り当てる形で、数量限定の配布となっているといいます。
「現在、ベトナムには業務スーパーが15店舗あり、新規オープン時のキャンペーンとしてこのヘルメットを展開しています。全体で約3000個を製作し、店舗ごとに数量を決めて配布しました」
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バイク文化が生んだ、ベトナムならではの発想
では、なぜヘルメットというアイテムがノベルティに選ばれたのでしょうか。きっかけは、現地のパートナー企業からの提案でした。
「ベトナムの店舗は、現地のパートナー企業様が運営しております。私たちは『業務スーパー』の看板を掲げてお店を出していただいているため、管理という意味では当然関わっておりますが、実際の運営は現地のパートナー企業様が担っているという形になります」
その提案の背景には、ベトナムの交通事情と文化が深く関係していたといいます。
「多くの方がおっしゃるように、ベトナムではバイクの利用者が非常に多く、ヘルメットのニーズが高いため、ノベルティグッズとして配布したいという提案がありました。また、ヘルメットは命を守るものでもあるため、『業務スーパーでは良い商品を提供している』という印象にもつながると考えたそうです。私たち日本人にとってはなかなか思いつかないノベルティなので、最初に企画を聞いたときには『ベトナムならではで面白い』と感じました」
さらに、配布には宣伝効果も期待されていたようです。
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「ヘルメットをかぶって日常的にバイクで移動していただくことで、お客様自身が業務スーパーの広告塔になってくださる、という狙いもあったようです」
ベトナムではどう受け止められた? 通勤で使う従業員の姿も
バイクが生活に根づくベトナムでは、バイクの保有率が世界でもトップクラスに達しているといわれています。そのため現地の人々にとって、ヘルメットはごく身近な存在。このノベルティも好意的に受け取られているようです。
「日本の業務スーパーの主な利用層は30代から60代が中心ですが、ベトナムでも幅広い世代のお客様に親しまれているようです。なかには、従業員が通勤時に活用しているという声もありました」
ベトナムでの配布開始前、神戸物産には現地からヘルメットのサンプルが届いていたそうです。透明なビニール袋に入っていたため開封することなく中身が確認でき、そのまま約1年にわたって保管されていたといいます。
そんなヘルメットが、SNSでの拡散をきっかけに多くの注目を集め、話題となりました。今回の反響は、まさに想定外の出来事だったようです。
「まさかこれほどSNSで話題になり、取材が来るとは思っていませんでした。本当に、今はSNSの時代なのだとあらためて実感しています。バイク人口に対して製作数は決して多くないため、現地で見かけることができたらラッキーかもしれません。これからも配布を続けていけば、少しずつ広まっていくのではないかと感じています」
実は日本にも! リラックマも登場した20年続くノベルティ
ベトナム以外の国では、現時点でノベルティグッズの配布事例はありませんが、実は日本では、こうした取り組みが長年にわたって企画・展開されてきたといいます。
「日本国内では20年以上も前から、新規店舗のオープン記念としてオレンジ色のトートバッグを配布してきました。これまでに配った枚数は、のべ1,300万枚(2023年1月時点)に上る見込みです。現在も新たな店舗の開店に合わせて、記念品としてこのトートバッグをお配りしています」
こうしたトートバッグのほかにも、配布されたノベルティは多岐にわたります。
「マグカップや菜箸、スパチュラ、計量カップなど、料理にまつわるアイテムを記念品としてご用意したこともあります。さらに、タオルやバンダナに加え、17年ほど前にはリラックマとコラボしたボールペンをノベルティとして展開していた時期もありました。(※現在は終了しています)かなり昔のことなので、ご存じない方も多いかもしれません」
SNSの声がヒントになった商品も 広がり続ける業務スーパー
今回のような予想外の広がりは、これからを見据える上で示唆に富む出来事となったようです。
「このようにSNSで大きな反響があると、あらためて“国ごとに文化の違いがある”という点に気づかされます。今後は海外でのさらなる店舗拡大を視野に入れつつ、長く使っていただけるものや、お客様ご自身が“使うことで宣伝になる”ようなグッズなど、今回の話題をヒントに検討していきたいと考えています。国によってパートナー企業様も異なりますので、今後のノベルティ企画の参考にさせていただければ幸いです」
さらに、日本国内におけるSNSの影響力についても、あらためてその大きさを実感する機会になったといいます。
「多くの方が当社の商品を紹介してくださっており、ここ数年は、SNSをきっかけに商品がじわじわと売れていく傾向があることも把握していました。SNS上で寄せられるお客様の声や使い方は、商品開発のヒントにもなります」
こうした状況を受け、以前は行っていなかった公式のSNS発信にも着手。現在ではXやInstagramに公式アカウントを開設し、商品紹介やキャンペーン情報などの発信を積極的に行っています。
「今後もSNSとはうまく付き合いながら、単なる宣伝手段にとどまらず、お客様のリアルな使い方やご意見を、商品開発へとつなげていきたいと考えております」
日本はもちろん、海外でも広がる業務スーパー。次はどんな“話題”が飛び出すのか、これからも目が離せません。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)