岩手県大船渡市の面積の10%にあたる約3370ヘクタールを焼失し、平成以降最大規模となった山林火災。かつて岩手での勤務経験があり、東日本大震災以来14年ぶりの大船渡での取材だったが、改めて感じたのは繰り返し発生する自然災害の深刻さだ。強風や火災は今後も十分起き得るもので、岩手県や大船渡市がすべきことは、今回の火災についての徹底した原因究明と再発防止策の構築だろう。
現場を取材して驚いたのは、険しい山から海に吹き下ろす風の強さだ。三陸道を車で走ると、時折折れて飛んだ木片が見られ、横から吹く風で車が何度もハンドルをとられた。この風で、もし木の枝に火がついていたら、かなり遠距離まで火が飛び散ることが想像できる。沿岸部は今年の雪は少なく、空気は乾燥し、火が一気に広がった恐ろしさは想像に難くない。その点、昨冬は積雪が多かった隣の秋田県とはかなり対照的な地理的事情がある。
1人が死亡し、住宅を含む220棟以上の建物が被害を受けたが、発生から1カ月以上が過ぎても確たる原因は分かっていない。たき火や野焼き、たばこなどさまざまな可能性が考えられるが、仮に人為的なものなら、今回の被害の大きさを考えれば改めて対策の強化が必要だろう。
住民に話を聞くと「市の放送や警報がうまく聞き取れなかった」という声もあった。乾燥や強風が続いた状態だったが、発生前後の住民への警報は十分な態勢だったのだろうか。スマホなどを活用したより分かりやすい告知の態勢などを含め、この検証や見直しが必要ではないか。
また今回の火災では、全国各地から消防隊や自衛隊などによる大規模な応援態勢が組まれ、長期の活動によってさまざまな反省点や教訓があったはずだ。大船渡市には今回の惨事を後世に生かし、全国の先駆けとなる山林火災防止の「大船渡モデル」を作り上げてほしい。【秋田支局・工藤哲】
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