武装した米兵が警備 「横須賀の日常」となった放射性廃棄物の搬出

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2025年04月27日 07:02  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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午前8時 街に轟く日米両国の国歌

今月17日午前8時、神奈川県・横須賀市の高台にある安針台公園。
潮風に葉桜が揺られ、残りわずかとなった花びらが舞う。
すると突然、小鳥のさえずりがかき消された。辺りに轟いたのはアメリカ国歌だ。アメリカ国歌が終わると次に君が代が流れた。公園の眼下に広がるのは在日アメリカ海軍と海上自衛隊の横須賀基地だ。横須賀は日米両国が「軍港」として共用している。

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艦船の出入りも頻繁で、この日はちょうど海自の潜水艦が帰港した。潜水艦は極秘任務に当たっているため活動はベールに包まれている。潜水艦の甲板には久しぶりの上陸を心待ちにしているであろう自衛官が整列していた。

その潜水艦の脇には巨大な艦船が係留されていた。アメリカ海軍第7艦隊の主要艦である原子力空母ジョージ・ワシントンだ。全長333メートル、2基の原子炉を搭載していてアメリカ国外に配備されている唯一の原子力空母だ。

この日、定期修理中のジョージ・ワシントンから放射性廃棄物が搬出されることが在日アメリカ軍から防衛省を通じて横須賀市に通告されていた。

「放射能調査中」海保船には物々しい表示

湾内には海上保安庁の見慣れない船の姿があった。船に搭載された大きなパネルには「放射能調査中、航行を妨げないでください」と表示されていた。この船は第3管区海上保安本部の放射能調査艇「きぬがさ」だ。原子力空母が配備された横須賀を管轄する“第3管区ならでは”の船で、空気中や水中の放射線量を調査していた。

マシンガン武装の米兵 右手はトリガー付近に

私たちは放射性廃棄物の搬出の様子を取材するため、ジョージ・ワシントンから約1.5キロ離れた安針台公園から望遠レンズを構えた。

午前8時すぎ、空母の甲板ではヘルメットを被った約20人の作業員が仕事を始めた。セーラー服を着た兵士の集団が作業員の脇を歩いていた。

レンズを艦首に向けるとマシンガンを所持した完全武装の兵士が1人立っていた。兵士の右手はマシンガンの引き金(トリガー)付近に添えられていた。

武装した兵士は放射性廃棄物の奪取などを警戒しているのだろうか。自衛隊の基地や駐屯地では、マシンガンを構えた兵士が警備に当たる様子はほとんど見ない。そこが日本にありながら、日本の法規が及ばないアメリカ軍の基地であることを物語っていた。

横須賀市が在日アメリカ軍から受けた連絡によると、搬出されるのは定期修理で生じた雑巾、プラスチックシートや作業用の手袋などの「低レベル」の放射性廃棄物だという。

また、「コンテナ付近の放射線量は周辺環境の通常の放射線量(バックグラウンド値)未満だった」と伝えたという。
一方、「低レベル」とされる放射線量について具体的な数値は伝達されず、伝達された内容通りの物が梱包されているのか、証明する写真や動画などは提供されていない。あくまでも口頭の連絡に留まっている。

「YOKOZUNA(横綱)」が吊り上げたのは…

午前9時頃、現場で動きがあった。ジョージ・ワシントンの横にある巨大なクレーンが動き出した。ちなみにクレーンの愛称は「YOKOZUNA(横綱)」。「YOKOZUNA」のワイヤーは張っていて、何かを吊り上げていることが確認できた。

そして、約30分後、茶色のコンテナが姿を現した。

コンテナはジョージ・ワシントンの艦側から搬出され、隣に係留されたアメリカ船籍の民間の運搬船に載せられた。作業は断続的に2時間ほど行われ、3個のコンテナが積み込まれた。この中に放射性廃棄物が納められていたとみられる。コンテナの方向転換などのために作業員が吊り下げられたロープを引っ張っている様子も確認できた。

横須賀市によると在日アメリカ軍側から「安全管理に従事する日本人従業員はコンテナに触れることはない」と連絡があったという。

原子力規制委が公表している海保の放射能調査艇による測定結果では、この日、異常な数値は確認されなかった。

船舶の位置情報を閲覧できるホームページ「Marine Traffic」では運搬船は、25日午前10時現在、日本から約4500キロ離れた太平洋を航行していることが表示されていた。この船は横須賀から約7700キロ離れたアメリカ西海岸の北部にあるシアトル近郊の港に向かうことになっていて、放射性廃棄物はアメリカ本土で最終処分される見込みだ。

長年、横須賀市で「軍拡」の動きに抗議してきた呉東正彦弁護士はこう語る。
「横須賀基地での原子力艦の動力装置(原子炉)の修理と、放射性廃棄物の搬出は禁止されている。日米合意に違反した作業が強行され、横須賀市民の安全や不安を無視している」。

「陸揚げされていないので覚書に反していない」

原子力艦船をめぐっては、アメリカ政府が1964年に日本政府に示した覚書(エード・メモワール)では「放射能にさらされた物質はアメリカ国外の港で搬出しない」などと約束されている。

その後、アメリカ政府は2010年に「『搬出』とは、陸上に搬出される意味だと理解している」と見解を示し、横須賀基地の敷地内で放射性廃棄物が運び出されることについては「陸揚げされていないので覚書に反していない」としている。

日本政府も2010年の国会答弁で「コンテナに納めて別の艦船に移し替えることは陸揚げを伴わないことから覚書の範囲内の行為だ」という見解を示している。

「日常」となった搬出 どう向き合うのか

日米双方から「陸揚げされていないので問題無い」という趣旨の見解が示されているが、横須賀において放射性廃棄物が搬出されたという事実は確かだ。横須賀での搬出は14回目で、原子力空母の配備後、ほぼ毎年行われている。いわば「横須賀の日常」となった。

放射性廃棄物の搬出に関心を持つ人は多くない。それでも状況を監視している呉東弁護士はこう強調する。

「搬出は市民の不安を無視し、人口が密集する横須賀基地の周辺の市民と基地の従業員を放射能汚染に晒す危険を常態化させるものだ」。

原子力空母が配備されている街の「日常」を全国の多くの人に知って欲しい。

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岸将之
TBSテレビ 調査報道部特別報道班
東京・葛飾区出身。これまで所属した社会部では東京地検特捜部や裁判所などの取材を担当。その後、「報道特集」に所属し東京五輪での「弁当13万食廃棄問題」や、侵攻が始まった翌日からウクライナ・ベラルーシの両国で取材をした。 2024年7月から所属する特別報道班ではM&Aで中小企業が悪意ある買い手企業の被害に遭っている実態を取材。

このニュースに関するつぶやき

  • @搬出されるのは定期修理で生じた雑巾、プラスチックシートや作業用の手袋などの「低レベル」の放射性廃棄物・・これで大々的に難癖をつけるTBSとそれに乗っかる反日反米パヨ。あいつらは中国や北朝鮮の弾道ミサイル発射には
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