限定公開( 4 )
英レディング大学や中国の香港中文大学などに所属する研究者らが2024年8月に発表した論文「Looks and Gaming: Who and Why?」は、人の外見の良さとビデオゲームに費やす時間との関連性を調査した研究報告だ。
実験では、身体的魅力がゲーム時間に与える影響を調べるため、米国で実施している大規模調査「Add Health Study」のデータを分析した。1994〜95年に12〜18歳だった青少年(3060人)を追跡し、2008年に青少年たちが26〜32歳になった成人期(3116人)でも調査。インタビュアーが対象者の身体的魅力を5段階で評価した。
まず社会的ネットワークと外見の関係を検証するため、成人を対象に「何人の親しい友人がいるか」という質問への回答を分析した。データ分析の結果、魅力的な外見の成人は「親しい友人がいない」と回答する確率が有意に低く、平均的な外見の人より約0.4人多い友人(平均4.9人)を持っていた。逆に、魅力的でない外見の人々は平均より約0.7人少ない友人しか持っていないと分かった。
研究結果によると、魅力的な外見な人(青少年と成人の両方)は、魅力的でない外見の人と比べてゲームをする時間が少ないことを示した。この傾向は10代よりも成人において顕著であり、また女性よりも男性において強く現れていた。魅力的な外見の成人と魅力的でない外見の成人とのゲーム時間の差は週当たり約2時間で、これは平均ゲーム時間の27%に相当する。
|
|
研究チームは逆の因果関係(ゲームが身体的魅力に影響を与える可能性)についても検証している。10代の頃のゲーム習慣が成人後の身体的魅力に影響を与えるかどうかを分析した結果、10代のゲームプレイは成人の身体的魅力に統計的に有意な影響を与えないことを示した。
一方、10代のゲーム習慣は成人後のゲーム習慣と強い正の相関があり、ゲーム行動には青年期から成人期にかけて持続性があることを示した。つまり、身体的魅力がゲームプレイに影響を与えることはあっても、ゲームプレイが身体的魅力に影響を与えるということはなかった。これらの結果を考察した研究チームの考えは次の通りである。
「ビデオゲームは主に自宅で行われ、対面での交流が少ない活動だ。一方、身体的魅力は対面での交流や社会的活動において優位性をもたらす。そのため魅力的な外見の人々にとって、ゲームに時間を費やすことの『機会費用』が高くなり、結果的にゲーム時間が少なくなると考えられる」
Source and Image Credits: Chung, A., Hamermesh, D. S., Singleton, C., Wang, Z., & Zhang, J.(2024). Looks and Gaming: Who and Why?(NBER Working Paper No. 32809). National Bureau of Economic Research.
※ちょっと昔のInnovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。X: @shiropen2
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。