「全面勝訴」と書かれた紙を掲げる大川原化工機の大川原正明社長(左から3人目)=28日午後、東京都千代田区 噴霧乾燥機の不正輸出容疑で警視庁に逮捕され、後に起訴が取り消された機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)側が、違法捜査で損害を受けたとして国と東京都に賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。太田晃詳裁判長は一審に続き、同庁と東京地検による捜査の違法性を認定。賠償額を約400万円増額し、国と都に計約1億6600万円の支払いを命じた。
原告は同社と大川原正明社長(76)、元役員島田順司さん(72)、勾留中に胃がんが判明し、その後亡くなった元顧問相嶋静夫さん=当時(72)=の遺族ら。
太田裁判長は、経済産業省令で定められた輸出規制に関する警視庁公安部の解釈について、「合理性を欠いていた」と判断。国際基準に沿った解釈をするのが合理的で、経産省から指摘されたのに再考せず、必要な追加捜査を怠って逮捕に踏み切ったとした。
その上で、そうした公安部の判断には「基本的な問題があった」と批判し、一審と同様、「逮捕には合理的根拠が欠けている」と結論付けた。
さらに島田さんへの取り調べは、偽計的な方法を用いて捜査機関の見立てに沿った調書に署名させたとして、違法と認定。地検の起訴などについても「通常要求される捜査をすれば同社の噴霧乾燥機が規制対象に当たらない証拠を得ることができた」として違法と判断した。
現職警察官3人が捜査に問題があったなどと証言したことにも触れ、「重く受け止めるべきだ」とした。
一審東京地裁は2023年12月、国と都に計約1億6200万円の賠償を命令。国、都と同社側の双方が控訴していた。
警視庁の話 判決内容を精査した上で今後の対応を検討する。
新河隆志・東京地検次席検事の話 判決の内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応する。

控訴審判決を受け、取材に応じる大川原化工機の大川原正明社長(中央)=28日午後、東京都千代田区