東京高裁=東京都千代田区(AFP時事) 大川原化工機の起訴取り消しを巡る訴訟で、東京高裁は再び捜査の違法性を認めた。噴霧乾燥機の輸出規制に関する警視庁公安部の解釈は「合理性を欠く」と指摘し、逮捕や起訴に至った判断に「問題があった」と厳しく批判した。
控訴審では、公安部と経済産業省の打ち合わせ内容が記録された捜査メモが新証拠として提出された。経産省が当初、「省令を改正しない限り規制できないのではないか」と捜査に難色を示していたが、その後に「ガサ(家宅捜索)で得た情報を基に別件で立件してもらえれば、ありがたい」などと方針を転換した経緯が記されていた。
公安部は経産省に輸出規制基準の解釈をねじ曲げさせたのか―。判決は捜査メモを引用し、経産省が方針を変えて家宅捜索を容認したと認定。ただ、打ち合わせの経緯からは「同省担当者の疑問がどのような論拠で解消されたか明らかではない」と述べるにとどまった。
その上で、公安部が経産省から「日本だけが国際基準より厳しい規制をする理由がない」と言われていたことなどに触れ、同部が「合理性を欠く解釈を採った」と判断。解釈について再考せず逮捕に踏み切っており、「犯罪の嫌疑に関する判断に基本的な問題があった」とした。
一審の証人尋問では、捜査に当たった現職警察官が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言し、別の警察官も組織を批判。二審で証人出廷した捜査員は、捜査が強行された理由を「決定権を持つ人の欲だと思う」と語った。判決はこうした証言には直接触れなかったが、「3人が逮捕は相当ではなかったと述べていることも重く受け止めるべきだ」と指摘した。