
寺院風猫アート美術館で知られる「猫猫寺(にゃんにゃんじ)」(京都市左京区)が5月24日、徒歩5分の場所に新しい施設「猫族歴史博物館(猫博=にゃんぱく)」をオープンさせた。猫作家・加悦雅乃(かや みやの)さん(26)が制作してきた作品群が一堂に展示されており、猫好きの間で注目が集まりそうだ。
「猫族歴史博物館」が24日、オープンした。一見、どこにでもありそうな2階建の古民家だが、入ってみると中はまさに博物館。グレーの壁にリフォームされた各部屋には、雅乃さんが手がけた作品がスポットライトを浴び、静謐な空間に浮かびあがるように飾られている。
展示されているのは、過去に猫猫寺で開催された企画展で公開された「ツタンニャーメン展」「世界の猫名画展」「猫国武将展」「猫仏展」「古代猫文明展」の作品群。「世界中の誰もが知っている作品を猫に変身させたら、きっと多くの方々に楽しんでもらえるのでは」(雅乃さん)との発想から生まれた。1階の7部屋、2階の5部屋をゆっくりと巡回しながら楽しむことができる。また、同博物館開館のために支援を寄せた猫作家の作品なども展示されている。
神社仏閣の彩色師の父・徹さん(56)と羊毛フェルト作家の母・順子さん(56)は雅乃さんの作家活動をいつもそばで応援してきた。「家族の目標の一つを叶えることができました」と徹さん。「外観と中とのギャップも魅力の一つです」と順子さんはほほえむ。
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雅乃さんは幼いころ、当時、保護猫活動をしていた両親のもと、猫とともに育った。絵や工作が大好きで、小6のとき、描いた猫の絵が美術展で初めて入賞。「将来は猫作家になる」と決め、20歳までの9年間で16作品が絵画コンクールに入選。才能を開花させた。
「猫雑貨店を出して、そこで作品も売れたら」と徹さん、順子さん夫婦は猫雑貨販売とギャラリーを兼ねた小さな店を営み、2016年には現在の「猫猫寺」をオープン。館内には猫のご本尊やご神体をはじめ、天井画、襖絵や屏風など、猫にまつわるアート作品が数多く飾られている。これまで数多くのメディアに紹介され、インバウンド(訪日客)の人気も高く、猫好きにとっては「一度は訪れてみたい」人気スポットとなっている。
雅乃さんの作品は美術関係者からの評価も高く、これまで制作してきた作品は200点以上に及ぶ。猫猫寺内では展示しきれず、ほとんどが倉庫で眠っている状態だったため、昨年(24年)夏、これまでの作品を一堂に展示でき、他の猫作家の作品も紹介できる美術館を作りたい」とクラウドファンディングで2度呼びかけた。目標の3千万円には届かなかったが、直接の寄付も含め、およそ800万円が集まったという。その資金を元手に昨年秋以降、物件を探したところ、猫猫寺のすぐ近くに理想的な古民家が見つかり、改修を重ねて開館に至った。
一家の信念は「自分が情熱を100%注げる夢や目標を掲げ、いますぐできることを全力でやること」(徹さん)。家族3人が力を合わせ、目の前にある今できることを着実にやってきた結果、博物館開館の目標が実現した。
徹さんは「私たち一家の夢は、作品を日本全国、そして世界の人たちに巡回企画展や常設施設で観ていただくこと。作品に接していただいた方が少しでも幸せな気持ちになってもらえたら嬉しい」と語る。猫族歴史博物館の開館は、その夢へのプロローグだ。
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「猫族歴史博物館」
【住所】京都市左京区八瀬近衛町723-28
【アクセス】叡山電鉄「八瀬比叡山口」下車、徒歩15分。またはJR京都駅前のバス乗り場C3から八瀬・大原行きバスに乗車し「八瀬甲ケ渕」下車、徒歩2分。駐車場はないため、車の場合、猫猫寺の駐車場から徒歩(5分)で行くのがおすすめ。
【定休日】火曜日
(まいどなニュース特約・西松 宏)
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