納車式は相変わらずドライだが……選択肢が増えた「日本で買えるEV」とテスラの立ち位置

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2025年05月31日 10:20  ITmedia NEWS

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 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。


【写真を見る】豪華な納車式もなく……5分弱であっさり納車された新型テスラモデル3(全10枚)


●相変わらずドライなTeslaの納車スタイル


 Teslaの納車スタイルが、あまりにもあっさりとしてドライなことは本連載でも過去に触れました。友人がModel 3を購入したので、3月初旬、東京都江東区の有明ガーデンのデリバリーセンター有明での納車に付き添ってきました。基本的には、約3年半前の筆者のときと同様に、相変わらずあっさりとしたものでした。


 指定された時間に到着すると、納車待ちの人が数人いました。デリバリーセンターと言っても、カウンターが1つあるだけです。一般のディーラーのように個別のセールス担当者がいないので、手の空いた複数のスタッフが順番に受け付けてくれます。本人確認の後、下取り車のキーをスタッフに渡し、その後、Model 3について、タブレット端末で簡単な説明を受け、諸事項の同意ボタンをタップします。


 そして、「手続きが完了したので、ご自身のスマートフォンアプリから車両にアクセスできます」と告げられます。その間、わずか5分弱。後は、納車カウンターと同じ階にある立体駐車場に駐めてある自分のクルマに移動します。もちろん、スタッフの付き添いはありません。キズや備品等、簡単なチェックを済ませ、問題がなければ、そのまま出発することができます。


 友人がCHAdeMOのアダプターについて質問したのですが、スタッフは「CHAdeMOアダプターは生産中止です」と明言しました。驚きました。加えて、「中古品をオークション等で購入可能ですが、故障した場合、保証や修理等の対応はできかねます」と付け加えます。


 スーパーチャージャーのネットワークが充実してきているとはいえ、九州の長崎方面、山陰、北海道東部などは、まだまだ不十分といった印象です。長旅に出る機会が多い人にとっては、いざというときの保険として、CHAdeMOアダプターを所持しておきたい向きもあるのではないでしょうか。


 いわゆる納車の儀は一切ありません。筆者の場合、過去、金色リボンが巻かれたモエ・エ・シャンドン(仏車シトロエンのとき)をプレゼントされたり、リアのハッチゲートを開けたら花束とディーラー前で撮影した愛車の写真立てが(メルセデスやスマートクーペのとき)サプライズでセットしてあったりと、担当者が手を尽くしてくれたものです。


 それはそれでうれしいのですが、どこかむず痒い感じもするので、ドライなTesla方式を否定するものではありません。SNSを見ていると、中国のTeslaストアでは、納車セレモニー的な写真を目にします。バルーンなどで装飾された愛車の前で記念撮影した投稿をしている人を見かけます。大仰な納車セレモニーを望むのは東アジア的な思考なのでしょうか。


 今回、1つ驚いたのは、Tesla Japan自身が納車前の有料サービスとして、ボディーコーティングを実施している点です。3年半前を思い起こすと、当時そのようなサービスは存在せず、納車の2日後に近隣のKeePer LABOというコーティングショップに持ち込んで施工してもらいました。


 前車の納車時、やはりディーラーで納車前コーティングを有料で実施してもらった記憶があるので、Tesla Japanとしても、日本でクルマを販売する以上、日本のユーザーが望むようなサービスを導入する必要があるのかもしれません。


 もしかしたら、Tesla JapanもBYDのように各地にディーラーを配置して、将来、納車の儀を行うようになるかもしれません。いや、さすがにそれはないかな……。


●バラエティーさを増してきた「日本で買えるEV」


 3月中旬、東京都世田谷区の二子玉川ライズ イベントスペースにおいて開催された「EV:LIFE 二子玉川2025」というEVやPHEVの展示イベントを見学しました。このイベントは、毎年この時期に開催されており、初めて訪れたのは、2022年だと記憶しています。


 当時は、EV自体の球数が少なく目玉展示は、ソニーのEV「VISION S」(現、ソニー・ホンダモビリティのAFEELA)でした。Model 3の大型スクリーンを中心としたシンプルな内装を見慣れているとはいえ、VISION Sの前一面のディスプレイに驚愕したものです。


 さて、今年のイベントで最も気になったEVは「フォルクスワーゲンID.Buzz」です。ビートルをベースとするいわゆる「ワーゲンバス」のEV版です。昔、知人がワーゲンバスに乗っており、リアエンジンゆえの背後からの耳をつんざく騒音にへきえきした記憶がありますが、EVであれば、そのような心配はないのでしょう。


 次に目がとまったのはBMWの「ミニ・クーパーSE」です。EVになってもミニらしいデザインは健在でした。既に市販されており、先日、筆者のModel 3を追い抜いていった同車の姿を横目で見てかっこいいと思ったものです。


 「フィアット600e」も独特のオーラを発していました。2ドアの「500e」は、街中で何度か見かけますが、4ドアの600eの実物もフィアットらしい意匠でイタリアンなカーライフを想像しぐっときます。イタリアンなカーライフがどんなものか分からないのですが...。かつてのシトロエン乗りとしては、ラテンなフィーリングという点で共通項があるのかもしれません。


 「ジープ・アベンジャー」は、存在自体が意外でした。ジープブランド初のEVだそうです。1957年生まれの筆者の場合、「ジープ」ブランドで真っ先に思い浮かぶのは、小学生のときに見ていた「ラット・パトロール」という戦争アクションのテレビドラマです。機関銃を搭載したジープで砂漠を縦横無尽に走り回ります。


 ただ、未来的なデザインのジープ・アベンジャーには、ラット・パトロールのジープようなタフな印象はかけらもありません。聞けば、同じステランティスグループ傘下のフィアット600eと共通のプラットフォームを持つ前輪駆動車だそうです。とはいえ、コンパクトなSUVとして見たら、とても魅力的なEVだと思いました。


 「ヒョンデ・インスター」も興味深い存在です。日産サクラを除いて、500万円前後かそれ以上が当たり前の日本でのEV商品群の中にあって、普通車サイズで、エントリーモデルが284万9000円は、輝いて見えます。3830×1610×1615mm(全長×全幅×全高)というサイズも日本の道路事情にマッチしています。


 また、輸入車の場合、右ハンドルながら左側のウインカーレバーが普通ですが、ヒョンデのEVは、日本に合わせて右側につけてきました。日本で本気で売ろうという意気込みを感じました。車内には、AC100V/15Aのコンセントも設けられており、災害時など、臨時の電源供給車として機能しそうです。


●再認識 Teslaは特別な存在


 今回のイベントで、全てではありませんが、日本で購入できる、あるいは今後発売が予定されているEVを見て感じたことは、「やはりEVとしてのTeslaは傑出しているな」という点です。他車を実際に試乗したわけではないので、走りや乗り味の領域について比較することはできません。


 ただ、Model 3のクルマ全体から発せられる存在感や気配のようなもの、着座したときに伝わってくる「クルマらしからぬ唯一無二な輝き」は、他に類を見ません。Teslaオーナーゆえのひいき目であると同時に、客観性を欠く感想であるという点は重々承知しています。


 それを自覚していてもなお、本稿のような公的なメディアにおいて、ひいき目な筆致を取らせてしまう存在、それが「Teslaというクルマ」と言うことにしておきましょう。筆者のようなTeslaに対して盲信した感想を述べる者をSNSでは「テスラ信者」とやゆする向きもあります。


 私が信者であるかどうかは自分では判断つきませんが、過去の耐久消費財における購買行動を振り返ると、ソニー、シトロエン、アップルと、いくつかの「信者」遍歴を経ています。お気に入りのメーカーがありその製品に囲まれて日々の生活を送ることはとてもすてきなことですし、それは誰にでもあることだと思います。これからも愛車と共に、充実したクルマ生活を送りたいと願いつつ、3月の冷たい雨が降るイベント会場を後にしました。


著者プロフィール


●山崎潤一郎


音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla



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  • セレブ御用達のお店ならもっとこう接客は丁寧でねっとりとしていないと。
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