諦めた土地から命の芽吹きも 大船渡山林火災、復興と不安と

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2025年05月31日 16:01  毎日新聞

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山林火災から残った、芽吹く桜の木を見つめる佐々木昭次さん。黒焦げだった地面は季節が進むにつれ草に覆われてきた=岩手県大船渡市で2025年5月21日、西夏生撮影

 「まだ焦げ臭えな」


 岩手県大船渡市三陸町綾里で暮らす佐々木昭次さん(75)は山肌を見て声を落とした。


 2月末に発生した大船渡市の大規模山林火災では、市の1割にあたる約3400ヘクタールが焼失。最大で市民約4600人に避難指示が出た。市は約1カ月半後の4月7日に鎮火を宣言した。


 2月26日の昼過ぎ、佐々木さんは自宅にいたところ、知人からの電話で火災を知る。外に出ると山の向こうから煙が上がり、数分後には家の近くにまで火が迫った。家族とともに市街地のビジネスホテルなどで約2週間の避難生活を送った。


 この火災で、自宅は無事だったが、所有する山林計約10ヘクタールが焼けた。山林の一部は、孫の教育費に充てようと来年に伐採を予定していた。根元周辺が焦げた木に値段が付くか気になる。市は今後、所有者の意向を確認し、植林を検討するという。


 一方、火の入りが弱かった場所では下草が力強く生い茂り、緑が目立つ。孫のために植えた桜の木は火災で燃えたと諦めていた。火災後はじめて山に入ると、桜は青い葉を付けていた。佐々木さんはいとおしそうに「良かった、良かった」とつぶやいた。


 同市の綾里漁港で漁具の手入れをしていた古川祐介さん(40)は「二重被災」者の一人。東日本大震災では漁船や自宅が流され、今回の火災では漁業資材を保管していた倉庫が焼失した。ワカメを塩蔵することができなくなり、売値は10分の1以下になった。「こういう時ほど出来が良いんだよな」とこぼす。


 集落内には所々、地面が露出した茶色の山肌に、焼け焦げた黒い切り株が点々と残る。


 自宅が沢筋に近い古川さんは「大雨が降ったときが心配だ」と吐露する。木が伐採された山肌は保水力が低下しているうえ、火災の熱で土の粘り気が失われてしまっているという。


 生活の見通しが立たない不安を抱えながら日々暮らしている。【西夏生】



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  • 山火事の跡地はメガソーラーになるのだろう。そのために山を焼いたのだから。海の向こうの粗悪な民族は手段を選ばないから。
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