
段差のない住みやすさに、戸建ての自由度を加えた「いいとこどり」の暮らし。こうした魅力に注目が集まり、平屋の人気が高まっています。各ハウスメーカーも平屋プランの選択肢を充実させるなど、ニーズの高まりがうかがえます。
【漫画】「これなら長く安心して暮らせる」大満足だった平屋でしたが…(全編を読む)
二階がないぶん地震に強く、天井を高くすることで開放感のある空間づくりも可能です。土地の広ささえ確保できれば「平屋にしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。一方で、どの住まいにも「完璧」と言える形は少なく、実際に住んでみて気づく不安や葛藤もあるようです。
水害のニュースを見て「ウチは逃げ場ないな」
関東在住のAさん(40代・主婦)は、結婚以来、夫の両親と完全分離型の二世帯住宅で暮らしてきました。両親を訪問介護の支援を受けながら自宅で看取ったこと、子どもが遠方の企業に就職したことを機に、自宅の建て替えを決断します。
今後は夫婦ふたりで暮らすことを想定し、バリアフリー仕様の平屋を選びました。車いす対応の動線や、トイレでの介護にも配慮した設計で「これなら長く安心して暮らせる」と考えていたといいます。
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ところがある日、水害に関するニュースを見た夫が「ウチはもし水害にあったら逃げ場がないな」とつぶやきます。ニュースでは水害で自宅の1階がすべて水没してしまい、後片付けに追われる住民が困り果てている様子が伝えられており、急に不安を感じたようなのです。
「この近くに大きな川はないから、水害はないでしょ」と思っていたAさんですが、心配になって自治体のハザードマップを取り寄せて確認すると、なんと自宅が建っているのは最大2mの浸水可能性エリアであることが判明しました。
「二階があれば、最悪でも命は守れるし、貴重品も上にあげられる。でも平屋ではそれもできない。大雨警報が出るたびに緊張してしまいます。長くこの土地に住んでいて、一度もそんなことになったことはないので、これからも大丈夫だと思いたいのですが…」
災害が起きる前にリスクを知ることができたとも言えますが、それが安心につながるとは限らないようです。
庭が広い方がいい夫と家事導線を楽にしたい妻で平行線
東北在住のBさん(30代・主婦)夫婦は、親族から譲り受けた100坪を超える土地に家を建てようと計画していました。
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一家で複数台の駐車場を確保するのが当たり前の地域ということもあり、特別広いという感覚はなかったそうですが、土地の取得費用が抑えられた分、家づくりの自由度は高まりました。
しかし、ここで夫婦の意見が真っ二つに分かれてしまいます。
Bさんは、家事導線のよさや子どもの様子が見やすいことから平屋を希望。一方、夫は庭や駐車スペースを広くとりたいと考え、絶対に二階建てがいいと主張。どちらも譲らず、議論は平行線をたどりました。
設計を担当した工務店も「そこが決まらないと図面も予算も出せません」とお手上げだったといいます。
「キッチンのスタイルや和室の有無なら、全体を進めながら調整できるそうですが、平屋か二階建てかという根本部分で迷っていると、設計自体ができないと聞きました」とBさん。
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結局、延床面積を縮小&ロフトで簡易中2階を作るという折衷案に決定するまで、1年近くかかったそうです。
最終的には延床面積を縮小し、ロフトで簡易な中2階を設ける折衷案に落ち着くまで、1年近くを要しました。
人気が出始めているとはいえ、平屋に実際住んでいる人がまだ少ない現状では、完成後の具体的なイメージが持ちにくいこともデメリットの一つと言えそうです。
「どうして平屋なの?」親世代がうるさい
関東在住のCさん(40代・会社員)は、子どもを持つ予定のないDINKS世帯。二人暮らしにちょうどよい広さの一戸建てとして、平屋を選ぶことにしました。
しかし、家を建てると両家の親に伝えたところ、思いもよらない反応が返ってきます。
「平屋?部屋数は足りるの?戸建てなのにもったいない」 「将来、私たちや友達が泊まりに来たいってなったら部屋がないじゃない」 「売る時のことを考えると、普通の戸建ての方がいいんじゃないか」
驚くような反対意見に戸惑いながらも、最終的には夫婦の希望を通しました。
「もしかすると、親世代としては、将来同居の可能性も視野に入れて部屋数を確保してほしかったのかもしれません。そう考えると、むしろ平屋にして正解だったと思えます」
家づくりは世代をまたいだ価値観の違いが浮き彫りになりやすい場面。親世代とのやりとりが、思わぬ“面倒ごと”になることもあるようです。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)
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