なぜ日本はSwitch 2を“抽選”で販売したのか? 米国の先着順販売との違い、阪大が考察

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2025年07月24日 08:10  ITmedia NEWS

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 大阪大学社会技術共創研究センターに所属する研究者らが、メルカリの研究開発組織「R4D」との共同研究の一環として発表した研究ノート「Nintendo Switch 2 発売戦略の日米比較 : 経済・倫理・社会の観点から」は、Switch 2が日本と米国で異なる予約販売方法を採用したことについて考察した研究報告である。


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 6月に発売したSwitch 2は、日本では抽選制、米国では先着順という対照的な予約販売方法を採用した。なぜこのような違いが生まれたのか。これについて、研究グループはこの現象を説明する5つの仮説を探索的に検討している。


●抽選制による負担


 第1に業務効率性の優先度が挙げられている。先着順は抽選制と比較してシステム構築や運用コストが低い。抽選制では応募受付、抽選処理、当選通知、落選者への対応、問い合わせ処理など、多段階の業務プロセスが必要となる。


 米国では業務効率がより重視された結果、先着制が選ばれた可能性がある。しかし、研究者らは「日本でよりコストのかかる方法があえて選ばれたのかが説明できない」として、販売方法の違いを決定づけた唯一の要因とは考えにくいと分析した。


●レピュテーションへの配慮


 第2はレピュテーション(評判)への配慮。ゲームコンソール機本体はプラットフォームとしての性質があり、ソフトやサービスで収益を上げるビジネスモデルのため、長期的なブランド価値が重要となる。


 日本では社会的評判をより重視し、経済的効率性を犠牲にしてでも抽選制を選んだと考えられる。もっとも、研究者グループは、レピュテーションに倫理的・社会的な違いが影響している可能性があるとして、補完的な仮説をさらに探索している。


●「フェアネス」の概念の違い


 第3は「フェアネス」の概念の違いだ。日本では誰にでも等しくチャンスがあることがフェアと見なされる傾向があり、確率的平等や手続的正義などが重視されている可能性を指摘している。


 一方、米国では努力した者が報われることがフェアという価値観が強く、能力主義的正義観が見られる。この違いが販売方法の選択に影響した可能性がある。なお、研究者らは、日本の人気声優によるSwitch 2の落選報告が話題になった現象を紹介した上で「非恣意性を可視化し、フェアさの象徴となった」などと考察している。


●企業への“市場秩序”の期待


 第4に企業への期待の違いだ。日本では企業が市場秩序を直接管理することが期待されている。実際、任天堂は転売対策として購入条件に過去のプレイ時間50時間以上などの基準を設け、クレジットカードとひも付けられた個人アカウントからの応募に限定するなど、複数アカウントでの応募を防ぐ対策を行った。さらに、フリマアプリ事業者3社とも連携し、不正出品防止に努めた。


 対照的に米国では、機械的な大量購入を防ぐための技術的措置は導入されているが、あくまで限定的な対策にとどまっている。その代わりに、ファンコミュニティーが自発的に市場秩序を形成しようとしている。在庫情報を共有するXアカウントや購入のコツを教え合うDiscordグループが立ち上げられ、RedditではeBayの転売出品を集団で通報する活動も展開された。


●異なるファンカルチャー


 第5にファンカルチャーの違い。米国では発売2カ月前から店舗前に並ぶファンが現れ、小売店側も深夜に販売開始イベントを開催するなど、行列自体が祝祭的な体験型消費として楽しまれている。


 日本でも熱狂的なファンは多いが、公共の場での行列や待機は自制が強く求められている。競争や祝祭ではなく、フェアな抽選への参加として認識されているのだ。


 これらの仮説が示すのは、Switch 2の発売戦略の違いが単なる業務効率の問題だけではなく、それぞれの国に根付いた倫理観、社会的期待、ファンカルチャーなどを反映したものだった可能性である。つまり、高度に戦略的な判断であったといえるかもしれない。


 なお、研究者らは任天堂との関係で利益相反はなく、自身らもSwitch 2の抽選には応募していないことを明記している。研究のきっかけは、IT系ポッドキャスト「Rebuild」を聴いたことだという。


 Source: 工藤郁子, 長門裕介, 岸本充生. Nintendo Switch 2 発売戦略の日米比較 : 経済・倫理・社会の観点から. ELSI NOTE. 2025, 55, p. 1-31 https://doi.org/10.18910/102302


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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  • その御蔭で日頃から嘘つきだったしょこたんが逃げるように産休に入って大盛りあがり🤣嘘つきは友達も無くす行為なの知らんの?それからまだ出産してないのに出産祝いっておかしいし失礼な行為だよ?
    • イイネ!3
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