氷点下の寒空で出会った子猫は、子育てに悩む私の心を育ててくれた 14歳で迎えた“誇り高き最期”、力尽きる直前まで歩いた姿に涙した日

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2025年07月24日 19:40  まいどなニュース

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お鼻周りの模様もかわいいシドくん

家族同然の愛猫を亡くした後、飼い主はどう心を立て直し、前を向けばいいのだろう。きっと、心が納得する答えは人それぞれ違うが、2024年2月に愛猫シドくんを亡くした「なべ」さん(@nabe1103h)が辿り着いた考え方は、似た暗闇から抜け出せない人に響く。

【写真】雪が積もり、あたり一面真っ白になった自宅付近で保護された猫さん 気温は氷点下でした

シドくんは「猫伝染性腹膜炎(FIP)」と闘い、14歳で空へ帰っていった。

氷点下の日に出会った“1匹の野良猫”

2011年1月、雪が積もり、あたり一面真っ白になった自宅付近で、飼い主さんはシドくんと出会った。

あどけない顔のシドくんは当時、生後6カ月ほど。数日間、見守る中で、シドくんには帰る家がないことを知り、飼い主さんは保護を決意した。

「寒い地域なので、野良として生きていくのは無理だと判断しました」

シドくんは警戒してなかなか近づいてこなかったが、玄関のドアを開けたまま待っていると、家の中へ。

意外にも、お迎え後はあまり警戒せず。毛布を敷いた段ボールを用意したり、電気ヒーターをつけてあげたりすると、安心した様子を見せた。

「警戒していたのは、数日間だけ。寒かったからか、すぐ膝に乗ってくれました」

最初はケージで過ごしてもらっていたが、寂しそうな鳴き声が心に刺さり、室内で自由に過ごしてもらうことに。毎日、布団で一緒に眠るのがルーティンになった。

「当初は迷い猫として飼い主を探していましたが、見つからなかったので、正式にお迎えしました」

子育て中には「メンタルケア」をしてくれた

保護から2カ月後、東日本大震災が起きた。幸い自宅付近はそれほど揺れなかったが、震災当日は停電。テレビで情報を得ることもできず、ヒーターで温まることもできず、不安な時間を過ごした。

そんな時、心の支えになってくれたのはシドくん。飼い主さんはシドくんを抱きしめて眠り、温もりに救われた。

23歳で母親となった飼い主さんは、育児中もシドくんに助けられたという。シドくんは飼い主さんが子どもたちを叱ると必ず走ってきて、「なおーん」と鳴き続けた。

まるで、「お母さん、やめて」と言われているみたい…。そう感じ、「分かったよ。もう怒らない」と言うと、シドくんは言葉を理解したかのように、その場から立ち去ったそうだ。

「若く未熟な母だったので、シドには本当に助けられた。威嚇は1度もされなかったし、とても優しい目をした子でした。話しかけると、いつもお返事をしてくれて…。一緒にいる月日を重ねるにつれ、人間の言葉を理解していっているように見えました」

14歳で「猫伝染性腹膜炎(FIP)」に…葛藤の末に“自宅療法”を決断

シドくんの体調に異変が見られたのは、2024年12月20日のこと。食欲が落ち、ほぼ食事を摂らなくなった。

動物病院を受診するも、症状は快方へ向かわず。翌年1月には、腹水が溜まった。

獣医師からは、猫コロナウイルスの突然変異によって起きる「猫伝染性腹膜炎(FIP)」の可能性が高いと言われ、14歳とシニアであることから「おそらく助からない」との診断が…。

飼い主さんはシドくんの年齢や体にかかる負担を考慮し、1回だけ腹水を抜いてもらい、その後は自宅療法を選んだ。大好きなおうちで好きなものを食べて、残りのニャン生を楽しんでもらいたいと思ったからだ。

「毎日、ペットショップをめぐり、マタタビや高齢猫用の介護食、猫用ミルクなど、ありとあらゆるものを買い、好きなものや食べられるものを探しました」

しかし、シドくんの食欲は戻らず、日に日にやせ細っていったそう。飼い主さんは毎日、細くなった体を撫でては泣いた。自分が寝ている間に旅立ってしまわないだろうか。夜はそんな不安に襲われ、できる限り近くにいたという。

「痛みが少しでもとれるように、苦しくないようにと願いながら撫でていました。シドはいつも穏やかな顔をしてくれ、泣いている時は駆け寄ってきてくれて…。『大丈夫だよ、苦しくないよ』と伝えてくれているようでした」

自分の帰宅を待って旅立った愛猫の優しさが染みた「最期」

やがて、シドくんは水も飲めず、声も出せなくなった。別れが近いことを悟った飼い主さんは「仕事へ行かなければ」と「看取りたい」の間で悩み、知人に相談。すると、「何で休むかは、その人次第。堂々と休めばいい」と言ってもらえ、心が楽になった。

ひとりで逝かせたくない。そう思い、家族が起きている時間に眠り、夜中に起きてシドくんを撫でる生活を送った。その際はシドくんの心を気遣い、「大丈夫だよ、怖くないよ。本当のお母さんが迎えにきてくれるよ。もうすぐ楽になるからね。ありがとうね」と伝えた。

ほぼ食事ができなくなってから1カ月半ほど経った2024年2月6日、シドくんは逝去。何も出ない状態だったが、やせ細った体を起こし、最後まで自力でトイレへ行く誇り高さも見せてくれた。

「その日、娘さんは休校で、私は仕事でした。帰宅すると、シドがぐったりしていて…。驚いて抱き上げ、名前を呼ぶと少しだけ動きましたが、2度痙攣した後、動かなくなりました」

まるで、自分の帰りを待っていてくれたような最期に、飼い主さんは胸が熱くなったという。

愛猫の死から100日経って、ようやく前を向けるように

シドくん亡き後は、涙に暮れる日々だった。携帯で撮り溜めた大量の写真をコンビニで印刷し、飾ったり持ち歩いたりしたが、心は晴れず。

このままでは自分がダメになると感じ、図書館でペットロスに関わる本を借り、読み漁りもした。

「苦しいのは私だけじゃないと言い聞かせていましたが、涙を止めることは無理だったので、気がすむまで泣きました」

心境に変化が起きたのは、シドくんが旅立って100日ほど経った頃。「あの子は見えなくなっただけ」と、自分が納得できる“死”の受け入れ方に辿り着いた。

「家にはいないかもしれないけれど、心の中にはいるんだなって。いつか、私が年をとって死んだら、きっと迎えにきてくれる。そしたら、また一緒に暮らせる…と思えるようになりました」

悲しい時も苦しい時も病気の時も怒った時も笑った時も、いつも側にいてくれたシドは家族以上の存在。そんな飼い主さんの猫愛に共感する猫飼いさんは、きっと多い。

自分の一部と言っても過言ではない愛猫の死をどう受け入れ、前を向くか。飼い主さんとシドくんの絆は、そう考えるきっかけを授けてくれる。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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このニュースに関するつぶやき

  • 下手な人間よりも犬や猫の方が余程綺麗な魂を持っているよなと思う。ちゃんと感情があって健気に人間の事を心配してくれたりする。
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