
ネコの研究で博士号を取得した女性が、小学1年生のときに手がけた自由研究がXで大きな話題を集めています。テーマは「ネコの利き手」。飼っていたネコを200回観察を行い、仮説・方法・結果までしっかりとまとめられた内容に、「小一の文章とは思えない」「これは博士になる才能では、と思ったらなってた」と驚きの声が相次ぎ、34万件もの「いいね」が寄せられています。
【写真6枚】ネコの利き手を検証…小1で手がけた自由研究を見る
投稿したのは、編集者で理学博士の服部円さん(@madokahattori)。7月には、ネコ研究の論文を紹介する連載をまとめた著書『ネコは(ほぼ)液体である』(KADOKAWA)を刊行し、現在はWEBメディア『文化と生物学』の編集も手がけています。小学1年生で始まったネコへの探究心が、最終的に専門的な研究へと発展していった歩みに、多くの人が驚きを寄せています。
「ネコの利き手を200回調べてた小1の私、えらい。ネコもえらい。」というコメントとともに投稿された画像には、「りかじゆうけんきゅう『ねこは、みぎきき ひだりきき?』」と題された手書きのレポートが。
研究の目的は「ねこは、にんげんみたいにみぎきき ひだりききがあるのかしらべた」と明記され、右手の小指を怪我して2カ月使えなかった経験から、ネコにも利き手があるのか調べてみたいと思ったきっかけが丁寧に説明されています。
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研究対象は生後4カ月のシャムネコのオス「はっとりセドリック・ハンゾウ」。実験前の予想では「家族はみんな右利きなので、うちのネコも右利きだと思う」と仮説を立て、ネコを抑えてねこじゃらしを左右に動かし、右手を出したら○、左手なら△、両手なら×として200回調査するという、まさに本格的な実験設計です。
結果は右手110回、左手56回、両手34回で、「右ききだとおもいます。よそうしたとおりになってうれしいです。これでうちのかぞくはぜんいん右ききです」と結論づけられました。
この本格的な研究レポートには、SNS上では驚きの声が相次いでいます。「何より感心するのが、目的・研究理由・内容・最初の予想をキチンと書いてる、大人でも出来てない人いるのに」「『家族はみんな右利きなので、はっとりセドリック・ハンゾウも右利き!』という予想が素敵で朝からニッコリしました」といったコメントが寄せられています。
実は…「うちのネコは少数派」
今回投稿された小学1年生時の自由研究について、服部さんは改めて振り返ります。
「あまりにしっかりと構成されていて驚きました。研究者としての萌芽はわかりませんが、動機が自分の手が怪我をして利き手に気づいたという点は発想と着眼点が面白いと思いました」(服部さん)
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小学生時代のことで詳細は覚えていないという服部さんですが、この研究を親から聞かされたそうです。
「大人になりこんな自由研究をしていたよと親から教えてもらいました」(服部さん)
200回という膨大な回数の調査について、服部さんは研究対象となったネコの年齢も関係していたのではないかと分析します。
「4カ月の赤ちゃんネコだったことが功を奏したのではないかと思います。年を取ったネコだったら無理だったと思います」(服部さん)
興味深いのは、この幼い研究者が導き出した結論の科学的価値です。
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「メスは右利き、オスは左利きが多い傾向にあるという論文が2018年にでています。うちのネコは少数派だったようです」(服部さん)
現在の科学的知見と照らし合わせても、当時の結論に一定の意味があったことが分かります。セドリックハンゾウがオスネコでありながら右利きだったという結果は、まさに「少数派」の貴重なデータだったのです。
このような幼少期の経験が、その後の研究者としてのキャリアに影響したのでしょうか。
「博士になった今は影響あったのかなと思うのですが、狙っていたわけではないです。途中で美大にいき、ファッション誌の編集をしていたくらいなので」(服部さん)
服部さんは研究者を目指していたわけではなく、むしろ芸術やファッションの世界も経験するなど、様々な分野を歩んできました。小学1年生のネコ研究が現在の活動につながったのは、本人も驚くような偶然の一致だったようです。
もし今の知識と技術で同じテーマの研究を行うとしたら、どのようなアプローチを取るのでしょうか。
「飼っていた1匹のネコだけを対象にしていたので、200匹くらいのデータを集めたいですね。あとは飼い主さんにも参加いただけるような実験方法をためしてみたいです」(服部さん)
小学1年生の純粋な好奇心から始まったネコへの探究心が、形を変えながらも現在の研究活動へと受け継がれている服部さん。子どもたちの自由な発想がどれほど貴重で、未来へとつながる可能性を秘めているかを教えてくれるストーリーです。