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日本はもちろん世界でも人気を集める日本の牛肉、おいしいですよね。そんな牛や豚などの畜産物、実は海外暮らしのほうが長くても、食品ラベルに「国産」と表示されるケースがあるのは、ご存じでしょうか?
食品表示法に基づいて食品に関する表示の基準を策定した「食品表示基準」によれば、畜産物の国産の定義は、簡単にいえば「育てられた期間が最も長い国が日本であること」とされています(参照:食品表示基準 第18条 第1項)(※1)。
たとえば、オーストラリアで生まれた牛がいるとします。この牛が1年間オーストラリアで育てられた後、日本へやってきて1年半ほど育てられて、お肉としてお店に並ぶ時、原産地は日本となります(下図参照)。
つまり、この牛はオーストラリア生まれですが、お店に並ぶ時は原産地=日本、つまり国産と表示されます。
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では、3カ国以上を経て日本へやってきた場合はどうなるのでしょうか? たとえば、カナダで生まれた豚が半年ほど同地で育てられ、そのあとアメリカで1年、そこから日本へやって来て1年3カ月ほど育てられたとしましょう。
実は、この豚の原産地も日本となります。2カ国の場合と同様、最も育てられた長い地域が原産地となるわけですね。
ところで、3カ国のケースを見てみると、この豚が育てられた期間は、海外が1年半(カナダとアメリカの合計)で日本が1年3カ月のため、海外のほうが長いです。つまり、海外(カナダとアメリカ)で暮らした期間のほうが長いわけですが、原産地は日本、つまり国産です。
こうしたルールになった経緯を消費者庁に問い合わせてみたところ、以下の回答を得ました。
まず、2004年(平成16年)9月3日に開催された農林物資規格調査会総会において、生鮮食品と加工食品の品質表示基準の一部改正について議論されました。この中から一部を引用します。
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生鮮食品の原産地は原則、農畜水産物が生産された場所である。
ただし、畜産物や水産物は地域を移動する可能性があり、複数の産地で飼養または育成された場合には、最もその期間の長いところを原産地として表示をする。
畜産物はそれまで、牛が3カ月、豚が2カ月、それ以外の家畜は1カ月を超えて日本国内で飼養した場合、国産として扱うと例外的に決められていたが(3カ月ルール)、一般的なルールと整合性が取れず分かりにくいため、廃止を希望する。(農林水産省「農林物資規格調査会総会 平成16年9月3日開催総会 議事録」より引用)
詳細は同総会の議事録にゆずりますが、こうした議論を踏まえて、畜産物に適用されていた「3カ月ルール」が撤廃され、最も長く育てられた国を原産地とするルールへ変更されました。
また、この決まりは畜産物が日本産なのか海外産なのかを決めるものではなく、あくまで「原産地がどこの国なのか」を規定するものです。そのため、3カ国以上にわたって育てられた場合でも、海外と日本で育った期間の比較は考慮せず、あくまで国ごとの期間を比べて原産地が決まるとのことでした。
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こうした背景から、ラベルに国産と表示されていても、その牛や豚が実際に生まれた国は、必ずしも日本とは限りません。ちなみに、牛がどんな国・地域をたどって皆さんのところにやってきたのかを詳しく知りたい人は、牛の個体識別情報検索サービスで調べられるので、ぜひ使ってみてください。
(※1)仙台牛や松阪牛のように、国内の地名が銘柄名に入っている品種は、その銘柄名の地名をもって国産の表記に代えられるため、国産と書かれていないケースもあります。また、銘柄名に含まれる地名(今回だと仙台市、松阪市)以外の土地で最も長く育てられた場合は、その地名も記載しなければなりません。
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