リトアニア・ビリニュスの集団墓地で発掘されたナポレオン軍兵士の遺骨と軍服のボタン。ロシア遠征からの退却時、パラチフスや回帰熱に感染したとみられることが分かった(仏エクス・マルセイユ大提供) フランスの皇帝ナポレオンの軍隊が1812年、ロシア遠征に失敗して退却した際に苦しんだ感染症は、パラチフスと回帰熱の可能性があることが分かった。仏パスツール研究所とエクス・マルセイユ大の研究チームが、兵士らの遺骨から病原菌のDNAを採取して解析した成果で、24日付の米科学誌カレント・バイオロジー電子版に発表した。
兵士らは冬の極寒と飢え、疲労に加え、感染症による発熱や下痢、肺炎などに苦しんだことが知られる。リトアニアの首都ビリニュスは当時の退却ルートに当たり、集団墓地で発掘された遺骨の歯からDNAを採取して最新の技術で解析したところ、パラチフス菌や発熱を繰り返す回帰熱のボレリア菌を特定できた。
同じ集団墓地の異なる遺骨からDNAを採取した別の研究チームは2006年に、発疹チフスのリケッチア菌を検出したと発表した。しかし、パスツール研などのチームは劣化して細切れになったDNAサンプルから配列を正確に読み取り、病原菌を判別する技術は格段に向上したと指摘している。