
【写真】種崎敦美&神戸光歩、撮りおろしインタビューカット
■『ダーウィン事変』は「考えざるを得ないような状態になってしまう作品」
――本作は、人間とチンパンジーの間に生まれた“ヒューマンジー”が主人公という異色の作品です。原作または台本を読んで、どのような印象を持ちましたか?
神戸:オーディションを受けるにあたって、受ける役(ルーシー)のキャラクター性を掴むことを目的として読み始めたはずが、面白すぎて止まらなくなってしまって。気づいたら最新刊まで読み終えちゃっていました(笑)。
現実には存在しない“ヒューマンジー”について、それを取り巻く環境がとてもリアルに描かれていることで、「もし私がこの世界にいたらどう思うだろう」「実際にヒューマンジーがいたらどう接するだろう」とついつい考えてしまいます。それくらいのめり込んでしまう魅力的なストーリーだというのが作品の印象でした。
種崎:私も同じです。おもしろいストーリーを興味深く読んでいるうちに、自然といろんなことを考えざるを得ない状態にしてくれる作品だと感じました。そして、このテーマを描くことは、なかなか勇気のいることだったんじゃないかとも思って……。
もちろん原作者のうめざわ先生が描きたいものを描いてるんだとは思うのですが。でも、読んでいて強いメッセージ性は感じるものの、描かれている問題に対して作品として肯定も否定もされていないのがとても絶妙で。このような題材を扱っているけれど、適切な距離は保ちつつ、読み手に考えるきっかけを与える作品となっていることに感銘を受けました。
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神戸:最初は自分ならどう演じるかといった観点で原作を読んでいたので、ルーシーはわたしが自然体で演じることができるキャラクターかも、という印象を受けました。“自分”というものをしっかり持っていますが、チャーリーとの出会いで生まれた自分の中の新たな価値観にも柔軟に対応し、ちゃんと根拠に基づいて行動できる子というイメージです。彼女の言動は共感できる部分が多く、私自身の考え方とも少し近い部分があるのかなと感じました。
種崎:私もチャーリーの考えに「わかる」と思う瞬間が多かったです。チャーリーは、考え方がとってもシンプルなんですよね。賢いのでいろいろと考えた上で発言しているとは思いますが、その言葉に“裏”はないように思うんです。見た目はかわいいのに、かっこいいキャラクターだなという印象でした。
――原作を読んでいて、チャーリーにどんな声が付くのか想像もつきませんでした。種崎さんはどのようにチャーリーを掴み、演じているのでしょうか?
種崎:アニメの収録は毎週1話ずつの収録なことが多いのですが、この作品は月に1話ずつでした。1話録って、次の1ヵ月の収録までにその音源が入った映像をいただけるので、それを見ながら自分で考えて調整していきました。普段のアニメの収録より考える時間もたくさんあるので、収録期間中は本当にたくさん悩みました。なのでチャーリーのお芝居も話数ごとでわりと変化していると思います。
例えば第1話は、淡々とはしつつも、当たり前のように相手の言葉を受けて返すということを物理的にしているのですが、チャーリーって誰にも影響を受けないので、段々と相手が何を投げてきてもブレない、空気も読まないようになっていったかなと思います。その先も、ある出来事をきっかけにあえて明確に変化させていったり。
パッと聞きあまり違いは分からないかもなのですが、私の中では全然違って。普段当たり前のようにやっている、相手のセリフに影響を受けて返すというのをやらないのはなかなか緊張しました。でも、チャーリーの環境も状況もどんどん変わっていくので、その変化もリアルに思ってもらえたらいいなと思います。
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種崎:それが、びっくりするくらい何もなかったんですよ(笑)。
神戸:私もです(笑)。
種崎:何も言われなかったら言われなかったで、不安になるんですよね(笑)。毎回うめざわ先生もアフレコの現場に来てくださっていたので、「本当にこの表現で大丈夫でしょうか……?」と確認にいったりして。「ヒューマンジーはこの世に存在していないからこそ、種崎さんがやったことが正解になるので、どうぞ自信を持ってやってください」と言われました。
――それはありがたいお言葉ですね! そして、ルーシー役も満場一致で神戸さんに決まったそうですね。
神戸:ありがたいことに! この仕事をしていると、自分とかけ離れたキャラクターを演じる機会も多いですが、先ほど言ったようにルーシーはとても共感できるキャラクターです。頭脳明晰…と自分で言うのは違う気がしますが、私も勉強は嫌いじゃなかったですし(笑)。そんな自分の学生時代を思い返すと、ルーシーのように斜に構えて皮肉っぽいことを言っていたような記憶があったりもして、共通する部分も多かったように思います。
私は海外ドラマ作品に吹き替えで出演することも多く、アメリカの学校に通うティーンの役も演じたことがありました。共通点以外にも演技の引き出しもあったので、そんなに難しく考えることなく、直感的に「ルーシーはこうだろうな」と思って演じた方向性が、監督たちのイメージにも合致していたのだと思います。
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――お互いが思う「種崎さんが演じるチャーリー」「神戸さんが演じるルーシー」の印象もお聞きしたいです。
種崎:たぶん私がオーディションする立場だったとしても、ルーシー役に神戸さんを選んでいると思います。セリフを交わして思ったのですが、ルーシー役には神戸さんしかいない。うめざわ先生と津田監督の対談にも「ちょっとしたイントネーションの外し方がルーシーそのまま」とありましたが、本当にその通りだと思いました。
演じられている本人のお人柄とのシンクロ率が高いのも間違いないと思いますし、誰かとポンポンと掛け合っている時や細かいリアクションがとてもナチュラルで素敵だなと思います。私はルーシーの、基本行動的で強気なのに、たまに見せる女の子らしさや弱い部分が好きなのですが、原作を読んでいた時以上にそれを感じられるのも神戸さんのお芝居によるところが大きいのかなと思います。神戸さんがルーシーで良かったです!
神戸:恐縮です……!
――そんな神戸さんから見て、種崎さんが演じるチャーリーの印象はいかがですか?
神戸:私がルーシー役に決まった時は、まだチャーリーを誰が演じるかわからなくて。どんな声になるのか、私もたくさん妄想を膨らませました。オーディションの段階では男性の方が多くチャーリー役を受けていて、てっきり男性になるものだと思っていたら、まさかの種崎さんで「女性なんだ!?」と驚きました。
しかし、第1話のアフレコで第一声を聞いた瞬間に「なるほど」と思いました。種崎さんとは他作品でも共演したことがあり、お芝居はもちろん人としても信頼していますし、種崎さん自身が持つ空気感が私はとても好きなんです。その空気感がチャーリーにマッチしていると感じました。同級生の男子に対してあまり良い印象を持っていないルーシーが、ヒューマンジーという異例の存在だとしても同世代の男性であるチャーリーに興味を惹かれ、親しみを持って話しかける理由がわかります。私の方こそ、チャーリーが種崎さんで良かった!
種崎:うふふ、相思相愛だね(笑)。
――登場人物たちの活躍やストーリー展開はもちろんですが、根本に流れるテーマ性が日本国外でも注目を集める作品だと思います。お二人は、本作を見る方にどんなところに注目してほしいか。また何を感じてほしいと思っていますか?
神戸:おっしゃる通り、テーマ性としていろいろなことに切り込んでいる作品です。問題に対してさまざまな考えがあるというのは現実も同じで、ルーシーがチャーリーと関わることで自分の中になかった価値観を知り、ハッと気づかされる瞬間があるのも、視聴者の皆さんに同じ体験をしてもらえると思っています。
問題の大小に限らず、自分にはない考え方を柔軟に受け入れる力というのは、日常のコミュニケーションでも大事なことですよね。偏見や思い込みに左右されず、尊重し合うことの大切さを知るきっかけとなる作品になるのではないでしょうか。と言いつつもフィクション作品ですので、単純にストーリーを楽しんで、ドキドキワクワクしながら見てほしいです。
種崎:作品の印象でも言いましたが、ただ見ているだけでも、何かを考えざるを得ない状態にしてくれる作品だと思います。なので、何を感じてほしいとかは明確に伝えずに、見てくださる方にそれぞれの楽しみ方で楽しんでいただいて、そこから見た人同士で作品についての話が広がっていったらいいなと思います。
津田監督とうめざわ先生も仰っていたのですが、“基本はシンプルなボーイミーツガール”なので(笑)。ヒューマンジーと人間のボーイミーツガールだなんてこの作品でしか味わえませんし、関係性は変わらないのに心の距離は変化していくという、チャーリーとルーシーの唯一無二の関係性に、ぜひご注目ください!
(取材・文:米田果織 写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『ダーウィン事変』は、1月6日よりテレビ東京系列にて毎週火曜24時放送。
