
源田壮亮インタビュー(前編)
33歳で迎えるプロ入り10年目の2026年シーズン。日本を代表する遊撃手・源田壮亮(西武)にとって、今季は例年以上に重要な1年となる。
【プロ入り10年目の転換期】
ひとつ目の理由は、侍ジャパンで連覇を狙う第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だ。
「僕の野球人生で、一番大きな舞台です。プレミア12もオリンピックも出場させてもらいましたが、メディアでの取り上げられ方はまったく違います。世間の人も『プレミア12やオリンピックは、他国が本気ではないのではないか』とか、『(オリンピックの)日本代表はプロでなくてもいいのではないか』という声もあると思います。でもWBCは、各国が本気で臨む大会だという認識が年々広がってきました。そうしたことも含めて、やはり一番の舞台なのではないかと思います」
前回のWBCでは、第2戦で右手の指を骨折しながらも、源田は持ち前の堅実な守備で世界一に貢献した。
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それから3年後の今大会では、源田の選出を疑問視する声も聞かれた。ショートの守備は相変わらず国内最高峰と評される一方で、打撃面では昨季は104試合に出場しながら、打率.209、出塁率.269、OPS.544と、いずれも自己ワーストの成績に終わったからだ。
入団10年目を迎えた今季、巻き返すことはできるのか。33歳という年齢は、現役生活の分岐点に差しかかる時期でもある。それが今季、源田にとって極めて重要な1年になるもうひとつの理由である。
WBCの価値は世界的に広く認知されてきたが、その直後には長いペナントレースが待っている。西武では、球界トップレベルの守備力を誇る滝澤夏央が台頭。さらに二塁手の石井一成をフリーエージェント(FA)で獲得した。今季、西武の内野争いが激化するのは間違いない。
あらゆる選手にとって、活動の基盤は所属球団にある。代表入りを打診されながらも、コンディションやチーム事情を優先し、水面下で辞退した選手も少なくない。
アメリカ代表では、2年連続でサイ・ヤング賞に輝いたタリク・スクーバル(タイガース)が、1次ラウンド第2戦のイギリス戦(3月7日)に先発登板したあと、MLBのシーズンに向けた調整を優先するためチームを離脱すると発表し、大きな波紋を呼んだ。
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価値観は人それぞれだ。では源田にとって、WBCは絶対に出たい舞台なのだろうか。
「はい。選ばれれば、断る理由はありません」
侍ジャパンが2月14日から行なった宮崎合宿の後半、本人を直撃すると間髪入れずにそう返ってきた。
「今はWBCがすべて。それが終わったら100%、シーズン。シンプルにそれだけです。先のことは今、考えてないですよ。とにかく今は100%、侍ジャパンです」
日本代表のユニフォームに身を包み、WBCに100%集中している源田は、本番を前に好調を維持している。2月27日、中日との強化試合に「7番・遊撃」で先発出場すると、2安打をマーク。井端弘和監督もその働きを称えた。
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「何度も代表に招集して見てきましたが、今は本当に内容がすばらしい。ミスショットが少なく、しっかりとボールを捉えられているのがいい。この状態を続けてほしいですし、(下位打線の)あのあたりが機能すれば、得点力もさらに上がっていくのかなと思います」
【人生初の本格的な肉体改造】
源田には、昨年秋から継続している取り組みがある。パワーアップを図り、体重を4キロ増やして春季キャンプを迎えたのだ。
辛いものを除けば健啖家だという源田だが、もともと体重が増えにくい体質だという。なかには体を重くしすぎると動きが鈍ると考える選手もいるが、今回の増量に不安はなかったのだろうか。
「あまりなかったですね。タイミングがちょうど、去年まったく振るわなかったので......。秋から球団としても『フィジカル強化をやります』と打ち出して、ちょうどいいタイミングだと思いました。去年がうまくいっていたら、ちょっと躊躇したかもしれないですけど、タイミングとしては本当にベストでしたね」
プロ10年目を前に、人生初の本格的なウエイトトレーニングを始めた。
「楽しかったです。これまであまりやってこなかった分、頑張って体が変わってくるのがうれしくて。やめたら元に戻ってしまうと思うと、自然と続けられています」
ウエイトトレーニングに本格的に取り組むのは初めてだが、努力を前向きに積み重ねる術は熟知している。いわゆる"ビッグスリー"と呼ばれるベンチプレス、スクワット、デッドリフトを軸に、瞬発系のメニューも織り交ぜる。筋量を増やし、より大きな筋出力を発揮できるようにするためだ。
ウエイトトレーニングに加え、栄養を摂取し、休養を十分に取る。体を大きくするために大事なのは、その3つのサイクルをうまく回すことだ。
「EAA(必須アミノ酸)をきちんと摂って、プロテインも飲んでいます。秋季キャンプや春季キャンプでは、摂取した食事内容やカロリーを球団が管理できる体制になっていますし、選手それぞれに必要な摂取カロリーも計算されています。食事についても、しっかり意識して取り組めています。まだシーズン前なので最終的な判断はできませんが、今のところは順調だと思っています」
タンパク質をたくさん摂るという意味では、春季キャンプ地は鶏肉が名産の宮崎だ。また、米だけで1日1キロ超を口にする。食事を美味しく食べて、筋量も増えて、ハッピーに肉体改造できていると語る。
一般的に、野球選手のピークは20代後半といわれる。しかし近年はトレーニングや栄養管理など科学的な取り組みが進み、30歳を過ぎても第一線で活躍を続ける選手は少なくない。源田もまた、人生で初めて本格的なウエイトトレーニングに取り組み、新たな上積みを目指している。その効果は、打撃や守備をはじめ、さまざまな面に波及するはずだ。
「秋の練習が始まる少し前から、球団とは『こういう取り組みをしようと思う』と話をしていました。球団からは、『源田が積極的に取り組めば、若い選手たちにもいい影響があるんじゃないか』と言われたんです。僕自身もタイミングとしてちょうどいいと感じていましたし、『しっかりやります』という気持ちで始めました」
名手・源田が打てば、チームは活性化する。そのひと振りは、西武を、そして侍ジャパンを大きく勢いづけるはずだ。
つづく>>
