
例年5月は「REON POCKET」の新作が出る季節である。ガジェット通の方なら「REON POCKET」の何たるかはご説明する必要もないと思うが、ペルチェ素子を使ったウェアラブル冷却装置として、都会で活動するサラリーマンの注目アイテムとなっている。
初代REON POCKETがクラウドファンディングに登場したのが、2019年。翌年から一般販売を開始し、それから毎年新モデルを投入している。23年10月には別会社の「ソニーサーモテクノロジー株式会社」が設立され、24年4月に事業を開始。REON POCKETシリーズの販売以外にも、B2Bビジネスとして「REON BIZ」を展開している。
さて今年の新作は、例年より少し早めの4月21日に発売が開始された「REON POCKET PRO Plus」だ。
昨年登場した「REON POCKET PRO」は、ペルチェ素子を2倍に増やして冷却面積を拡大させた。屋外作業者や、東南アジアや中東地域などマジ暑い地域をターゲットにした、まさに“ガン冷えモデル”である。昨今は東京も異常な暑さが続いており、「REON POCKET PRO」も大きく注目された。
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ただ強力であるがゆえに弱点もあった。本体が従来シリーズよりも重くなったことで、ネックバンドの保持力が負けてしまい、下にずり下がってくるという問題が発生した。これはそこまで暑くない環境でお使いの方は気が付かないと思う。なぜならば、ペルチェ素子が仕込まれている金属部分は肌に張り付くので、それも重量保持に役立っているからだ。
だが汗をかくような労働環境にあると、肌に触れている金属部分が汗で滑ってしまい、重量が全てネックバンド部にかかってくる。アーム部は自由に曲がるようになっているので、重量に負けて開いてしまい、本体位置が下に下がってくるわけだ。
こうした問題に対処しつつ、冷却性能も最大約20%向上、冷却面温度も最大2°C低下に成功したのが、今年の「REON POCKET PRO Plus」というわけである。
●改良されたネックバンドの威力
今回ポイントとなるネックバンドの構造を見てみよう。従来のアームは製品の性格上、がっしりした男性の体格に合わせてあった。だがこの強力PROモデルも意外に日本で売れ、さらには女性ユーザーもいることから、オールマイティに使えるようになった。
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今回は前作に比べると、根元からやや前向きに角度が付けられている。従来は首に引っ掛けるという支持方法だったが、背中から肩のほうに向かって角度が付いたことで、首だけに頼らず肩にも重量を分散、さらに首の細い人、身体の厚みの薄い人にもよりフィット感が高まった。
これは例えば、子供をおんぶした時のことを考えてほしい。子供の腕が首だけに巻きついていると、子供の身体が背中から離れて、首が苦しいだけでちっとも楽にならない。だが子供の腕が肩にかかってくると、重さが肩に分散されるだけでなく、子供の身体が背中と密着するので楽に背負うことができる。PRO Plusの新型アームは、こうした密着感を増しつつ、しっかり重量を保持できるようになった。
アーム自体の構造も変更された。以前のアームは、曲げても多少反発して元に戻ったりしていた。よって、戻りのマージンを見越して一旦強めに曲げて調整するみたいなテクニックが必要だった。だが今回はより簡単に曲がりつつ、曲がった状態を強く維持するようになっている。
昨年PROを購入し、なんだよ1年で買い直しかよと思っている方は、安心していただきたい。実はネックバンド部は、昨年のPROモデルと互換性がある。よって3300円で新型ネックバンド部だけ購入して付け替えれば、あなたもPRO Plusユーザーの仲間入りである。
冷却性能がアップしているなら同じではないのでは、と思われるだろう。これも安心していただきたい。今回のPRO Plusは、冷却時の快適性を追求するため、冷却面温度20°Cをターゲットとする新たなアルゴリズムを採用している。つまりPRO Plusの性能アップは、ソフトウェアによって実現している。本体部分は、PROとPRO Plusとでまったく同じもので、冷却能力には元々余裕がある設計だったわけだ。よって昨年のPROを新コントロールアプリ(Ver2.2.0以降)で使えば、PRO Plusになるというわけである。
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もう一つ、地味ながら一部の方には重要な改良点がある。REON POCKETには上部に放熱機構があり、それを平たいダクトを通じて排出している。つまり温風が出ているわけである。
このダクトには短いものと長いものの2タイプが付属しているが、長い方を付けると、自転車に乗るなどの前傾姿勢になった時に、後頭部にダクトが刺さるという問題があった。ロードバイクなど前傾姿勢が強めの自転車では、前方に向かって顔を上げる。つまり頭部だけが強く後ろに倒れた姿勢になるために、ダクトと干渉するわけだ。
当たって痛いということもあるが、温風が後頭部に吹き付けて頭の後ろだけが熱いという珍現象に悩まされることになっていた。
だが今回のダクトは、一段後ろ側に倒せるように改良された。前傾姿勢をとっても、ダクト側を逃がすことができるわけだ。また長さも少し伸ばせるので、後頭部が暑い問題も解決できる。
このダクトも、Plusアームを買えば付属してくる。PROユーザーも完全にPlusユーザーと同じになる。
●最大の変更は「TAG」
REON POCKETは本体内にも温度センサーがあり、動作温度を管理しているが、服の中にあることから外気温が正確に測れない。これを解消するため、「REON POCKET 4」からは外付けのセンサー「REON POCKET TAG」の登場となった。これで外気温を測定し、REON POCKETの動作温度を最適化するわけだ。本体と同梱のセット、もしくは単体でも購入できる。
従来のタグは背面にクリップが付けられており、服に留められるというメリットがあった。しかしその一方で、毎回服につけ直すのが面倒だったり、服に付けていたのを忘れて洗濯してしまったりという問題もあった。
このため筆者はリングを使って、いつも持ち歩く鞄の金具部分からぶら下げていたのだが、どうせそういうことをするのならそもそもクリップはいらないのである。
こうした問題を解決したのが、今回新発売となった「REON POCKET TAG 2」である。
REON POCKET TAG 2は背面にクリップがなく、平たくなっている。また上部に穴が開けられており、ここにカラビナを通して鞄などに付けられる。
もっとも今回の大胆な変更は、筆者の要望を聞いてくれたということではない。実はソニーサーモテクノロジーのもう一つのビジネスの柱である「REON BIZ」向けの改良である。
REON BIZは、工場や倉庫などの広い空間のあちこちにREON POCKET TAGを貼り付け、室内空間全体の温度や湿度などをマッピングすることで、空調システムの最適化を促し、労働環境の改善に繋げていくためのサービスである。もちろん働く人にも身につけてもらい、労働環境として適切かどうかもチェックすることができる。環境改善だけでは追いつけない場合は、REON POCKETを使って個人で調整してもらうわけだ。
この、「壁に貼る」という場合に、裏面にクリップがあると貼り付けにくい。クリップの細い部分に両面テープを貼るのもどうなの、というわけだ。だが「TAG 2」では背面が平らなので、壁面にベタッと貼れる。
さらには電池交換の構造も改善した。従来は背面にコインネジがあり、それを回して交換するスタイルだったが、壁に貼ってしまうとそのまま交換ができない。一旦両面テープを剥がして交換した後、また貼り付けるという手間がかかる。
今回の「TAG 2」は、電池交換が底部から行えるようになった。横のロックボタンを押し込んで、裏面の窪みに爪を入れて引き出せるようになっている。
とはいえ、その爪を引っ掛ける窪みも背面にあるので、壁にべったり貼ったら引き出せないのは変わらないのではないかという気もする。リリース用の爪は前面か側面にあるべきだった。これは年内にも電池カバーだけの別品「REON POCKET TAG 2 Plus Cover」が出る流れか。
●快適な使用感と安全設計
4月13日から中国・深?への出張があったので、まだ発売前のPRO Plusを1台ご提供いただき、試用してみた。
実は深?に行くのは初めてで、普通に日本にいる時の格好で訪中したのだが、深?は4月中旬はもう初夏の陽気であった。当然長そでのシャツしか持っておらず、かと言ってビル内は空調が効いていて涼しいので、体温調節が難しい。
そんなときにPRO Plusを装着しておけば、汗ばむような陽気の中でもまったく問題なく過ごすことができた。TAG 2をバッグに付けておけば、ビル内に入れば自動的に停止するか、WARMモードに切り替わって適切な温度を維持する。寒暖差が激しい季節だけでなく、外と中の出入りが多く、その温度差が激しい時にはさらに効果を発揮する。
REON POCKETは内蔵バッテリーで動作するが、長時間装着しっぱなしの時には、USBケーブルを使ってモバイルバッテリーに接続することで、さらに長時間の利用が可能になる。ただ皮膚に直接装着するものを、充電しっぱなしで使うのはどうなんだと心配する人もいるだろう。
実はこれ最近知ったのだが、以前からREON POCKETに付属の充電用USBケーブルは、本体と繋ぐL字型のコネクタ内に温度センサーが仕込まれている。これで異常な発熱があった場合は、充電を遮断する仕組みが内蔵されているのだ。こうした細かい安全設計を積み重ねているあたり、さすがこうしたパーソナルな温度調整ガジェットの元祖だけのことはある。
東京もここ数年、ヒートアイランド現象の影響もあるのか、筆者の住む南国宮崎県よりも暑いという日も珍しくない。ビル内はガンガンに冷えているが外は灼熱という状況は、東南アジアや中東と同じような環境になりつつあるのかなという気がする。
従来型のスリムなREON POCKETシリーズは、ビジネスシーンで装着しても目立たないと人気が高いが、それでは追いつかないと感じている方は今年のPRO Plusも検討していいのではないだろうか。
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