限定公開( 1 )

フランス発のSNS「BeReal」(ビーリアル)を通じた情報漏えいが相次いでいる。
この春には、西日本シティ銀行の行員がBeRealに投稿した支店内の映像から顧客情報が流出した他、仙台市立小学校の20代女性教員が業務システムの画面を投稿して問題になった。それぞれの投稿は、閲覧した人などを経由してXに転載され、非公開情報が数百万人規模で閲覧されてしまった。
BeRealがなぜ漏えいにつながるのか。
アプリそのものは楽しいコミュニケーションツールでしかない。だが、「投稿を焦らせるUI」と「友人しか見ていない」という油断が、不適切な使い方につながっていそうだ。
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●友人限定の写真SNS、「2分以内に今を投稿!」通知が焦り生む
BeRealは2020年にフランスで公開され、24年6月にゲーム企業Voodooが5億ユーロ(約840億円)で買収した。全世界のアクティブユーザーは2025年時点で4000万人を超えているとされ、日本では2023年ごろから、10〜20代を中心にブームになった。
1日1回、ランダムな時間に届く通知から2分以内に撮影・共有するのが原則。通知には2分間をカウントダウンするタイマーが表示され、「早く投稿しなくては」と焦らせてくる。
2分以内に投稿すると「ボーナス」として当日の投稿可能数が増える。2分を過ぎても投稿はできるが、「○時間遅れ」と表示される。撮り直した回数も表示されるため、“2分以内の一発撮り”で決めたい、という心理が働く。
投稿は1日で消え、公開範囲は原則、友人(または友人の友人)に限られる(投稿ごとに設定すれば、全ユーザーへの公開も可能)。自分が投稿しなければ友人の投稿も閲覧できないため、「早く投稿して友人の写真を見たい」という焦りも出る。
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写真は自撮りカメラと背面カメラを使って2枚同時に撮影され、加工したり、アルバムから過去写真を投稿したりできない。「映え」を競うInstagramなどとは対照的に、飾らない日常をリアルタイムに共有するコンセプトだ。
●「BeRealがなければ撮らなかった」自然な写真が残る
筆者は一時期、毎日投稿するほどハマっていた。意外なタイミングで慌てて撮ることで、意識していない自然な日常を記録できることや、それを撮っている“自分”が映るのが面白かったのだ。
通常の自撮りと違い、写りを確認しながら撮れないぶん、構えない"いつもの顔”が残せるし、楽しいシーンだと自然な笑顔が残せる(写真の場合。動画は自撮りも確認しながら撮影できる)。自分が撮影・投稿すれば、同じように自然な姿の友人も見られるのも面白い。写真の背景から、友人が今どのあたりにいるのか分かるのもうれしく、リアルタイムに繋がっている感覚になる。
自分の投稿履歴はカレンダーで振り返ることができる。外向けのSNSの投稿内容と違い、特別なイベントや美味しそうな料理ではなく、「たまたま撮ったリアルな日常」……スーパーのエスカレーターを上っているところや、駅構内で歩いているところ、電子レンジを開けたところ……などを振り返るのも楽しい。
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●「すぐ撮らなきゃ」の焦りと、「消えるから大丈夫」の勘違い
日常で使う分には問題ないようにも思えるBeRealだが、不適切投稿につながりやすい面はある。急に来た通知に反応して「2分以内に撮らなくては」と焦らせる構造と、「友人しか見ていない」「1日で消える」という安心感があいまって、リスクのあるシーンでも「とりあえず投稿しちゃえ」という油断につながりやすいのだ。
実際、BeRealで流出を起こした仙台市立小学校の教員は「通知が来たので、深く考えずに目の前の画面を撮影してしまった」と話していると報じられており、“2分以内”の切迫感が焦りにつながっている。
通知に誘発された場をわきまえないBeReal撮影が問題になったのは、今回が初めてではない。
2023年秋ごろには、「BeRealのせいで、大学の授業中やバイト中に突然シャッター音が聞こえて不快」という声がSNSなどで見られ、24年ごろには問題として報道され始めている。10代後半からBeRealを始めた世代が大学生になり、社会人になることで、問題が少しずつ上の世代に上がってきているのだろう。
焦りから解放されたければ、通知をオフに設定すればいい。投稿数は限られてしまうものの、自由なタイミングで落ち着いて撮影でき、写真日記のような感覚で更新できる。ちなみに筆者は、通知オンにしつつも、その時間に撮れない場合は気にせず、後から撮っていた。“LINEの通知があっても即レスしない”感覚に近い。
●「友達しか見ない」の勘違い
「友人しか見ていない」「1日で消える」BeRealの仕様は、Instagramのストーリーズも同じだ。ストーリーズからも、企業の情報漏えいが相次いでいる。
26年春には、日本テレビ系列の情報番組「ZIP!」のシフト表とみられる書類を、制作会社の新入社員がストーリーズに投稿。Xに転載されて拡散され問題になった。
そもそも、非公開の社内の写真や機密情報は、友人であっても、短時間でも漏らすべきではない。公開相手の友人がスクリーンショットや画面録画で保存すれば、さらに拡散・流出する恐れもある。
実際、仙台市立小学校や西日本シティ銀行の職員によるBeReal投稿は、閲覧権限のあった「友人」もしくは「友人の友人」がコピーして保存した(または全ユーザーに公開されていた)とみられ、最終的にXに転載されて広く拡散した。
●“デジタルネイティブ”でも起きる情報漏えい
情報漏えいを起こした20代前半とみられる世代は、学校で情報関連の授業を受けるなど、リテラシーは総じて高い。大多数は「撮るべきでないタイミング」や「何を上げてはいけないか」を理解しているはずだ。例えば「電車内でBeRealの通知が来たら、カメラを手でふさぐ」「インカメラはいつもふさいで撮っている」という若者もいる。
ただ、一部に「SNSに上げてはいけない情報」を分別せず、目の前の情報――業務用システムの画面、社内のシフト表、ホワイトボードの顧客名など――を、“たまたま目の前にある日常”だと思って気軽に投稿してしまう人もいる。レアケースでも目立つため、広く拡散され、情報漏えいにつながってしまうのだろう。
2分のタイマーに急かされても、友達限定や1日で消える投稿でも、一度投稿した写真や動画は取り返せない。撮影前や投稿前に「今は写していい場なのか」と立ち止まることは大切だ。
そもそも、銀行など機密性の高い情報を扱う職場は、私用スマホの持ち込み自体が禁止されているケースが多い。それでもBeRealが撮影され、拡散されてしまった。
漏えいリスクを低減させるには、企業側もさらなる対策が必要になりそうだ。「機密保持誓約書に署名させて終わり」ではなく、何が機密かを具体例で示す研修や、勤務中の私物端末持ち込み・撮影ルールの明文化、就業前に端末を預ける制度などまで踏み込んで検討する必要があるかもしれない。
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