限定公開( 2 )

女性向けが中心だった日焼け止め市場で、男性向けの新製品が相次いで登場している。
資生堂ジャパン(以下、資生堂)とマツキヨココカラ&カンパニー(以下、マツキヨココカラ)では、サンケアブランド「アネッサ」から、ブランド初となる男性向けUVアイテム「アネッサ マルチ コントロールUV ジェル」(40g、1628円)を3月に数量限定で発売した。
ファンケルでも、男性用日焼け止め「ファンケル メン スキンケアUV」(50g、2200円)を、4月に数量限定で発売した。
さらに、サントリーウエルネスでも、大人の男性向けスキンケアブランド「VARON(ヴァロン)」から、日焼け止め「VARON UV エアー プロテクター」(50g、3300円)を5月に発売した。
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いずれも販売は好調で、「アネッサ マルチ コントロールUV ジェル」は発売初月の売上高が計画比190%を達成、「ファンケル メン スキンケアUV」は想定より早く、6月末には予定数量を完売する見込みだ。
インテージによると、2024年の男性化粧品全体の市場規模は、前年比114.8%の497億円に増加。2019年比では1.8倍となり、分類別では日焼け止め2.0倍、基礎化粧品1.8倍、メイクアップ化粧品1.3倍だった。
男性の日焼け止め市場が拡大しているとはいえ、女性と比べると習慣化の傾向は薄い。資生堂ジャパン ブランドマーケティング本部 セルフサンケア・スキンケアマーケティング部 アネッサグループの志田涼輔氏によると、調査によって前後するが、日焼け止めを日常的に使用する男性は、約20%にとどまるという。
あまり積極的に日焼け止めを使用しない男性に向けて、各社はどのようなアプローチで購入につなげているのか。資生堂とサントリーウエルネスの2社に取材した。
●男性と女性の肌は全然違う
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資生堂が1992年から販売するサンケアブランド「アネッサ」では、「男性の日焼け止め使用習慣」の創出を狙いに、初の男性向け製品の開発に着手した。アネッサは、花王の「ビオレUV」に次いで国内シェア2位(インテージ調べ)、アジアでは売り上げ1位(ユーロモニター調べ、アジア太平洋地域におけるビューティ&パーソナルケアの2024年総小売販売額より)を獲得した実績もあるブランドだ。
「近年は、スキンケアをする男性が増加していますが、日焼け止めの使用率は依然低いままです。このギャップの解消を目指そうと考え、美容意識はあるものの、日焼け止めはまだ使用していない『スキンケアの中間層』をターゲットにしました」(資生堂 志田氏)
製品開発でまず参考にしたのが、100年以上にわたる「紫外線研究の知見」だ。同社の研究によると、男女の肌には明確な違いがあるという。
「30代の男女を対象にした研究では、男性は女性より『皮脂量』が多く、『バリア機能』『抗酸化力』『炎症因子』『シワ』『紫外線感受性(日焼けのしやすさ)』の全てにおいて、女性より評価が低くなりました。さまざまな要因が考えられますが、男性ホルモンやひげ剃りの影響に加え、スキンケアやサンケアの意識の低さも関連しているかもしれません」(資生堂 みらい開発研究所 小泉高陽氏)
さらに「男性が日焼け止めを塗らない理由」にも着目した。最も多いのは「塗るのが面倒」で、次いで「ベタつきそう」が続く。そこで、男性の肌の特徴を踏まえつつ、男性が日焼け止めに抱く抵抗感を減らすことに注力した。
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タッグを組んだのは、過去に共同開発の実績があるマツキヨココカラだ。両社は2025年に、ブラシ一体型のUVカット効果のあるパウダー「アネッサ パーフェクトUV ブラッシュオンパウダー」(本体3498円、レフィル2442円)を開発した。
メークの上から使えて、外出先での日焼け止めの塗り直しに便利だとして、発売2カ月で年間目標の32万個(本体・レフィル)を出荷し、注目を集めた。そして、今回は男性向けの日焼け止めの開発に取り組んだ。
●「テカリ防止」が関心のフックに
「開発の軸としたのは、『ベタつかない使い心地』と『テカリ抑制』の両立です。強力な紫外線防御力と耐水性を持ちながら、テクスチャーはサラっとしたウォーターベース処方で、スキンケア感覚で使えます。また、皮脂を吸着するだけでなく固化することで皮脂膜の光の反射を抑えて、長時間テカリづらい仕様としました」(資生堂 志田氏)
技術的には、容易ではなかったという。皮脂を吸着・固化させる酸化亜鉛は、ウォーターベース処方と相性が悪いのだが、酸化亜鉛に特殊なコーティングをすることで配合を実現した。これは資生堂で初の取り組みであり、他社製品でもあまり採用されていないアプローチだという。
さらに、男性の悩みとして多い「かさつき」や「毛穴目立ち」にアプローチする成分も配合。化粧水や乳液の機能も加えて、「洗顔後はこれ1本でOK」というオールインワンの日焼け止めとした。
発売初年度は、テストマーケティングの一環として、マツキヨココカラ系列の店舗に限定して3月に販売。マーケティング施策では、国内トップスケーターの堀米雄斗さんをブランドアンバサダーに起用してWebCMを公開したほか、インフルエンサーとのタイアップも実施。店頭でも目立ちやすい売り場を展開している。
「女性と比較すると、男性はWeb上で美容の情報を能動的に入手する傾向が薄く、店頭で製品を知るケースが多いようです。あとは、パートナーや家族からの推奨も、男性が購買するきっかけとなります」(資生堂 志田氏)
発売後の反響は大きく、初月の売上高は計画比190%となった。その後も、GW明けの気温上昇に伴い、売り上げが伸びているという。
「特に関心を集めているのが、『テカリ防止』機能です。単に『紫外線防止』では刺さらなかった方でも、『日焼けとセットでテカリもケアできるなら』と購入にいたるケースが多いですね。購入者の年代は20〜40代まで幅広く、スキンケアはしているけれど日焼け止めは過去1年間で購入していなかった方々です」(資生堂 志田氏)
●ヴァロンは「ベタつき解消」に注力
2022年3月に誕生したヴァロンは、1本で化粧水、美容液、クリームの役割を持つオールインワンセラム(ラージボトル120ミリリットル、8250円)を主力製品とする。初年度から好調に推移し、2025年度の売上高は前年比131%の63億円に達した。メンズスキンケア「保湿ケア」カテゴリーでは、3年連続売り上げ1位(※)を獲得している。
(※)富士経済「化粧品マーケティング便覧2026No.2」2023年、2024年、2025年実績 メンズ整肌料市場の「保湿ケア」カテゴリーで売り上げ1位。
そんな同ブランドでも、男性が日焼け止めに抱く不満を解消する製品を目指したという。
「ヴァロンの利用者は、日焼け止めの使用率が約3割にのぼりますが、流通している製品だとベタつきやニオイが気になるといった声が聞かれていました。『大人の男性向けの日焼け止めがあればいいのに』という要望があり、開発を決めました」(サントリーウエルネス スキンケア部 西山雅大氏)
同社は、不満として最も多かった「ベタつき」の解消に注力。一般的な日焼け止めで使われる「界面活性剤」を使わず、日焼け止め成分を「サラサラパウダー(※)」で包む粉体乳化技術により、ベタつきにくい軽い塗り心地を実現した。
(※)シリル化シリカ(感触改良剤)
また、ゴルフなど野外でアクティブに活動する利用者が多いことから、汗をかいても落ちにくいようにした。汗のミネラル成分と反応して日焼け止め成分を包む粉体同士が凝縮することで、肌を覆う膜の強度が向上し、紫外線防御力が落ちにくくなるという原理だ。
さらに、ヴァロンの他製品にも配合している独自成分のウーロン茶エキスなど保湿成分も配合。シリーズのオールインワンセラムと併用しやすいよう化粧水や乳液などの機能は付けず、日焼け止めに特化した。また、メークアップ効果を排除することで「白浮き」も抑えた。価格は50gで3300円とやや高めの設定だ。
「ヴァロンは、現状ECと一部の百貨店や化粧品専門店のみで取り扱っています。百貨店で販売されている他ブランドの日焼け止めと同等程度の価格であり、機能性を踏まえて、ヴァロンの利用者層には受容いただけると考えました」(サントリーウエルネス 西山氏)
●サラサラの使用感が好評
VARON UV エアー プロテクターを5月に発売したところ、計画通りに推移しているという。
「既存のヴァロンのお客さまにダイレクトメールでご案内したところ、計画どおりに購入いただいています。百貨店では、来店者へのお試しやサンプル配布など販促を強化している『そごう横浜』などは想定以上に好調です」(サントリーウエルネス 西山氏)
百貨店での本格展開は2025年から開始しており、本製品は全国8店舗で扱っている。プロの販売員によるタッチアップやテスター使用を通じて、「ベタつかない」など言葉だけでは伝わりにくい使用感を体験できる場としているそうだ。
「使用感への反響は良く、実際、塗ったことを忘れるくらいサラサラしています。ゴルフをする利用者からは、『塗った後に顔などを触ってもゴルフクラブが滑らないので、プレーに支障が出ない』と喜ばれています。今後は、体験の強化としてホテルやゴルフ場、スポーツ施設などでのサンプリングを見込んでいます」(サントリーウエルネス 西山氏)
ヴァロンでは、2026年度の販売計画として前年比111%の約70億円を見込んでおり、「VARON UV エアー プロテクター」は約5000万円を目標としているという。
●男性の「日焼け止め」使用は定着するか
今後、「アネッサ マルチ コントロールUV ジェル」は、盛夏期に向けて「テカリ防止」を前面に打ち出しつつ、店舗でもより多面的に展開する予定だ。現状の課題としては、「認知向上」が挙げられるという。
「女性向け製品と比較すると、まだまだ認知向上の余地があります。男性に日焼け止めを使う習慣を広げるには、『紫外線防止』だけでなく、『テカリ防止』など、より目に見える価値訴求が求められます。そこを入り口にして紫外線防止の価値も伝えていくと、より習慣化につながりやすいと考えています」(資生堂 志田氏)
男性がスキンケアを行う理由について尋ねると、「清潔感が重要な要素になっているのではないか」と志田氏は考えを述べた。
「当社の意識調査によると、特に20〜30代の若年層において、『清潔感がないと思われたくない』と考える人が増加しています。清潔感を高める手段として、『スキンケア』や『サンケア』が位置付けられるようになったのかなと。日焼け止めの使用率はまだ低いですが、意識変化が起こりつつあるのかもしれません」(資生堂 志田氏)
サントリーウエルネスの西山氏も、「目に見える変化」の重要性に触れた。
「ヴァロンのお客さまはスキンケア初心者の方が多く、きちんと朝晩にケアをすることで『肌にハリが出る』『周囲に褒められる』といった変化を実感され、それが主な継続動機になっています。日焼け止めの市場拡大においては、美容意識の高まりに加えて、近年の温暖化で日差しが痛く感じたり、今まで以上に真っ赤に焼けてしまったりして、『サンケアしないとまずい』と感じる方が増えたのだろうと思います」(サントリーウエルネス 西山氏)
今後、日焼け止めを日常的に使う習慣を広げるには、いきなり「毎日塗る」ことを目指すより、まずはアウトドア時に適切に使用してもらうことから始めていくという。
「男性は日焼け止めを塗り慣れていない方も多く、塗りムラが生じるケースもあります。まずはゴルフなどのアウトドアで正しく使っていただけるようお伝えし、使用後の感想も聞きながら、徐々に使用頻度を高めてもらえればと考えています」(サントリーウエルネス 西山氏)
女性向けを含む日焼け止め製品は、機能性や特徴が多様化し、もはや夏季だけでなく年間を通じて売れる市場になっている。男性向け製品も同じ道をたどっていくのかもしれない。
(小林香織、フリーランスライター)
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