【ワールドカップ】日本代表が確立した「全員サッカー」のカタチ だが強豪になるにはいくつかの弱点がある

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2026年07月01日 16:30  webスポルティーバ

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ワールドカップ各国のカタチ――現代戦術と代表チームの葛藤 
VOL.4:日本

 世界のサッカーは、ポジショナルプレーの普及によるビルドアップの進歩と、それに伴うハイプレスの普及で、全員守備が必須な時代に突入しようとしている。しかし、ワールドカップを戦う代表チームは、それぞれ特別な国民的スターを抱えているために、全員守備に舵を切れない事情がある。

 ひとりのスターを残りのフィールドプレーヤーで支える「1+9」か、それともスターを入れない「10」か。強豪国それぞれの現状を探る。

【日本サッカー進化の歴史】

 日本のサッカーとは何か。長年探し続けていた問いにひとつの答えを出せたのが現在の日本代表だと思う。

 1968年メキシコ五輪の銅メダルでサッカー人気に火がついた。日本選手は勤勉でよく走り、個人技よりも集団性のプレースタイルだった。釜本邦茂という別格の個があったとはいえ、日本サッカーの形らしいものは見えていた。

 ところが、その後は長い停滞期が続き、W杯はおろか、五輪にすら出場できなかった。チームプレーを長所ととらえていたのだが、そのベースになる技術レベルが停滞してしまっていたからだ。

 1988年ソウル五輪の予選で指揮を執った石井義信監督は「日本よりはっきり個人技が下なのはカンボジア、ネパール、マカオくらいだった」と述べていて、中東勢や韓国はおろか北朝鮮、タイ、マレーシア、香港にも技術レベルで上回れていないという認識だった。何人かは図抜けた技巧派がいたものの、総合的に技術不足でチーム戦術以前の段階だった。

 Jリーグの開幕、育成改革などの成果もあり、1990年代には一気に技術的な向上が実現したが、そこで浮上したのが経験不足。ハンス・オフトが初の外国人監督となり、その後も欧州・南米の知見によって経験不足を埋めていく。2000年代に入ると選手の外国への移籍が徐々に増え、個々の経験不足は埋められていった。W杯も1998年大会以来、連続で出場を続けた。

 しかし、2006年大会後にジーコ監督は体力・体格不足を指摘し、アルベルト・ザッケローニ監督、ヴァイッド・ハッルホジッチ監督からも強度不足、とくにセンターバック(CB)とGKの世界基準と比しての低身長が指摘される。その時の雰囲気としては「わかりきったことを言われても」という感じだったのだが、外国人から見れば足りないものは足りないというだけである。

 日本はどういうプレーをすべきか。その際に考えられていたのは長所で短所をカモフラージュすることだった。間違いではないが、その時点での資源であるべき姿を決めてしまうのは、自ら可能性を狭めるだけだと当時から思っていた。その時点での「日本」を超越していかなければ進化はないと。

 すると、思いのほか早く日本は「日本」を超越していった。

 現在、代表選手の大半は欧州リーグでプレーしている。CBとGKの体格問題もあっさり解決された。技術、体力、経験が高いレベルで揃い、いよいよ「日本サッカー」を確立すべき時期が来たわけだ。

【全員守備の確立】

 2022年、2026年W杯で日本代表を率いた森保一監督のモットーは「いい守備からのいい攻撃」。守備→攻撃という順番が重要で、決して逆ではない。

 W杯における日本の立場は中堅である。今大会はポット2なので、中の上あるいは上の下という位置づけだが、優勝候補ではない。ノックアウトステージでいきなり強豪と当たるケースもあるので、勝ち上がるためにはまず守備が重要という方針は妥当だった。このあたりの大局観にはブレがない。

 選手選考の基準は1対1の強さ。とくに守備における1対1で一定レベルにない選手は選んでいない。そのため日本の守備意識は高く、戦術的な整理も進んだことで機能的な全員守備が実現した。

 サッカーは得点が入りにくいスポーツであり、守備が強固なら格上が相手でも接戦に持ち込むことは可能だ。今大会の日本は安定したブロック守備、そこから前進していくハイプレスの機動力が抜群で、トップクラスと言っていい。

 奪ったボールを無駄なくフィニッシュにつなげていくカウンターも鋭かった。攻守に連係できる距離感を保ち、そのなかで即興的に意思の疎通ができることも日本の長所だ。

 3−4−2−1システムの確立も飛躍の要因だろう。

 ウイングバックの起用の仕方で攻撃的にも守備的にもなりうる特徴があるシステムだが、攻撃的な選手を両翼に配したのは世界的にもあまり例がない。堂安律、伊東純也、中村敬斗、三笘薫は優れた攻撃力だけでなく守備力も確か。彼らの所属チームはリーグトップクラスではなく、普段から守備面での要求もされている。守備で信用できるアタッカーが揃っていたのは「いい守備からのいい攻撃」の原動力になっていた。

 さらに堂安と伊東、中村と三笘にはシャドーとウイングバックを入れ替えられる能力すらあった。三笘の負傷離脱で左の互換性は発揮できなかったが、画期的な試みと言える。

 機能的かつ献身的な全員守備。全員攻撃まではいかないが、ウイングバックの攻撃力による厚みはある。チームの一体感も含め、強豪にも正面から挑んでいける日本のスタイルが確立されていた。

【強豪国になることへのハードル】

 強豪に勝つチャンスのあるチーム。これが現時点での日本の立場だ。

 今大会で監督、選手は「優勝」を目標として掲げていた。大会に参加する以上、その意気込みでいい。ただ、"強豪に勝てる"のと、"強豪"そのものには大きな差がある。対戦して勝てる可能性があるのだから、強豪でなくてもW杯優勝はできるかもしれないが、常時優勝候補にあげられるチームは格が違うのだ。

 フランスが1998年に初優勝した時、大会組織委員長だったミッシェル・プラティニは「世界大会で優勝するのと、世界一はまた別だ」と言っていた。それから28年を経過した現在、フランスは真の強豪国になっているが、実際にW杯に優勝した国でも、名実ともに世界一と呼ばれるまでにはまたそれなりの時間がかかるのだ。

 例えば、サッカーがその国のナンバーワン人気スポーツでない強豪国はない。不思議なもので人気の低下は実力の低下につながっていて、イタリアはサッカーへの関心が薄まると同時に強豪国ではなくなった。単にチームが強くなるだけでなく、その国の中での地位が高くならないと強豪国の仲間入りはできないのかもしれない。

 日本にリオネル・メッシのような、あるいは野球の大谷翔平のような選手が出現すれば人気は高まるだろう。しかし一方で、そのスーパースターを生かすためにチームの戦い方を変化させなければならない可能性が出てくる。確立した全員守備の日本サッカーを部分的あるいは全面的に壊しながら、新たなスタイルを創り上げていかなくてはならない。

 現在の日本スタイルにはいくつかの弱点がある。

 全員守備、そのための緊密な連係のために消耗が激しく、たいていの試合で終盤に押し込まれる。絶対的なアタッカーがいないので、攻撃の軸が決まらない。

 ただ、スーパースターが出現するまでは、弱点がありながらも強豪に伍していける現在の戦い方を維持していくほかなく、そのスタートラインに立てたことは大きな意味があるのではないか。

このニュースに関するつぶやき

  • テレビ局はサッカーばかり放送してたからサッカーに興味ない人達は大変だろうな
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