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飲料メーカーの自動販売機ビジネスがピンチだ。
伊藤園は、自販機の台数を2015年からの10年で半数以下に減らしている。ダイドーグループホールディングス(以下、ダイドーグループHD)は、国内飲料事業の約9割を自販機が担うが、自販機の販売不振により巨額の減損損失を計上したことから、最終損益は約303億円の赤字となった。また、サッポロホールディングス(以下、サッポロHD)では、10月をめどに、自販機事業をライフドリンクカンパニーに売却。自販機ビジネスからの撤退を決めた。
矢野経済研究所の調べでは、国内自販機の設置台数は、2016年には約494万台だったが、2022年には約397万台と、6年間で100万台近く減少した。2025年にはさらに減り、約390万台になると予測されている。
日本は世界でもまれに見る自販機大国で、人里離れた農道や林道沿いにも自販機が設置されてきた。
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自販機ビジネスはなぜ衰退したのか。そして、復活のビジョンはあるのか。各社の動きを振り返りながら、今後の展望を探ってみたい。
●伊藤園は自販機事業を集約
伊藤園の2026年4月期連結決算は、売上高が約4979億円(前年同期比5.3%増)、営業利益が約217億円(同5.6%減)と決して悪くない。人件費、輸送費、原料費などのコスト高を考えれば、許容できる範囲だろう。しかし、最終利益は同75.5%減の約35億円と、大幅減となった。
第3四半期決算時、伊藤園は自販機事業の収益悪化により、当該事業関連の減損損失を約138億円計上。最終損失は約8800万円と赤字に転落した。通期では巻き返したが、自販機撤去を主とする減損損失の影響で大幅減となってしまった形だ。
伊藤園の自販機は2015年には約16万5000台あったが、2025年12月末には半数以下の約7万5000台に減少している。子会社の伊藤園ネオスは約5万台を保有しており、グループ全体では約12万5000万台が稼働していることになるが、自販機ビジネスの効率化と再構築が課題だった。
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伊藤園の事業は、「お〜いお茶」を中心とする飲料のリーフ・ドリンク関連事業がメインで、「タリーズコーヒー」などの飲食関連事業も有している。
2026年4月期の売上高は、リーフ・ドリンク事業が約4434億円(同5.5%増)、飲食関連事業が約465億円(同6.2%増)と順調に伸びていた。しかし、リーフ・ドリンク事業の営業利益は同8.0%減。原材料費、人件費、輸送費などの高騰の影響もあるとはいえ、自販機の不振が足を引っ張ったことが影響している。
伊藤園の自販機の売上比率は年々低下し、現在は5%ほどだが、スーパーやコンビニが近くにない場所での需要に応えられるメリットがある。また、コロナ前の2019年には約15%のシェアを持っており、潜在力はある。
伊藤園は自販機事業の再構築のため、自販機の設置や保守・管理を伊藤園ネオスに一本化。効率的な運営を行える体制へと変更した。
伊藤園ネオスは1985年、UCC上島珈琲の自販機事業を担う会社として設立された。その後、ネスレグループの傘下に入り、複数メーカーの商品を扱うようになった。2012年に伊藤園が買収したのも、自社だけでは手薄だった自販機網を強化する狙いがあった。
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今回、伊藤園が自販機事業を伊藤園ネオスに集約することで、自社商品の販売網を維持しつつ、他社商品も含めた品ぞろえの最適化がしやすくなる。お茶やコーヒーだけでなく、炭酸飲料や水、機能性飲料なども組み合わせ、1台当たりの売り上げを高めよういう姿勢がうかがえる。
●ダイドーは自販機依存の高さが重荷に
ダイドーグループHDは、子会社であるダイドードリンコの缶コーヒーを中心とする飲料商品の販売を、自販機に集中させている。それだけに、消費者が飲料の購入に自販機を選ばなくなってきているのは非常に深刻な問題だ。
ところが、ダイドーグループHDの2026年1月期の売上高は約2412億円(前年同期比1.7%増)、営業利益は約42億円(同13.1%減)と増収減益となった。売上高は過去最高を更新しており、営業利益が2023年1月期に約7億円(同84.6%減)と大幅に落ち込んでいたことを思えば、巻き返して高い成果を上げていると言える。
一方で、自販機事業関連資産の減損損失を計上したため、最終赤字は約303億円に上った。前年同期は約38億円の最終利益が出ていたことから、自販機ビジネスの厳しさが一気に表面化した形だ。
ダイドーグループHDの売上高と営業利益が伸びているのは、トルコを中心とした海外飲料事業が好調であることが大きい。子会社の大同薬品工業のOEM(他社ブランド製品の製造)による、栄養ドリンクやエネルギー補給ゼリーなどの売り上げも好調だ。
海外飲料事業の売上高は約653億円(同16.1%増)だが、一方で主力の国内飲料事業の売上高は約1427億円(同3.3%減)となっている。つまり、国内の自販機ビジネスが赤字に落ち込んだのに対して、海外事業などが伸び、グループ全体で営業利益を出していたのである。
しかし、売り上げの約6割を占める自販機ビジネスを疎かにしてはいない。伊藤園と同じく、1台当たりの収益率を重視して不採算の自販機を撤去し、配置を最適化させるための減損損失の計上である。ダイドーグループHDでは約27万台の自販機を保有しているが、今後は不採算の約2万台を撤去する予定だ。ここで改革に成功すれば、今期以降の収益改善も見込めるだろう。
●サッポロHDは自販機事業から撤退
伊藤園やダイドーグループHDの他にも、サッポロHD傘下のポッカサッポロフード&ビバレッジが、今年3月に自販機事業から撤退し、会社分割によるライフドリンクカンパニーへの売却を決めた。
ポッカサッポロでは、「ポッカレモン」などのレモン関連事業、「キレートレモン」のような機能性飲料といった、スーパー、コンビニ、ドラッグストアで売れる商品が好調であるため、そこに注力していく。
ライフドリンクカンパニーは、お茶、水、炭酸水に商品を絞り、スーパー、ドラッグストア向けの安価なプライベートブランド(PB)を大量生産する会社だ。自販機を大量に保有することで、販売チャネルの拡大にもなる。また、ポッカサッポロから缶コーヒーやジュースを仕入れて売ることもできるため、取り扱う商品を増やせるメリットがあると判断したのだろう。
●自販機ビジネスが不調な理由は
そもそも、自販機の売り上げが落ちている理由の1つは価格の高さにある。
伊藤園の「お〜いお茶」の600ミリのペットボトルは、メーカー希望小売価格に合わせ、2026年3月以降は237円前後となっている。2022年には150円ほどだったため、直近4年で5割上がっている。
一方、スーパーやドラッグストアでは特売で80円を切ることもあり、コンビニでは150〜160円ほどで買える(さすがにコンビニなどが近くにある街中では、自販機でも同じくらいの値段で売っている)。スーパーやドラッグストアの特売と自販機では、同じ商品でも約3倍の価格差が生じるケースもあるのだ。
自販機は無人で販売できるが、商品の補充やメンテナンスには人手が必要で、電気代もかかる。1台当たりの販売本数が減れば、保守や運営にかかる費用を価格に転嫁せざるを得ない。これでは、多少距離があっても、スーパー、コンビニ、ドラッグストアに行く人が増えるだろう。自販機ビジネスのピークである2000年には、全国で約560万台が設置されていたと言われるが、当時と比べると、スーパー、コンビニ、ドラッグストアの数は増えている。自販機で買わなくても、より安く買える場所が増えたことが、自販機の売り上げを圧迫している。
また、自販機ビジネスは人件費の比率が高い。地域のドライバーが、商品補充、新旧商品の入れ替え、集金、修理、清掃などを担うためだ。昨今のドライバー不足もあり、設置場所を絞らないと回り切れないことが、自販機台数の減少につながっている。
こうした影響から、伊藤園は子会社の伊藤園ネオスに自販機事業を集約することで、自販機の適切な配置を行い、利益を回復させようとしている。また、ダイドーグループHDでは、AIを活用した配送ルートの最適化や需要予測の精度向上、充填回数の削減などに取り組んでいる。さらに、スイーツや地域限定品など、飲料以外の冷凍食品の自販機にも力を入れている。食品などをうまく活用することで、自販機ビジネスの再構築を進めることは可能だろう。
苦境に立つ自販機ビジネスだが、自動運転が進めば、モビリティ機能を備えた自販機が夜間に自ら充填ステーションまで移動し、商品を補充して戻ってくることも可能だと言われている。しかし、それはまだ先の話だ。
スーパー、コンビニ、ドラッグストアとの価格競争に巻き込まれず、いかに効率良く販売するか。自販機を活用する飲料メーカーの手腕が試されている。
(長浜淳之介)
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