
気象庁によると、関東は今年(2026年)7月20日頃に梅雨明け。東京ではそこから最高気温30℃越えの真夏日が連続。今年4月に気象庁が最高気温40℃越えの日を「酷暑日」と決めましたが、それも全国で連発。本コラムの執筆時点で今年の暫定1位は、7月23日に静岡県浜松市で記録した41.1℃です。
【写真を見る】肥満、ストレス、鼻づまり、気になる症状ありますか?〜TBSの専門家が分析「データからみえる今日の世相」〜【調査情報デジタル】
その一方で、気温に負けないくらい上昇しているのが物価。その対策として、「自民は(筆者注:今年2月の)衆院選の公約で、2年限定で食料品の消費税率をゼロにすることについて『検討を加速する』と掲げ」(2026年1月28日朝日新聞デジタル)、選挙に大勝。それを受けた第221回特別国会は、総理の出席が少ないとか進め方が乱暴だとか批判も多く、消費税率とは別の法律が先にいろいろと成立。
改正健康保険法もその1つ。これにより、来年(2027年)3月から、市販薬と同じ成分の薬(OTC類似薬)を病院で処方してもらうと、その料金の25%は保険適用されず患者が負担することになりました。
患者負担を増やす理由について、厚生労働省は「(1)市販薬で対応している患者との公平性の確保(2)現役世代を中心とする保険料の負担上昇を抑制――を挙げるが、最大の狙いは増え続ける医療費の抑制とみられている」とか(2026年6月6日朝日新聞デジタル)。
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諸物価高騰の折、病院の処方薬の負担も増えるので、あまり病気しない(病院に行かない)よう心がけたい……、という庶民のいじらしさが医療費抑制になるとすれば、まさに国の思うツボ(注1)。
そんないじらしい庶民が、日頃、自分の健康状態についてどんなこと(症状)を気にしているか。今回は「気になる症状」を切り口に、データをひもといてみます。
若年男性は鼻の症状、中高年は老眼に加齢本コラムでおなじみのTBS生活DATAライブラリ定例全国調査(注2)では、「日頃の健康状態で気になる症状」について、あてはまるものをいくつでも選んでもらう質問を1995年から実施。最初は選択肢が20個でしたが、見直しを重ねて、昨年(25年)の調査では70個まで拡充。このデータを、若年(10〜20代)、壮年(30〜40代)、中高年(50〜60代)の男女別に集計し、それぞれで選択率上位の5症状を示したのが次の横棒グラフです。
グラフは左が男性、右が女性、上から若年、壮年、中高年の順。全体として個々の症状の選択率が高いのは、男性より女性、若年より壮年、壮年より中高年、といった感じです。この回答はあくまで自己申告なので、選択率の低い若年・壮年の男性で本当に症状がないのか、単に無自覚なのかは微妙なところ。
筆者は現在50代後半の男性ですが、年齢が上がるほど体の衰えや不調のあれこれを自覚する人が増えるのは、よく分かります。逆に若年男性が気にするのは「鼻がつまる、鼻水が出る」くらいで、若い男は本当に洟垂(はなた)れ小僧だなと思う次第。
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一方、女性は若年層の4人に1人が女性ならではの「生理痛」に悩みつつ、3人に1人が「肌荒れ」を懸念。壮年層では「しみ・そばかす」が肌トラブルですが、「肩・首が凝る」がそれを凌駕。その悩みを抱えつつ、中高年層で「老眼」「加齢・体力の衰え」「白髪」が加わり、本当に大変そう。
壮年女性は便秘に乾燥、壮年男性は虫歯に口臭性別や年代によって気になる症状も様々ですが、数多くの症状を選択肢にした調査データなので、もっといろいろな症状と性年代の関係も見てみたいところ。とはいえ、あまり選ばれないマイナーな項目まで含めると主な傾向が見えにくくなります。
そこで、回答者全体の選択率が上位30項目と、全体では30位以下ながら若年女性のトップ5に入った「生理痛」の計31項目に絞って、「どの性年代の人々が特にどんな症状を気にしているか」を1枚の散布図に表す「コレスポンデンス分析」を行いました(注3)。
散布図では、「同じような選ばれ方の項目」や「その項目の選択率が高い性年代」が近くに集中。また、多くの性年代で選択率が高い項目は原点のそばに位置し、特定の性年代で選ばれがちな項目は原点から見てその性年代と同じ方向に位置します。
図の全体では上側が女性、下側が男性で、左から右に向かって年齢が上がっていくように分布。原点近くにある「疲れやすい」や「目が疲れる、目がかすむ」は割とどの性年代でも気になる症状のようです。
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図を細かく見ると、左上に「生理痛」が突出していて、その領域に位置する若年や壮年の女性に特徴的な悩みであることが分かります。また、壮年女性は「便秘がち」「手足の乾燥」「しみ・そばかす」も気になる様子。
一方、左下の若年男性はやっぱり「鼻がつまる、鼻水が出る」が気になって仕方がない感じ。
右下に目を転じると、壮年男性に特徴的なのは「虫歯」「口臭」といった口の悩みで、中高年男性では「血圧が高い」が特徴的。
中高年男性のトップ5に入った「加齢・体力の衰え」「老眼」は、「コレステロール」「筋肉の衰え」とともに、右上の中高年女性の間に位置していて、男女の中高年層をともに悩ませていることが分かります。
最後に、中高年女性に特徴的な症状は「白髪」でした。
調査では「日頃の健康状態で気になる症状」を質問しており、入院や手術が必要な深刻な病気などは含まれていません。それこそ、まずはドラッグストアなどに普通にある薬や商品で何とかしようと思うものばかり。こうした症状でも、今までは病院で処方した薬なら健康保険がききましたが、来年3月からは患者の負担が一部増えるわけですよね……。
何といっても「体が資本」ここまで、気になる症状として「何を選んだか」に注目してきました。せっかく70個もの選択肢で調査したので、今度は「何個選んだか」に注目した分析をしてみます。
まず、回答者全体を選んだ症状の数で「0〜3個」「4〜9個」「10個以上」の3つに分割。それぞれが占める割合は、「0〜3個」と「4〜9個」が各4割、「10個以上」が2割でした(注4)。
TBS生活DATAライブラリ定例全国調査では、健康や衣食住、仕事、余暇、家族、友人・知人、資産という9つの分野について、それぞれの満足度を「不満」から「満足」までの5段階で答えてもらっています。その満足度が、症状数の多い・少ないによって、どの分野でどう違うかをまとめてみたのが次のレーダーチャートです(注5)。
「自分の健康」では、症状数が多いグループほど満足度が低くなっており、これは当然。そして、差の開きは「自分の健康」ほどではないにせよ、それ以外のすべての分野でも、症状数が多くなるほど満足度が低いという結果になりました。
「預金や資産」「自分の着るものや身につけるもの」といった、一見、健康状態との直接的関係が考えにくいような分野なら、グループ間の差が縮まったり逆転もあるかも、と思ったのですがそうはならず。
なぜ気になる症状の数によって、生活全般の満足度に差が出るのか。詳しい理由は分かりませんが、やはり健康状態が思わしくないと、生活のいろいろな場面で「ああしたい、こうしたい」ということがしづらく、意欲も減退してつまらなくなり、満足しにくくなるのでしょうか。
「体が資本」という言葉もありますが、上のレーダーチャートは、何をするにも健康がまず第一ということを表しているのかも知れません。
健康も政治も自己責任!?上がり続ける気温に物価。もはや庶民の手に負えるものでもなく、政治に期待しても、なぜだか望んだこととは違う感じのニッポン。
そのニッポンは少子高齢社会で、加齢とともにあれやこれや体の不調が気になる中高年が増加中。そこに、ちょっとした症状を治すなら、もっとお金を払いなさいと求めてくる健康保険法の改正。
気温や物価は手に負えませんが、自分の健康なら自分で何とかなるかも。しかし、肌荒れ、鼻水、鼻づまり、肥満、疲労に高血圧。ちょっとした症状を気にしすぎて、生活全般が楽しくないのは本末転倒。こうなると、いじらしいのか、いじましいのか、よく分かりませんが、体調がイマイチなのも、高市さんが総理なのも、結局庶民の自己責任なんでしょうか(注6)。
注1:三省堂『新明解国語辞典』第八版によれば、「いじらしい」とは「〔逆境に置かれた子どもが〕非力にかかわらず精一杯努力(つらい立場にあるにもかかわらず無邪気に)している様子を見たり聞いたりして、思わずほろりとする感じだ。」とのこと。主権者たる国民の、公僕たる議員や政府、行政に対する姿勢が「いじらしく」思われてしまい、それでいいのかと気になるのは筆者だけでしょうか。
注2:TBS生活DATAライブラリ定例全国調査は、TBSテレビをキー局とするテレビの全国ネットワークJNN系列が、毎年11月に実施する大規模ライフスタイル調査です。同じ回答者にメディア行動や価値観、個人材・世帯財の購入などを総合的に調査するシングルソースデータです。
注3:コレスポンデンス分析は、1つのクロス集計表について、表頭項目と表側項目の相関が最も大きくなるよう、それぞれに適切な重みを付ける(そうした重みを見つける)分析です。その重みの値を座標値にして各項目の散布図を描き、クロス集計結果を視覚的に表します。今回は表側に性別(男性/女性)と年代(10〜20代/30〜40代/50〜60代)を組み合わせた6グループ、表頭に「気になる症状」選択肢31個が並び、各セルにはグループごとの項目選択人数が入ったクロス集計表を作成して分析しました。
注4:正確には「0〜3個」が38.9%(2,877人)、「4〜9個」が39.3%(2,909人)、「10個以上」が21.8%(1,614人)です。
注5:レーダーチャートを作るために、満足度評価の5段階を「満足」=5点、「まあ満足」=4点、「どちらともいえない」=3点、「やや不満」=2点、「不満」=1点として、症状選択数の3つのグループごとに9つの分野それぞれで満足度の平均点を計算しました。計算では無回答を除きましたが、同じグループでも分野によって無回答の数が異なるため、計算の対象になった有効回答数も異なります。
注6:三省堂『新明解国語辞典』第八版によれば、「いじましい」とは「〔関西方言〕小さい(ささいな)事にけちけちしたりして、哀れむべき状態だ」とのこと。
引用・参考文献
● 気象庁ホームページ
〈執筆者略歴〉
江利川 滋(えりかわ・しげる)
1968年生。1996年TBS入社。
視聴率データ分析や生活者調査に長く従事。テレビ営業も経験しつつ、現在は法務・コンプライアンス方面を主務に、マーケティング&データ戦略局も兼務。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

