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日本を代表する2大カフェチェーン、ドトールコーヒーショップとコメダ珈琲店が激しい競争を繰り広げている。
運営元のドトール・日レスホールディングス(HD)、コメダホールディングス(HD)ともに業績は好調で、2026年2月期連結決算は両社いずれも売上高、最終利益ともに過去最高を更新した。
特に勢いを感じるのはコメダだ。上場した2016年6月当時、コメダ珈琲店の国内店舗数は700だったが、10年後の2026年5月末時点で1035に増えた。コメダが追うドトールコーヒーショップの国内店舗数は、2026年5月末時点で1074。ライバルの背中を射程内に捉えつつある。
一方で、両者はビジネスモデルや客層、コンセプトが異なる。それぞれの領域で、強みを発揮しているともいえる
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日本のカフェ業界に「セルフサービス方式」をいち早く取り入れ、おいしいコーヒーを手軽に楽しめる新たなカフェ文化を根付かせたドトール。他方、発祥地の名古屋で磨いてきた「フルサービス方式」を強みに、店舗網を広げてきたコメダ。
決算やこれまでの歩みを振り返りながら、両者の現在地と今後を見ていきたい。
●「現場の強さ」発揮するドトール
まずは両者の決算から見ていきたい。
ドトール・日レスHDの2026年2月期の連結決算は、売上高が1591億円(前期比7%増)、営業利益が101億円(同6%増)、純利益が72億円(同5%増)となった。
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季節限定のドリンクや新商品など、付加価値を高めた高単価商品の売れ行きが好調で、客単価が上昇した。グループが運営するパスタ店「洋麺屋五右衛門」は、既存店が順調に推移し、店舗増も伴って売上高が前期比14%増と大きく伸びた。
卸売り事業では、インスタントコーヒーやドリップコーヒーがコンビニやスーパーなどの量販店やEC販売で売れたほか、チルド飲料も商品展開の幅を広げた。
同社の売上高の内訳を見ると、直営店売り上げが65%と大きな割合を占め、卸売り収入が34%となっている。
新商品の投入や人気商品のリニューアルなど、店舗メニューの不断の見直しで新たな顧客を獲得し、リピーターを生み出し、堅調に業績を伸ばしていく「現場の強さ」が数字に表れている。
業界1位のスターバックスの国内店舗数は、2026年3月末現在で2116店。ドトールはカフェだけで比べると及ばないが、HD全体の店舗数で見ると2049店に達し、引けを取らない。
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●「仕組みの強さ」を武器にするコメダ
次はコメダHD。2026年2月期の連結決算は、売上高にあたる売上収益が572億円(前期比22%増)、営業利益が94億円(同7%増)、純利益が64億円(同11%増)となった。
ドトールとの違いが見えるのは、売上高の内訳だ。最も大きな割合を占めるのは、卸売り収入で68%に上る。次に直営店売り上げの19%となっている。
コメダのビジネスは、加盟店オーナーに店舗運営を任せるフランチャイズ(FC)モデルだ。
飲食店の運営スタイルは、大きく直営店とFC店に分けられるが、コメダの店舗は95%がFC加盟店となっている。ドトールはHD全体で見た場合、直営店とFC店がおおよそ半々に分かれている。
コメダは加盟店にコーヒー豆などの商品を卸売りして得られる収入が、売り上げの多くを占める。ドトールが顧客に商品を売る「BtoCビジネス」メインなのに対し、コメダはFC加盟店への卸売りを中心とする「BtoBビジネス」だ。
FC方式のため、人件費や店舗管理にかかる費用を抑えられる分、営業利益を確保できる。売上高に占める営業利益の割合は、ドトールHDの6%に対し、コメダHDは16%となっている。
コロナ禍でも、固定費の低さや郊外出店で密を避けた立地が奏功し、コメダは赤字に陥らずに済んだ。
こうした「仕組みの強さ」を武器に、コメダは積極的に新規出店を進め、売り上げを伸ばしてきた。直近では、東南アジア進出への足がかりとしてシンガポールの外食企業を子会社化したことも、業績に寄与した。
●危機意識が原点 セルフ導入の先駆け、ドトールの歴史
両者の歩みを簡単に振り返りながら、現在の運営スタイルやコンセプトに至った経緯を見ていきたい。
ドトールの創業は1962年。喫茶店にコーヒー豆を卸す焙煎業としてスタートした。
創業者の鳥羽博道氏は、1971年の欧州視察で「立ち飲み形式」を知り、新たな喫茶スタイルの着想を得たと自著に書いている。朝、パリの地下鉄から出てきたビジネスマンたちは、オフィスではなく、シャンゼリゼ通りに面したカフェテラスに入っていく。
テーブルに座る人はほとんどいない。皆、カウンターに鈴なりになって、クロワッサンを食べ、コーヒーを飲んでいる。いかにも早朝にふさわしい活気が伝わってくる。
私はその様子を眺めながら「これだ!」と心の中で叫んでいた。
『ドトールニューマーケット創造の原点 150円コーヒーショップの奇跡はこうして生まれた』(鳥羽博道著/日本実業出版社/1988年9月)
帰国後、鳥羽氏は新たな喫茶店の経営スタイルを形にしていく。1972年にオープンした「カフェ コロラド」だ。従来の喫茶店はゆったりとした席が特徴だったが、コロラドは席の広さを従来の3分の2くらいにし、回転率を重視した配置にした。
客の目の前でコーヒーをサイフォンで一杯ずつ淹(い)れるスタイルも受け、1980年末には200店に達し、急成長を遂げた。
ドトールコーヒーショップが生まれたのは、そんなコロラド全盛期の1980年のこと。当時、石油ショック後の不況でサラリーマンの可処分所得が減る一方、コーヒーの値段は年々上がっていた。
わたしは「このままではいずれ喫茶店にはお客さまがこなくなるのではないか」と、喫茶業の将来に危機感を抱いた。そこで80年、おいしいコーヒーを安く提供する日本初の立ち飲み方式の喫茶店「ドトールコーヒーショップ」を始めたのである。このときの危機意識が、今も続く当社の成長の原点となっている。
鳥羽博道氏「巻頭随想:治にいて乱を忘れず」(『国民生活金融公庫調査月報 9月 No.473』中小企業リサーチセンター/国民生活金融公庫総合研究所編/2000年9月)
ドトールコーヒーショップは当時1杯150円という価格設定のもと、店舗経営の効率化を追求し、喫茶業界にいち早くセルフサービス方式を導入して、日本のカフェ文化をリードする存在となっていった。
●「喫茶店王国」名古屋で磨いたコメダの強み
コメダ珈琲店の1号店が名古屋市にオープンしたのは1968年。創業者の加藤太郎氏は、実家が米穀店だったことにちなみ、「コメ屋の太郎」から「コメダ」と名付けたという。
名物商品のシロノワールは、9年後の1977年に販売を開始している。
創業当初から同社は“名古屋ローカル”に徹し、店舗を拡大していった。首都圏に比べると人口規模は少ないため、ターゲットを絞り込まず幅広い年齢層とリピーターの呼び込みを意識した店舗づくりを心がけた。
名古屋は「喫茶代」の1世帯当たり年間支出金額が1万6431円で、全国1位を誇る。全国平均(1万261円)の1.6倍となっており、喫茶店文化が根付く(統計局 2023〜25年平均)。そんな土地柄にコメダは集中的に出店し、「くつろぎ」というコンセプトを磨いてきた。
コメダが中京圏でローカルチェーンとして成長できた背景には、他の有力コーヒーチェーンが本格進出するまでに「タイムラグ」があったことが挙げられる。こう指摘するのは、経営史が専門の松原日出人・中京大学准教授だ。
チェーン店は市場シェアや優位性を獲得するために、特定エリアに集中出店する「ドミナント戦略」を採る。そのため、ドトールコーヒーショップもスターバックス(1996年日本1号店開業)も、1990年代の出店エリアは関東がメインだった。
松原氏は「そのタイムラグの間に他エリアでは異なるローカルチェーンの発展の途があり得た」とし、コメダ珈琲店が伸長した一因とみる(「日本の喫茶店およびカフェ市場の展開と主要企業の戦略(2)」)。
コメダ珈琲店が中京圏以外に出店したのは、2003年の関東エリアが初めて。その後、関西、北陸、四国、中国、九州と各エリアに順次進出し、2019年に青森県に出店し、47都道府県への出店を実現した。
「喫茶店王国」と称される名古屋で磨き続けてきたフルサービス方式を強みに、他エリアでも着実に支持を広げ、2023年にグループ1000店舗に突破した。
●時代はコメダに味方?
それぞれの強みと持ち味を生かして、カフェ業界トップ3の一角を占めるドトールとコメダ。一方で、昨今の人々の意識や消費トレンドを踏まえると、時代はコメダに味方しているようにも見える。
例えば、「パーソナルスペース」に対する意識の高まりが感じられる。
コロナ禍をきっかけに、社会的距離(ソーシャルディスタンス)が意識されたこともあり、人と一定の距離を保ちたいと考える人も少なくない。座席の間隔をゆったり取るコメダは、そうした人々の思いとマッチする。
また、消費の軸が「モノ」から「コト」へと移る中で、消費者は食事だけでなく、店内で過ごす時間や体験に価値を見いだそうとする。
コメダが磨いてきたフルサービスと「くつろぎ」のコンセプトは、その点でもアドバンテージになりそうだ。今後、出店拡大を見込む和風喫茶「おかげ庵」のメニューには、自分で団子を焼きながら楽しめるものもある。インバウンドだけでなく、日本人にとっても楽しい体験だ。
ドトールも、2004年にドトールコーヒーショップが国内1000店舗を達成して以降、その店舗網は拡大しつつも、新たなブランド展開を増やしている。内装にこだわった「ドトール珈琲農園」などは、店舗の体験価値のさらなる向上が感じられる。
お盆明けの平日午前。筆者は横浜市内のコメダ珈琲店に立ち寄ったところ、家族連れから年配の人まで、幅広い年齢層の利用者でにぎわっていた。「いつもの場所空いてますよ」という常連と思しき客へのスタッフの声かけに、コメダらしさが詰まっていた。
同じく平日の午後。横浜市内のドトールコーヒーショップを訪れると、仕事の合間の休憩か、スーツ姿の会社員や年配の人などでこちらもにぎわっていた。返却口はトレーや皿の形状ごとに置き場所が分けられていて、片付け業務の負担を減らす工夫が感じられた。
2027年2月期通期の業績予想でも、さらなる成長を見込む両者。熾烈(しれつ)な競争はまだまだ続きそうだ。
(濱川太一)
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