東京のスタジオで「わが永遠の魂」シリーズ作品を制作中の草間彌生さん=2014年(C)YAYOI KUSAMA 草間彌生さんは種苗業を営む長野県松本市の旧家に生まれた。保守的な家風や両親の不仲が精神的な負担となり、幼い頃から幻覚、幻聴に悩まされた。採種場に咲くスミレが、人間の顔をして話し掛けてくるように思え、恐ろしくなったのが最初の体験だったという。
そんなときは、見えたものをスケッチブックに描いた。描くことで不安を鎮め、自らをコントロールするすべを身に付けた。草間さんは自伝の中で「絵を描くことは、芸術からほど遠いところから、原始的に本能的に始まった」と書いた。
単身渡米したのも自由な創作の場を必要としたからだろう。そこで独創性を発揮し、数々の作品が世界的な評価を得る。空白を恐れるかのように広いキャンバスを水玉模様で埋め尽くしたり、嫌悪する物をあえて表現の対象にして空間にあふれさせたり。反復と増殖の中に埋没することで、恐れる自分を消滅させた。
2009年以降は「わが永遠の魂」と題した大型キャンバスの連作に力を注いだ。抽象的文様や人物などさまざまなモチーフが、多彩な色を伴って集積するさまは、描かずにいられない草間さんの衝動、エネルギーの大きさを感じさせた。
この連作を含む17年の東京での企画展に際し、草間さんは「悲しいときにいつも私を支えてくれたのは、芸術家として強く生きることでした。皆さんにその情熱を少しでも感じてもらい、私の生き方を乗り越えてより良い世界をつくってほしい」とのメッセージを寄せた。自身を救済した芸術は、全ての人にとってそれぞれの困難に打ち勝つ力になるという信念がそこにあった。