インタビューに答える日本俳優連合代表理事の池水通洋さん(右)。中央は常務理事の島田敏さん、左は常務理事の佐々木優子さん=14日、東京都新宿区 生成AI(人工知能)による声の無断模倣で声優業界は深刻な被害を受けている。ベテラン声優らは「声の権利を認めてほしい」と訴え、津田健次郎さんが起こした訴訟の判決を見守っている。
「どう考えてもアウト。とても不愉快にならざるを得ない」。人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の祖父・友蔵役や、「ドラゴンボール」の人気キャラクター、ブロリー役で知られる声優の島田敏さんは、ブロリーに似た声が有名楽曲を歌う動画に憤りを隠せない。
拡散を止めようとしたが、次々と新しい動画が投稿され、一つ一つに削除を求めることは不可能。アニメキャラクターの声は作品の制作側にも権利が帰属するため、独断で法的措置を取りにくい面もあるという。
島田さんにとって、アニメは台本を読んで役の理解を深め、他の演者や関係者と試行錯誤しながら作り上げた「総合芸術」。第三者が無断で声を模倣して報酬を得ている現状に、「早く問題を解決しなければ、声優業界に未来はない」と強調する。
声優らの協同組合「日本俳優連合」(日俳連)には、「(演じるキャラクターが)覚えのない性的な言葉をしゃべらされた」など、生成AIによる無断模倣で生じた被害の相談が後を絶たない。大手企業でさえ「商業利用ができる」とうたい、さまざまな声優の声にテキストを読ませる音声生成サービスを、声優の許諾を得ずに提供していた。日俳連の求めに応じ、サービスは終了したが、企業側は最後まで権利侵害を認めなかったという。
日俳連代表理事で、「新・巨人の星」の長嶋茂雄役を務めた池水通洋さんは、問題の背景として声を守る法的根拠がない点を挙げる。法務省の有識者検討会で声の使用を巡る民事上の責任について指針が示されるなど、権利保護の機運は徐々に高まっているが、「津田さんの訴訟で声の経済的権利が認められてほしい」と願う。
「ちびまる子ちゃん」の祖母・こたけ役を務める佐々木優子さんは「生成AIを正しく利用するルールを話し合い、『共存』することが重要だ」と呼び掛けている。肖像と同じように声も個人情報としての取り扱いが必要だとし、「生成AIによる声の無断利用はルール違反という意識が世間で広まってほしい」と訴えた。