【コラム】 あの頃「りぼん」が好きだった 「250万乙女」に捧ぐ「姫ちゃん」事変の裏側

25

2009年11月01日 10:54  よりミク

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

よりミク

■みんな「りぼん」が好きだった  集英社の「りぼん」。小中学生の少女に向けた、老舗の月刊漫画雑誌です。創刊は1955年ですが、部数を大きく伸ばしたのは1980年代後半から1990年代前半にかけてのこと。その時代には、傑作と言われる作品を多数輩出しました。ごく一部を振り返ってみても――― 【1980年代】  有閑倶楽部(一条ゆかり)、ときめきトゥナイト(池野恋)、お父さんは心配症(岡田あーみん)、星の瞳のシルエット(柊あおい)、ポニーテール白書(水沢めぐみ)、ちびまる子ちゃん(さくらももこ)、ハンサムな彼女(吉住渉) 【1990年代】 姫ちゃんのリボン(水沢めぐみ)、天使なんかじゃない(矢沢あい)、赤ずきんチャチャ(彩花みん)、ママレードボーイ(吉住渉)、こいつら100%伝説(岡田あーみん)、こどものおもちゃ(小花美穂)、ご近所物語(矢沢あい)―――  ざっとこれだけの名前が挙がります。全盛期には、発行部数(公称)にちなんで、「りぼん」読者を「250万乙女」と呼ぶキャッチコピーが誕生。「なかよし」や「ちゃお」を押さえ、少女漫画御三家の女王として君臨しました。しかし絶頂を極めた「りぼん王朝」にも終わりが訪れます。1994年にピークに達した部数は次第に降下、2002年にはトップの座を「ちゃお」に明け渡すことに……全盛期を知る「250万乙女」にはショックな事実です(※)。

90年代の名作「姫ちゃんのリボン」c水沢めぐみ/集英社文庫コミック版
■りぼん革命  ただ「りぼん」編集部も、成り行きを静観していたわけではありません。2009年には、博打とも言える大胆な試みを行っています。ひとつは、新條まゆによる新連載「ハートのダイヤ」のスタート(9月号)。もう一つは90年代の名作「姫ちゃんのリボン」(水沢めぐみ)のリメイクです(10月号)。  生え抜きを大事にする「りぼん」が、他誌から漫画家を引っ張ってくることは非常に稀。その「りぼん」が、現在フリーとはいえ他誌出身(小学館の「少女コミック」)の新條まゆを「輸入」したことは、驚きをもって迎えられました。加えて新條まゆといえば、代表作「快感?フレーズ」をはじめとして「まゆたんワールド」と形容される、大胆な作風が人気の漫画家。両者のタッグに「エイプリルフールかと思った」と仰天するファンもいたとか。

現代的な装い「姫ちゃんのリボン カラフル」c込由野しほ・水沢めぐみ/集英社りぼん
 しかし「まゆたん襲来」以上に話題を集めたのが「姫ちゃんのリボン」のリメイク「姫ちゃんのリボン カラフル」(込由野しほ)。水沢めぐみの「姫ちゃんのリボン」(1990〜1994)は、ある日突然、魔法のリボンを預かった少女・姫ちゃんこと野々原姫子のドタバタな日々を描いた学園物語。お転婆だけどまっすぐな姫ちゃんと、同級生・小林大地との淡い恋を織り交ぜた暖かい作風が支持され、アニメ化もされた大ヒット作です。それゆえリメイク決定は大反響を呼んだわけですが、悲しいかな、そこで多かったのは否定派の意見。人気作をリメイクする難しさが垣間見える結果となりました。そんな難題に挑戦した理由を、「250万乙女」時代と現在を知る「りぼん」編集部副編集長の小池正夫さんに伺いました。 ■「姫ちゃん」をリメイクした理由  「りぼん」を含め少女漫画の扱うテーマが、現実とファンタジーの両極に傾いてしまっている。「魔法」というワクワクする漫画的装置が、等身大の少女の物語に見事にはまった「姫ちゃん」のような作品が少なくなっている……という実感と反省から、この企画が浮かびました。漫画って、もっともっと自由な発想から生まれるものがあってもいんじゃないか、と。最初は「姫ちゃん」的オリジナル作品を模索したのですが、どうせなら「姫ちゃん」をリメイクして、この際徹底的に編集部も「姫ちゃん」という素晴らしい作品から学ぼうと考えました。 ■なぜ「姫ちゃん」だったのか  「姫ちゃん」のパワフルで前向きなヒロイン像が、今の少女漫画を元気にしてくれるんじゃないかと考えました。ただ昔の作品をそのままリメイクしても良い成果が出せるとは思えません。必ず今の読者を意識した「現代性」が加わらないとダメ。加えて、リメイクを担当する作家さんの「作家性」がそこに加わらないと良い作品にはなりません。そういった意味で、「姫ちゃん」にはその2点「現代性」と「作家性」を盛り込む器が備わっている、と考えました。 ■心配していたこと、期待していること    心配していたことは、水沢めぐみ先生の「姫ちゃんのリボン」に対して恥ずかしい結果に終わらないように、ということでした。水沢先生の「姫ちゃん」は素晴らしい作品です。それをリメイクするということは、水沢先生と「姫ちゃん」に対して、大きな責務があります。幸いなことに、水沢先生に編集部の意図をご説明したところ、快諾をいただけました。そこからこの企画はスタートしています。水沢先生にも「姫ちゃんのリボン カラフル」を応援していただいています。  期待していることは、このリメイクが人気をとること。そしてこの「姫ちゃんのリボン カラフル」に続く、思い切り自由な発想の作品が出てくることです。 ■発行部数の減少について  まず少子化によって、読者の絶対数が減っていること。加えて、現在の読者の趣味志向が変化してきていることが挙げられます。今の読者にとって漫画は「250万乙女」の頃のように、自分の興味の真ん中にあるわけではありません。ファッションやゲーム、携帯電話などに囲まれて、漫画の位置が相対的に落ちていると感じます。その中で、他誌がやってきたようなメディアミックス、ふろくにお金をかける「物量作戦」などにおいて、「りぼん」が遅れをとってきたことは否めません。「250万乙女」の頃から、ずっと「りぼん」は作家性中心の作品作りをしてきたので、そのような世相に乗り遅れたという側面もあります。 ■「250万乙女」たちへのメッセージ  「りぼん」は、漫画雑誌です。素晴らしい作品を送り出すことを至上命題として、雑誌を作っています。上記のような課題を意識しつつも、やはり中心にあるのは漫画です。漫画の力を信じています。「姫ちゃんのリボン カラフル」を含め、様々な取り組みをしている最中です。テレビアニメ放送中の「夢色パティシエール」や、少女漫画の王道をいく新連載「ひよ恋」も始まりました。きっと今の「りぼん」をお読みいただいても、満足していただける作品が必ずあると思います。「りぼんは、もう卒業」と思っていただいている方も、ぜひもう一度「りぼん」をお手にとってみていただけたら幸いです。

11月2日発売の「りぼん」12月号はクリスマスな雰囲気c集英社りぼん
 生まれ変わった「姫ちゃんのリボン カラフル」、既に連載は3回目を迎え、読者には好評なようです。しかしその現代的な絵柄やテンポに、「受け入れられない」「新しい姫ちゃんもかわいい!」と原作ファンは賛否両論。あなたはどんな風に感じましたか? 読書の秋、「姫ちゃん」の今昔を見比べながら、漫画の世界に「いけいけゴーゴーッ!!じゃーんぷっ」。(キキ/mixiニューススタッフ) ※社団法人日本雑誌協会「マガジンデータ2009(2008年版)」より ■関連サイト: 集英社 りぼんわくわくステーション http://ribon.shueisha.co.jp/ まるごと試し読み「姫ちゃんのリボン カラフル」 http://www.s-manga.net/comics/om_ri_rmc_himechan-no-ribbon.html
その他のよりミク記事: 今だからこそ語りたい「テニスの王子様」のこと 沼ガールにオススメ 超絶4コママンガ「臨死!! 江古田ちゃん」 小学生のバイブル「コロコロコミック」人気の秘密 【よりミクとは?】ちょっと気になるあの話題、巷でウワサのあの商品をニューススタッフが調査し、コラムにしてお届けします。「より道」感覚で、ニュースとはひと味違うコンテンツをお楽しみください。

ランキングゲーム・アニメ

前日のランキングへ

オススメゲーム

ニュース設定