自宅出産からホームスクーリングまで!「DIY育児」がアメリカの最新トレンド

4

2013年02月15日 14:30  MAMApicks

  • 限定公開( 4 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

MAMApicks

写真
当サイトでも既報の通り、昨年、アメリカで大論争を巻き起こしたコラム“Why women still can't have it all(なぜ、女性はいまだ全てを手に入れることができないのか)”など、子育てや女性の働き方についての鋭いコラムに定評のあるアメリカの総合月刊誌「Atlantic」のウェブ版に、今月、また興味深い記事がアップされた。アメリカで今、育児の過去回帰が始まっているというのだ。


How Parenting Became a DIY Project(いかに子育てがDIYプロジェクトになったのか)”(http://www.theatlantic.com/sexes/archive/2013/02/how-parenting-became-a-diy-project/272792/)というタイトルのこのコラム、書いたのは、エミリー・マッチャーという女性。今年5月に発売予定の「Homeward Bound: Why Women Are Embracing the New Domesticity(回帰:なぜ女性は新たに家庭的になろうとしているのか)」という書籍の著者でもある。

離乳食から幼稚園かばんまで、なんでも「手作り」が最高とされてきた日本では分かりにくいかもしれないが、一昔前のアメリカでは、市販の瓶詰のベビーフードをなんの抵抗もなく子どもに食べさせる母親が主流で、子育てに手間暇をかけること、女性が家庭的であることを美徳とする風潮は少なかった。

ところが、マッチャーは、“Do It Yourself = DIY(自分でやりなさい)”育児が、近年のアメリカの、進歩的かつ高学歴層の親たちの間での最新トレンドだと指摘する。

「自分らしさ」や「納得のいく子育て」を追求するため、子育てに手間暇を惜しまず、自分でできることはなんでも自分でするというのが、マッチャーの唱えるDIY育児の定義。背景には、日本でも信奉者の多いシアーズ博士が提唱した“ there is no expert better than me for my baby(赤ちゃんにとって母親に勝る育児の専門家はいない)”という育児哲学があるのではと推察している。

このDIY育児にこだわるあまり、自宅出産に始まり、完全母乳、手作りの離乳食はもちろん、デイケア(保育園)を拒否するだけでなく、義務教育でさえ、学校に通わせず自宅で学習する“ホームスクーリング”を選択する親が増えているという。


アメリカでは、以前より宗教上の理由や通学距離の問題から、義務教育をホームスクーリングで修了する子どもは一定数いたし、経済上の理由で子どもをデイケアに通わせられない親もいる。しかし、マッチャーが論じているのは、そうした家庭ではなく、物心ともに恵まれたアッパーミドルクラス以上の親が、子どもの将来のため、考えうる最高の子育てを追求した結果の「なんでも自分でやる」というDIY育児なのだ。いわば、最高に贅沢な子育て方法ともいえる。

一方でマッチャーは、こうしたトレンドに呼応する形で、粉ミルクや市販のベビーフードを買ったり、乳幼児のうちから保育園に預けたりといった“育児のアウトソース”に罪悪感を持つ親が増えているとも指摘。結果、実に71%のアメリカ人が、親世代の2〜30年前に比べて、母親であることをより難しいと感じているそうだ。

子どものため、できることはなんでもしてあげたいというのが、古今東西共通の親心だろうが、経済的、時間的制約の中で、全て母親のお手製というわけにもいかないのが実態。極端に走る傾向のあるアメリカの育児トレンドに惑わされることなく、マイペースに自分らしい子育てを実践できればと思う。


恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!

    前日のランキングへ

    ニュース設定