米国、日本の両国で“幼児教育無償化”の波

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2013年03月07日 10:10  MAMApicks

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3〜5歳児の幼児教育の無償化を検討するため、政府・与党が今月中にも具体的な協議を始めるということが、先月、各紙で報道された。まったく同じ時期、アメリカでもオバマ大統領が、一般教書演説やその後の全米各地での遊説で、米国内の4歳以上のすべての子どもたちに質の高い幼児教育を徹底すると言明。両国とも、具体的な政策や財源確保についての議論はこれからだが、歓迎と期待の声や、効果を疑問視する声が広がっている。


日本政府の方針は、先の衆院選挙で自民・公明両党が公約として掲げたもので、子育て世帯の負担軽減のため、幼稚園や保育園、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ「認定こども園」での自己負担を無料にするというもの。これにより、3〜5歳児の保育、教育費が無料になるが、政府試算で、年8,200億円の財源が必要とのことだ。現政権はこの“幼児教育の無償化”を、少子化対策の切り札と位置付けているようだ。
一方、オバマ大統領は、きちんとした幼稚園(質の高い私立の幼稚園は、月額10万円を超えることが多い)に通えている4歳児は、全体の三分の一以下であるという米国の現状を憂い、低所得層の子どもが幼少期に適切な教育を受けないことが、その後のキャリアや所得に悪影響を及ぼすと説明。

幼児教育への予算投入を国全体の利益につながる効率的な投資とする、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジェームス・ヘックマンの説を引用し、「質の高い幼児教育に1ドル投資すれば、それは後々、7倍のリターンとなる」と訴え、低所得層も含め、全ての4歳児が幼稚園で質の高い教育を受けられるよう、国家予算を投入すると明言した。

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少子化対策と銘打っている日本とは異なり、米国では、教育格差、所得格差の拡大から生じる様々な社会問題の解決策としての、幼児教育へのてこ入れというのが実態のようだ。

両国とも、政府が具体的な財源を示していないため、「絵にかいた餅」に終わる恐れもあるが、子育て世帯を中心に、歓迎の声は多い。

一方で、特に日本では、子育て支援策として本当に必要とされているのは、3歳からの幼児教育の無償化ではなく、認可保育園に入れない待機児童の解消だという声も根強い。年間8,000億からの予算が幼児教育の無償化に使われてしまっては、保育園の増設など、もっと切迫した子育て支援サービスに回す関連予算は、わずかばかりになってしまうだろう。

そもそも、幼稚園が無料になったら、子どもを産む人が増えるだろう、だから幼児教育の無償化=少子化対策という安易な発想に、女性として違和感を覚えるし、経済的な理由で子どもを持つことをためらう夫婦を減らすためには、妊娠・出産で女性が仕事をあきらめないで済む環境整備が急務だと思う。

それでもなお、子どもは社会の宝。国全体の明るい未来のためにも、すべての子どもたちが質の高い幼児教育を受け、幸せな幼児期を過ごせるよう、政治家たちが議論することは、決して悪いことではないはずだ。


恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!

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